ササキデンタルクリニック (小牧市/春日井駅)
佐々木 成高 理事長の独自取材記事
近くに小中学校もある静かな住宅地に建つ「ササキデンタルクリニック」。2018年にリニューアルを終えた院内はシックな雰囲気で、ユニットはすべて個室。患者はプライバシーが守られた空間で落ち着いて治療やケアを受けることができる。佐々木成高理事長はもともと口腔外科が専門で、精密な治療に必要な機器を充実させ、滅菌専用のスペースを設けるなど院内感染防止にも徹底して取り組む。さらに「人生100年時代」を見据え、小児や大人の予防歯科に注力していることも特徴だ。一人ひとりに合わせた予防プログラムを提供し「歯科医療を通じて患者さんの健康を守りつづけたい」と語る佐々木理事長に、診療にかける真摯な思いを語ってもらった。
生涯健康な歯を手に入れるための予防歯科
こちらでは、予防に力を入れられているそうですね。
はい。十数年前に山形県酒田市の熊谷崇先生が主催するセミナーにてスウェーデン発祥の歯科医療哲学を学んだことがきっかけです。その後スウェーデン、アメリカ、ドイツで行われた勉強会への参加を経て、国際基準の歯科医療を提供したいと考えるようになりました。そこで2018年リニューアルにより、院内を診療のゾーンと予防のゾーンに分け、それぞれに設備を整えて各々の施術を集中して行える環境をつくりあげた次第です。ユニットはすべて個室として患者さんのプライバシーを確保し、隣室からの飛沫、粉塵、音などを防ぎ、落ち着いて過ごせる空間としました。診療ユニットには口腔外バキュームを備え、より衛生的な環境を実現しています。
予防歯科(メディカルトリートメントモデル)とはどのようなことを行うのでしょうか?
まずは患者さんの口腔内写真撮影とレントゲン撮影、歯周病や唾液の検査を行います。痛みなど緊急な治療の必要があれば優先的に処置をします。口腔内の状態は患者さんによって異なりますし、年齢や生活環境によっても変わります。そこで検査結果をご説明し、その方に合った予防プログラム「メディカルトリートメントモデル(MTM)」を提案します。担当の歯科衛生士による歯磨き指導、食事指導、歯石の除去やフッ素の塗布などを数回に分けて実施し、その後、再度検査を行って口腔内の環境がどの程度改善されているのかを確認、口腔内写真やレントゲン撮影なども改めて行います。その後に治療が必要であれば行い、健康的な口腔内を維持するためにメインテナンスへと移行していきます。MTMはう蝕と歯周病の再発を防ぎ、再治療を少なくし抜歯となってしまうのを可能な限り防ぐシステムなのです。
子どもの予防についても教えてください。
小さなお子さんにも年齢に合わせたプログラムを作成します。お子さんの場合、検査によって将来の虫歯や歯周病のリスクを早い段階で知ることで、適切なホームケアや定期的なメインテナンスの重要性を親御さんにもきちんと説明することができます。幼少期から予防歯科に通って口腔内を管理すれば、成人になってからの歯周病も早いうちに防ぐことができると思います。つまり歯を失うリスクを減らすことができるのです。小さいうちに予防の基本をしっかり作っておくことは、将来の健康につながります。歯並びや噛み合わせもチェックし、問題がある場合は早期に矯正治療を行うことが望ましいでしょう。
徹底した衛生管理、安全・安心な治療の提供をめざす
貴院の診療理念はどんなことでしょうか?
「生涯を通じて口腔内の健康を維持すること」を理念に診療を行っています。日本は長寿国にもかかわらず80歳で入れ歯やブリッジを入れている人は87%で、予防歯科先進国のスウェーデンでは5%であり大きな差があります。80歳の方の口腔内は、スウェーデンに遅れること約40年となっていますので、「小牧市民の口腔内の状況を世界一にする」を目標にして、スウェーデンに追いつけ追い越せで頑張っています。今世紀になってから口腔内の状態が全身の健康と深く関わっていることがわかってきました。歯周病は糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、認知症、リウマチ、早期低体重児出産、がんなど、106の病気と関連があるとの報告が国際学会でありました。また、歯が抜けていくと要介護になりやすくなることもわかってきました。健康寿命を延ばすには、歯科医療は従来のトラブルシューティング型から、予防を重視する健康投資型へとシフトする必要があるわけです。
先生のご専門の口腔外科についても教えてください。
病院勤務時代よりすでに30年、一般歯科に加え、インプラント治療や骨造成、さらに通常の歯内療法では治しきれない外科的な治療法である歯根端切除術を行ってきました。インプラント治療は、ブリッジや入れ歯のように周囲の歯に負担をかけることなく、義歯よりも違和感がなく咀嚼効率が高いなどのメリットがあると考えています。インプラント治療も矯正治療も、実は根底に「予防」があるんですよ。歯を1本失うと口腔内のバランスが崩れてしまいますから、今ある歯を守るためにインプラントという選択肢があるのです。インプラント治療により、しっかりと咀嚼し栄養を吸収することで、未来の体の健康へとつなげていくことにもなるでしょう。また必要に応じて歯列矯正も行い、噛み合わせを整えておくと歯の消耗も少なく、長く残すことが期待できます。
先生は、滅菌など設備にもこだわっておられるそうですね。
患者さんには安心安全な治療を受けていただきたく、開業当初よりその時々でベストと思われる設備・装置を導入しています。外科的な治療を多く行っていることもあり、滅菌に関しては専用の部屋を設け、かなり徹底した衛生管理を実施しています。不潔、準清潔、清潔ゾーンの設置といった世界基準のゾーン滅菌を行っています。また、ヨーロッパ基準の滅菌器であるクラスBオートクレーブ、プラスチックやゴム製品にも使用できるガス滅菌器、ウォッシャーディスインフェクター、超音波洗浄機を導入しています。また、歯科用CTやマイクロスコープも完備し、精密な治療が行えるよう体制を整えています。
長期にわたり患者を守るため次世代でのサポートも準備
先生が診療の際に心がけていることはどんなことですか?
患者さんに予防の大切さを伝えることです。予防は主に歯科衛生士が担当していますが、皆、誇りを持って取り組んでおり、説明もわかりやすく行っています。当院では治療の前に局所の状態を含め、全身状態を診ることも欠かしません。高齢の方は大抵、生活習慣病や基礎疾患をお持ちですので、患者さんの血圧をはじめ、血液検査、尿検査のデータも把握してから治療に進むことにしているんです。全身管理は口腔外科が専門の歯科医師でないと難しいかもしれませんが、体の状態チェックは歯科医療においても非常に大事なこと。最初の診査・診断ができていれば後々の治療もスムーズに進められると思っています。
今後の展望についてお聞かせください。
現在、息子が他院に勤務しているのですが、いずれは私の後を継いで地域の患者さんをサポートしてほしいと考えています。そしてこれまで同様「小牧市民の口腔内状況を世界一にする」ために、MTMをベースとした予防に取り組んでほしいですね。「歯医者は何かあったら行くところ」という意識を変えるため、広く啓発を行っていくことも課題の一つです。また医科と歯科の連携にも積極的に取り組んでいきたいですね。歯科の疾患は、体のさまざまな病気に関わります。すでに日本糖尿病学会や日本産科婦人科学会は歯科検診を勧めていますが、さらに医科との連携が強まるよう、小牧歯科医師会副会長としての活動にも注力していきたい考えです。医科から信頼され紹介を受けるために、歯科医院全体のレベル向上にも努めたいと思います。
読者にメッセージをお願いします。
日本人の寿命が延びて「人生100年時代」といわれるようになり、より予防が大切になってきたと感じています。長生きする分、歯も長く健康に保たなければなりません。生涯自分の歯でおいしく物を食べて豊かで健康な生活を送るためにも、子どもの頃から虫歯や歯周病を予防し、歯並びも整えて、口腔内環境を良い状態にしていただきたいと強く思います。最近では患者さんの高齢化によりメインテナンスの定期通院が難しいケースが出てきました。当院では数年前より担当の女性歯科医師による訪問診療を行っています。地域に密着したクリニックとして、患者さんの生活の質の向上のために力を尽くしていきたいと思います。