瀬ノ内歯科 (京都市左京区/茶山・京都芸術大学駅)
西田 貴要子 院長の独自取材記事
叡山電鉄叡山本線・茶山・京都芸術大学駅から10分ほど歩いた所に、ひときわ目を引くかわいらしい建物がある。西田貴要子院長が1998年に開業した「瀬ノ内歯科」だ。2006年に現在の場所に移転後、時代の流れやニーズに合わせ、院内を少しずつ変更。ゆったりと待てる工夫や各世代への配慮など、西田院長のこだわりが詰まっている。予防歯科に注力し、現在は特に咬合について知識を深めているといい、家庭で取り組める生活習慣の改善方法を具体的に伝えている。長い人生でできることをまだまだ追求していきたいと意欲的な西田院長に、院内のこだわりや予防歯科への思い、今後の展望などを語ってもらった。
患者のニーズや時代の流れに合わせて進化を続ける
こちらの場所を選ばれた理由や、開業の経緯についてお聞かせください。
前院長より当院を継承したのは、1998年です。なかなか思うようにいかなかった時期もありましたが、周囲の支えもあり、少しずつ歩みを進めてこられました。2006年に、現在の場所に移転。住宅街の中にあるので驚かれることもありますが、運転が苦手な方、特にお子さん連れの女性でも気を使わずにゆっくり駐車できるようにしたいと考え、あえて大通りに面していない場所を選んだんです。ただ、その分、歯科医院だと気づいてもらいにくい面もあるので、外壁は目を引くカラーを選択しました。
院内にも多くのこだわりが詰まっているとお聞きしました。
一番のこだわりは、待合のグリーンのソファーです。以前は黄色のソファーを置いていたのですが、少し深めで高齢の方が立ち上がりにくいという難点があって……。生地からサイズ、硬さなどにもこだわって、ゆっくりくつろげるようにしました。お子さんは寝てしまっても構いませんし、“待ち時間が気にならないソファー”になったかなと思っています(笑)。他にも、患者さんが増えてきたので2階にもユニットを置き、それに合わせてエレベーターを設置したり、感染症対策でパーティションをつけたりと、少しずつ内装を変更しています。
ニーズや時代の流れに合わせて変更してこられたのですね。
そうですね。もともとは、子どもに読んでほしい絵本を私がセレクトし、ソファーから見える位置にたくさん置いていたのですが、人との接触が気になる時期に、すべて撤去しました。それでは寂しいので、歯科に関する豆知識やケア用品の使い方などを書いたポップを設置。待ち時間に眺めるのにちょうどいいようで、患者さんから詳しく教えてほしいと問い合わせされることが増えました。かわいくてわかりやすいイラストや図などは、すべてスタッフの手描きなんです。
聞くときはとことん、伝えるときは具体的に
予防歯科に注力されているとお聞きしました。
今も現役で活躍してくれている歯科衛生士との出会いをきっかけに、予防歯科に興味を持つようになりました。そして現在、特に意識しているのは、咬合について、です。実は噛み合わせは、おなかの中にいるときの母親の姿勢からも影響を受けるといわれています。また、噛み合わせを調整することで、肩凝りや食いしばりの解消、姿勢の改善なども期待できるんです。大人も子どもも噛み合わせがどれだけ重要かと知ってもらうだけでなく、矯正しなくてもいいようにするためには、できるだけ早い段階からの介入が必要だと感じています。
早い段階での介入とは、定期的な通院や検査でしょうか。
もちろん、定期的に通っていただくことも重要ですが、その中で生活習慣との関わりを説明するようにしています。意外と見落としがちなのが、前歯を使うこと。前歯で噛んで刺激を与えることが大切なので「パンの耳は切らなくていい」「カレーのニンジンやジャガイモは大きいままで」というお話をしています。また、なわとびでもいいですし、家の中なら四つん這いで追いかけっこをするなどの全身運動をすること、夜はしっかり寝ることなど、お子さんのお口の健康につながることを丁寧にお伝えするようにしています。
トリートメントコーディネーターと呼ばれるスタッフさんの役割についても教えてください。
患者さんのお話を聞いたり治療について詳しく説明をしたりする役割を持つ「トリートメントコーディネーター」によるカウンセリングを導入してから5年ほどたちました。病院に行った時にきちんと話を聞いてもらえなかった、言いたかったことを伝え忘れたという経験は、私にもあるんです。今すぐ治療が必要なのか、どこから始めたらいいのか等、患者さん自身がわかっていないことが多いので、トリートメントコーディネーターと話していくうちに悩みやニーズが明確になっていくというメリットがあります。また、トリートメントコーディネーター、歯科衛生士、歯科医師の3段階で患者さんに接するので、より納得して治療を受けていただけると感じています。
歯を大切にする意識を高めることが、ケアのメリットに
補綴(ほてつ)治療について、素材による違いや重視されているポイントなどを教えてください。
詰め物やかぶせ物などの「補綴治療」は、素材によって保険診療と自由診療が選択できます。保険診療で一般的な銀歯は、治療費を抑えられる分、劣化や隙間ができることによる虫歯の進行、金属アレルギーなどの懸念があります。このようなリスクに配慮し、自由診療を希望される場合は、ゴールドをお勧めしています。私が重視しているのは、できる限り歯を削る量を少なくすること。ゴールドは割れにくくさびにくいので耐久性があり、プラークが付着しにくいこともメリットです。近年、金の価格がセラミックやジルコニアよりも上がりつつあるのでそこが欠点ではありますが、価格も含め丁寧なご説明を心がけています。
もう一つ自由診療で代表的なのがホワイトニングですね。補綴治療との関係やメリットをお聞かせください。
補綴治療でセラミックやジルコニアなどを選択すると、周りの歯の色が気になる場合があります。そういう方には、ホワイトニングをお勧めしています。以前のホームホワイトニングは手間も時間もかかっていたのですが、薬剤の量を調整する必要がない使い捨てタイプのものを取り入れているので、かなり手軽に始められるようになっています。またホワイトニング後は、歯の色を維持しようという気持ちが生まれ、定期的なクリーニングを習慣化しやすくなるものなので、そうした気持ちの変化が一番のメリットかもしれません。
最後に、今後の展望を教えてください。
新型コロナウイルスが流行した影響もあり、ここ数年あらためて勉強していく中で、歯と体の深いつながりを感じるようになりました。患者さんの健康を維持するためには、歯だけでなく他の科とも連携していくことが大切ですし、トータルで体を守っていく方法を考えているところです。今後は、先ほどお話しした噛み合わせの知識を組み合わせた矯正や入れ歯治療、メンテナンスなどを強化できればと思っています。また、長年当院に通ってくださっている方を最後まで診たいと思い、訪問歯科診療の勉強も始めました。まだまだ長い人生でできることをやり続けていきたいと思っています。