田園都市クリニック (川崎市宮前区/鷺沼駅)
横田 雅史 院長の独自取材記事
川崎市宮前区の「田園都市クリニック」。梶が谷にある虎の門病院の本院および分院に長年勤務していた横田雅史院長が、なじみある地域の医療に貢献したいと2004年に設立したクリニックだ。ヨーロッパのカフェのようなれんが造りの外観、落ち着いた照明の院内など、病院を感じさせない雰囲気にしたのは「冷たくて怖い雰囲気の病院が苦手だから」。幼少時に病弱だったこともあり病院が苦手だったという横田院長は、「医師と患者というよりもパートナーとして一緒に病気に立ち向かいたい」と話し、常にフレンドリーに来院者の気持ちを和らげている。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医として、生活習慣病の診療にも注力する横田院長に、医師になったきっかけや自身の健康管理、趣味のことまで、じっくりと話を聞いた。
安心して受診できる環境で、ともに病気に立ち向かう
医師を志されたきっかけは?
幼い頃は病弱で、月数回は高熱を出して病院にはお世話になっていました。私にとって病院は怖いところ、つらいところという印象。病院の青白い蛍光灯や消毒薬の臭いも苦手で、冷たいイメージしかなく、医師になろうなんてまったく考えていませんでした。そんな私ですが15歳の時、家族を病気で亡くしたことをきっかけに、病気に立ち向かい治療をする側になりたいと医療の道を志しました。大学に入った当初はがんの発生メカニズムなどの研究をしたいと思い、研究職をめざしましたが、がんに限らずさまざまな病気の予兆を見つけて治したい、患者さんを直接診たいと思うようになり、臨床医に。さまざまな患者さんを診察するうち、より患者さんの近くでサポートできる医師でありたいという思いが募り開業に至ったのです。縁あってこの場所で診療を続け、来年で20年。思いを新たにしています。
どのような患者さんが多く来院されていますか。
30代、40代からご高齢の方まで、幅広い患者さんがいらっしゃいます。頭痛や腹痛、咳、鼻水など、一般的な風邪症状や発熱に加え、生活習慣病の管理で定期通院される方が多いですね。新型コロナウイルス感染の心配がある患者さんもまだまだ多く、陽性判定が出ることもあります。新型コロナウイルスの流行以降、発熱や風邪症状で来院される方とそれ以外の方の診察時間を分け、時間帯でゾーニングしています。また、隔離ブースを設けて、PCR検査や抗原検査に対応しています。混雑解消のため、今春から予約制を導入したのですが、一般の患者さんも発熱の患者さんもお電話やウェブ経由で予約が取れるようになりました。混雑状況がある程度可視化され、混んでいる時間帯を避けて受診できたり、時間が読めたりするようになったので、より受診しやすくなったと思います。
安心してスムーズに受診できるよう仕組みづくりに取り組んでいらっしゃるのですね。
はい。新型コロナウイルスの流行を経て、感染への不安から受診を控え、生活習慣病などの慢性疾患を悪化させてしまった方が、残念ながら多くいらっしゃいました。その経験から、たとえ感染症の流行期であっても安心してご来院いただけるクリニックであることの大切さを改めて感じ、取り組みを続けています。新型コロナウイルス感染症の分類は5類に移行しましたが、ウイルス自体が消滅したり、弱まったりしたわけではありませんから、今後も感染予防対策として有用な時間帯ゾーニングは継続し、院内でのマスク着用もお願いを続ける方針です。
オーダーメイドの血糖コントロールによる糖尿病治療
得意とされる診療があれば教えてください。
専門分野は糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病です。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医として、長く専門的な診療に携わってきました。合わせて、一般内科全般も長い期間診療しています。ですから、「なんとなく具合が悪いけれど、どこに行けばいいかわからない」というようなときも、気軽に相談していただければと思います。診断して道筋をつけ、必要であれば専門の医療機関や医師に紹介しますし、私が治療できるものは責任を持って治療します。また、長引く咳や睡眠時無呼吸症候群の治療にも力を入れています。睡眠時無呼吸症候群は太っている方に多いと思われがちですが、日本人は顎が小さかったり、喉の奥の開口部が狭かったりする人が多く、睡眠時無呼吸症候群になりやすいんです。日常的に眠気に襲われる、疲れが取れないという方は要注意。ご自宅でできる簡易検査装置もありますので、思いあたる症状があればご相談ください。
こちらでの糖尿病治療について詳しく伺えますか。
インスリンを含む薬物療法と並行して、食事や運動といった生活習慣の見直しを組み合わせ、経験と知見に基づく治療を提案しています。24時間測定できる持続血糖モニターも導入しています。持続できる限り薬に頼りすぎない方針をとっていますが、ケースバイケースです。生活習慣病はすべて食生活の乱れや運動不足によるものと思う方もいらっしゃいますが、実は生活習慣によるものだけではなく、遺伝によるものや別の疾患と関連するものも。生活習慣の見直しだけでは改善が期待できないケースもあるのです。また、理想的な生活習慣が頭では理解できていても、家庭環境やお仕事の事情などで実現が難しい方もいらっしゃいます。無理に理想を押しつけても決して続けられませんから、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの血糖コントロールを提案しています。
診療の際に心がけていることを教えてください。
医師と患者というよりパートナーとして、ともに病気に立ち向かう心づもりです。これには子どもの頃の経験も大きいですね。当時は今と違って、医師と患者の間に上下関係があったように思うのです。あいさつや会話もなくいきなり治療をされたり、こちらの訴えも聞かずに上から目線で叱られたりしたことが、子ども心に「病院は怖い、冷たい」という印象になったのでしょうね。自分が医師になったからわかるのですが、特に内科の診断においては、患者さんのお話が重要な手がかりになります。どんなことでも話せるという安心感と信頼がなければ、正しい診断も適切な治療もできません。聞き方、話し方一つで相手を深く傷つけてしまうこともありますので、相手の方の気持ちになって診療にあたることを意識しています。「病院が怖い」という自分自身の経験があったからこそ、できることかもしれません。
自身の経験も生かし、共感できるリアルなアドバイスを
健康管理のために実践していることは?
運動と食事には気をつけています。私は以前、今よりも15kg以上太っていた時期があり、まさにメタボリックシンドロームの一歩手前でした。ある日患者さんから「先生こそ、生活習慣病に気をつけてくださいね」と言われ、本格的にダイエットに取り組んだのです。実はそれまで何回か失敗していた経験もあるので、医学的にその原因を検証して科学的なダイエットを実践しました。この経験から言えることは、楽してできるダイエットはないということ。患者さんの気持ちもよくわかりましたし、共感できるからこそ、リアルなアドバイスができるようになりました。
休日や診療後はどのようにお過ごしですか。
趣味に費やすことが多いですね。興味はたくさんありますが、今は渓流釣り。時間を見つけて、群馬・栃木・山梨・長野といった、関東甲信越近辺に行っています。先日も八ヶ岳でイワナを釣ってきました。平日は、診察が終わった後に、体重をキープするために運動をしています。有酸素運動は欠かせません。以前はジョギングをしていたのですが、早歩きも脂肪燃焼の効率が良いということなので、半々にしています。新型コロナウイルス感染症の流行下になりトレーニングマシンを購入したので、最近は自宅でも運動しています。
最後に一言メッセージをお願いします。
気になることがあっても、「こんなことを聞くのは恥ずかしい」と感じて口にできない方がいらっしゃるようです。しかし、そうして後回しにしてしまった結果、「もっと早く相談していれば」という状態になる恐れもあります。私のほうからも診療の最後には「他に何かありませんか?」と声をかけるように意識していますが、ちょっとしたことでもいいので気軽に相談していただきたいです。専門外のことでも、実際に治療することはできなくとも、どこに相談すべきかなど、ゲートキーパーとして道筋をつけることは可能です。虎の門病院に限らず、希望によりネットワークを活用し、適切な医療機関にご紹介しています。地域の身近なよろず健康相談所として、ぜひお気軽にご相談ください。