荒木歯科医院 (川崎市宮前区/鷺沼駅)
荒木 直美 院長、荒木 美汐 先生の独自取材記事
東急田園都市線の鷺沼駅から車で5分の場所にある「荒木歯科医院」は、40年前から長く地域の歯の健康を守ってきた。小児歯科を得意とする臨床経験豊富な荒木直美院長と、補綴を専門とし高齢者の診療を得意とする娘の荒木美汐(みしお)先生が協力して診療にあたる。父であり前院長である荒木勝治(かつじ)先生の思いを受け継ぎ「気軽に来られる歯科医院」をめざす直美院長と、同院で診療することを目標にしてきた美汐先生に、診療で心がけていることや取り組みについて聞いた。
通いやすさを重視したアットホームな環境づくり
まずはこちらに開院された理由をお聞かせいただけますか。
【直美院長】前院長である父が開業場所を探していた時にたまたま同業の友人から「いい物件が空いているよ」と紹介されたからです。鷺沼に地縁はなかったようでしたが、当時、駅から少し離れたこちらには歯科医院が多くなかったので、地域の方の需要も高いのではと思ったのだとか。そもそも父は口腔外科の診断や治療の方法を教えてくれた先生から、「抜歯に関しては免許皆伝」とお墨つきももらったことで、「どんな所でもやれる」と自信を得てから開業を決意したようで、特に場所にはこだわりはなかったみたいです。
現在の診療体制と患者層についてお聞かせください。
【直美院長】ホームページを持たず宣伝もしていませんので、多くの患者さんはご紹介を通して当院をお知りになっているようです。患者さんは近くにお住まいの方が中心ですが、当院は3台分の車を止められる駐車場を備えているので、隣の都筑区やその先の緑区などから車を使って来院される方もいますね。引っ越した後、わざわざ遠方から来てくださる患者さんも多いですよ。また、この辺りはお若い子育て世代が多いので、子連れのお母さん方の来院も増えているように感じます。小児歯科は得意分野なので、お子さんを診る機会も多いですね。
【美汐先生】当院は幅広い年代の方にお越しいただいていますが、地域的にはご高齢の方も多いんです。私の専門は、特にご高齢の方に悩みの多い部分入れ歯などの補綴治療。現在は週に1回、月曜日に診療していますので、ご高齢の方も安心してお越しいただければと思います。
どんなクリニックをめざして日々の診療に臨まれているのでしょうか。
【直美院長】患者さんが躊躇せず、気軽に来られる歯科医院でありたいです。当院は10年ほど前にリフォームしたのですが、その際にもこうした思いを反映させたつもりです。「家」をテーマに靴を脱いで入る形にして、リビングのように床をフローリングにして。歯科医院や歯科治療に恐怖心を抱いている方も少なからずいらっしゃいますから、環境面からそんな気持ちが和らいでくれるとうれしいですね。実際に「あそこは行きやすいよ」と既に来院した方から別の方をご紹介いただくことも多いようです。
5年後、10年後も「受けて良かった」と思える治療を
環境面以外で「行きやすい歯科」のために心がけていることはありますか。
【直美院長】あまり構えずに自然体で患者さんと接することでしょうか。患者さんと打ち解けようと会話をする中で、「この方はちょっと怖がっているな」「この方はどんなことを希望されているのかな」と想像を巡らせながらそれぞれに合った治療を考えています。当院の患者さんは父の代から長く通われている方が多く、皆さんのご家族やお仕事のこと、お人柄などを把握できているからこそ治療方針を検討しやすいというのはあるかもしれません。もう一つ、5年後、10年後も受けて良かったと喜んでもらえる治療をすることも心がけています。そのために、基礎知識から先進の技術まで常に勉強し続けてきました。介護の現場で働きながら高齢者歯科を学んだ経験を生かし、訪問診療にも取り組んでいます。もし介護が必要になったときに患者さんご本人も介護者も苦労しないように、日常生活に関するアドバイスをすることもありますね。
美汐先生はいかがですか?
【美汐先生】一番意識していることは、できるだけ患者さんのご希望に添えるようにすること。「こういう治療をしたほうがいい」という歯科医師としての考えを押しつけず、優しく丁寧に、やわらかい雰囲気で対応することを心がけています。今はネットが普及しているので、たくさん調べて来られる方も多くなってきています。そんな患者さんもしっかりと納得できるよう、どんな治療法の選択肢があって具体的にどうなるのかを、絵や模型で示しながら詳しく説明しています。そこまで意識が高くない方に対しては、なるべくご自身の口腔ケアに意識を向けてもらえるよう導くことを心がけていますね。歯周病や虫歯のリスクを丁寧に説明するだけでなく、施術も丁寧に。クリーニングを丁寧にするだけでも、「気持ちいいな」と感じて意識が変わるのではないかと考えています。
子どもを診る時は、まずは歯科医院に慣れてもらうことから始めているそうですね。
【直美院長】治療はもちろん大切ですが、本当に大切なのは次回もちゃんと来られること。当院は虫歯や歯周病の予防を重視していますが、これらを実現するためにも定期的に歯科医院で検診を受けられる状況にする必要があります。まずはお子さんの歯科医院に対する恐怖心や抵抗感を和らげていくことが大切なんです。無理に治療を進めて、歯科医院が嫌いになってしまっては本末転倒ですから、その可能性がある場合はお話だけにとどめることもありますね。歯科医師としては根気が必要ですが、長くご家族と付き合えるようにするためにも、最初に腰を据えてお子さんと向き合うことがとても大事。治療後のご褒美として、カプセルトイもご用意しています。これらの取り組みで、来院した際に怖がっていた子が、少しでもリラックスしてくれればと思っています。「別に用はないけどちょっと寄ってみた」という感覚で立ち寄れるような空間をめざしています。
専門の異なる歯科医師が二人三脚で患者に寄り添う
親子2人での診療はいかがですか?
【美汐先生】祖父の代から続く当院でいつかは診療したいと思っていましたが、現実になった今は、母と二人三脚で歩んでいる感覚です。母の診療を間近に見ながら学べる環境は、とても勉強になりますね。それぞれ得意分野が違うので、症例について相談し合うこともよくあるんですよ。「こういう入れ歯の設計どう思う?」など、補綴に関する相談を受けると、一人前の歯科医師として頼りにしてくれているのだと感じます。
【直美院長】私は子どもの頃、診療が終わった後に自分の歯を父に診てもらっていたのですが、待っている間に裏から診療室をのぞいて見ていた父の姿が、なんだかかっこ良くて。将来は父と一緒に働きたいと思いましたし、娘と2人で診療するようになってからは父も喜んでくれるんじゃないかと感じていました。娘が当時の私と同じように思ってくれていたことがうれしいですし、今度は私が父から学んだスキルや思いを娘に伝えていきたいですね。
今後、クリニックとして取り組んでいきたいことはありますか?
【美汐先生】私は大学でも診療しているので、専門的な診療や新しい治療法も取り入れていけたらなと考えています。今は、歯ぎしりや食いしばりに悩む患者さんに向けた新しい取り組みを考えていて、スキルを身につけながら、診療で活用することをめざしています。患者さんが通いやすい歯科医院というベースはこれからも守りつつ、良いと思った技術や治療法は積極的に提案し、取り入れていきたいですね。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
【直美院長】まずは患者さんが真っ先に相談したくなる存在でありたいと思います。常々患者さんには「我慢しないで何でも話してほしい」とお願いしているんです。義歯が合わなければ、納得いただけるまで何度でも調整し直すよう努めていますし、治療以外でも力になれればと思って、元気のないお子さんがいれば学校で何かあったのか尋ねることも。どんなに些細なことにでも丁寧に対応することで患者さんに寄り添っていければと考えています。私は父と一緒に診療する中で、古くからある良いものをたくさん学んできました。可能な限り、父から受け継いだ技術や知恵を生かした診療をして、患者さんの健康を支えていきたいですね。
【美汐先生】大学ではご高齢の方を中心に診療していますが、ここではできるだけ幅広い世代の方を診たいと思っています。至らない点もありますが、親子2人で一生懸命診療させていただきます。ぜひこれからも安心してお越しください。