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楠本 拓生 院長の独自取材記事

楠本内科医院

(遠賀郡水巻町/水巻駅)

最終更新日:2024/02/16

楠本拓生院長 楠本内科医院 main

JR鹿児島本線・水巻駅から徒歩約15分。「楠本内科医院」は開業から76年目になる地域密着型のクリニックだ。院長の楠本拓生先生は、2016年5月に先代の父からクリニックを継承し、引き続き地元住民の健康を支えている。同院は外来診療のほか、訪問診療やオンライン診療に対応しており、特に楠本先生の専門分野である腹膜透析は在宅で行えるため、患者の負担を減らすため積極的に取り組んでいる。同院には楠本先生以外にも医師が3人常駐し、患者への対応を迅速に行う環境を整備。「ただ診断するだけではなく、患者さんの生活スタイルや背景などを加味した上でトータルサポートしたい」と語る楠本院長に、クリニックで力を入れている訪問診療や外来の特徴について詳しく聞いた。

(取材日2023年9月21日)

必要な情報を自らつかみに行き、患者理解を深める

先生のご経歴や医師になったきっかけを教えてください。

楠本拓生院長 楠本内科医院1

特に親から勧められたわけではなく、自然に医師をめざすようになりました。祖父も父も医師という環境で育ってきたせいか、小学校の卒業文集には「将来医師になりたい」と書いていましたね。父は家にいる時はごく一般的な父親で、仕事の話はほとんど聞いたことがなかったのですが、大変そうだなとは感じていました。実際に祖父や父がどれだけ仕事を頑張ってきたかを知ったのは、私が当院に勤め始めてからです。患者さんから、祖父や父に昔から診てもらっているという話をたくさん聞いて、地元の方から信頼されていることを実感しました。私はこのクリニックを継ぐつもりでしたので、久留米大学医学部に行き、卒業後はいくつかの病院で研鑽を積み、40歳になった頃合いで地元に戻ってきました。

こちらの外来診療の特徴や強みについて伺います。

患者さんとの会話の中で、病気だけではない問題を見つけ出すところが当院の特徴かなと思います。必要であればスタッフがご自宅を訪問したり、ご家族とお話ししたりして生活の状況を拝見させていただくこともあります。より適切な診断をするために、こちらからも情報を取りに行くといった感じでしょうか。クリニックでの患者さんの姿は生活のほんの一部ですから、それだけでは情報不足だと思うんです。いろいろな情報を得た上で総合的に判断して、その患者さんに必要な治療を行っていくのが当院の強みだと感じています。患者さんの中には病気の治療だけでなく、生活習慣や生活環境の改善が必要な方も多くいらっしゃいます。当院ではそういった支援もできるので、何か困ったことがあれば相談にいらしてください。

AIやデジタル技術も積極的に活用されていますね。

楠本拓生院長 楠本内科医院2

当院の患者さんは高齢者が多いのですが、最近は若い世代の患者さんも増えてきました。それは、デジタル化を進めたことで利便性が高まったからだと思います。時代に合わせてインターネットで予約から支払いまで完結できたり、駐車場から二次元バーコードを使って受付できたりすると、簡単で便利ですよね。また、患者さんとの会話を自動でカルテ化することで、聞き漏らす心配がなく、会話を振り返ることもできるため、より丁寧で適切に患者さんへの対応ができるようになるんですね。何より、AIやデジタルを活用して効率化すると、空いた時間をほかのことに使えるというメリットもあります。患者さんの話を親身になって聞くことなど、人と人との心のつながりはAIではできませんから、そういう部分に時間を使えるところがいいですね。

ニーズの高い訪問診療に注力。患者の生活を支える

こちらでは「在宅支援部」という部署をつくって訪問診療を行っているとか。部署を立ち上げたきっかけは?

楠本拓生院長 楠本内科医院3

私が院長になった頃から、在宅医療を希望する患者さんが増えてきたからです。当院に通っている85歳以上の患者さんにアンケートを取ったところ、8割くらいの人が最後まで自宅で過ごしたいとのことだったんですね。また、2020年4月に在宅支援部を立ち上げたその時期は、新型コロナウイルスの流行の影響で、入院したくないという患者さんも多くなっていました。そういったニーズも後押しとなり、ご自宅で療養したいという患者さんの願いをかなえてあげたいと思ったのが在宅支援部をつくったきっかけですね。立ち上げに際しては、まずはマンパワーを充実させるため、訪問看護経験が長い看護師長を迎え、2023年4月からは医師をもう1人増員。現在は2ルートに分かれて訪問診療を行っています。

先生のご専門でもある、在宅での腹膜透析について詳しく教えてください。

腹膜透析とは、おなかの中に透析液を入れて腹膜を使って老廃物や水分の除去を行う透析のことです。腹膜透析は在宅で、かつご高齢の患者さんであれば少ない回数の交換でも対応できますので、血液透析に比べて患者さんへの体の負担を抑えられるところが特徴です。1日2回は透析液を交換する作業が必要になりますが、それはご家族や訪問看護師などが行います。透析液を1回交換するのに30分ほどかかりますが、それ以外の時間は自由に過ごせるためいつもどおりの生活をしていただいて構いません。そのため、在宅医療を希望される患者さんにとってメリットが大きいのではないかと思っています。ですが、現時点で腹膜透析を実施しているクリニックは少なく、もっと一般的な治療として普及してほしいと願っています。

訪問診療はチーム医療が大切なのですね。

楠本拓生院長 楠本内科医院4

そうなんです。患者さんの意思を最優先にしながら、院内と院外のスタッフとうまく連携して、それぞれの役割を果たしていくことが大切です。訪問診療は患者さんからの要望があれば24時間365日対応できる体制になっていて、訪問看護師が窓口となっています。患者さんの状況を聞いて、必要に応じて在宅支援部も動きますので誰か一人に負荷がかかることはなく、常に時間を拘束されているわけでもないんです。スムーズな対応をするために、スタッフ同士の信頼関係も重要だと感じています。私は訪問診療に関わるスタッフを教育するための講演会や勉強会を開催しているのですが、そこでは多職種連携がいかに大切なのかということも伝えています。

訪問診療のノウハウを広め、地域医療の向上をめざす

スタッフさんとの連携やコミュニケーションで工夫していることはありますか?

楠本拓生院長 楠本内科医院5

当院には医師が4人、看護師が15人、その他にもソーシャルワーカーや管理栄養士、臨床検査技師、薬剤師などが在籍しています。人数が多いため、業務の申し送りが一人ひとりに伝わるよう連絡ツールを利用しているのですが、日常的な連絡事項だけではなく勉強会の報告をしたりマニュアルを作ったりすることもできるので、学習のツールとしても活用しています。私が普段から積極的に講演会や講習会に参加しているからか、当院のスタッフは勉強熱心です。誰かが資格を取るために頑張っていたら、周りも影響を受けて何かを学ぼうとします。スタッフ同士で良い刺激になって高め合ってくれているので、知識や技術を患者さんに還元できているのではないかと思っています。

講演会や勉強会ではどのようなことをテーマに扱っているのですか?

私たちが普段行っていることが、ほかのクリニックの参考になればいいなと思って、訪問診療におけるチーム医療の大切さや、どのような体制を取ればスムーズな対応ができるのか、といった内容を医師や看護師向けに講演しています。この他、私の専門である腹膜透析を安心して受けてもらうためのサポートの仕方を具体例を挙げて説明したり、手技の勉強会を開いたりしています。クリニック側の受け入れ体制が整いさえすれば、訪問診療をしてほしいという患者さんの希望をかなえられるので、積極的に取り組んでいます。

最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

楠本拓生院長 楠本内科医院6

私自身、患者さんに安心感を与えたり、笑顔になってもらえたりする存在でありたいと思います。そのためには知識と経験、技術が必要不可欠なので、今後も研鑽を積んでいきます。当院のスタッフも勉強熱心なため、引き続き刺激し合いながら成長し、地域医療に貢献できたらいいですね。ちなみに、高齢のご家族がいらっしゃる人は、元気なうちに将来のことについて一度話し合ってみてください。在宅医療がいいのか入院するのかなど、ご本人の意思を確認しておくことが重要です。ご家族が病気になってからでは遅いこともありますし、冷静な判断ができないかもしれません。ですので、かかりつけ医やケアマネジャー、訪問看護師さんなどに事前に相談していろいろな視点からの話を聞き、それを踏まえてご本人とお話しておくことをお勧めします。

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