地域のかかりつけを見つけて
心不全の予防や適した健康管理を
引野口循環器クリニック
(北九州市八幡西区/穴生駅)
最終更新日:2023/08/23
- 保険診療
超高齢社会になり、医療の流れは病院完結型医療から地域完結型医療へと変化している。中でも心不全の急増に備えた地域医療の構築が重要であると「引野口循環器クリニック」の穴井堅能(けんのう)院長は話す。心不全は「心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、生命を縮めることにもつながる病気」とされているが、「心不全はすぐに起こるものではなく、そこに至った原因となる病気が必ずあります」と穴井院長。心臓の血管が詰まってしまう心筋梗塞、心臓の弁に異常が生じる心臓弁膜症、心臓の筋肉に問題が生じる心筋症のほかに不整脈や高血圧といった病気が心不全へのリスクを高めるのだそう。それを回避すべく、地域医療に大きな期待が寄せられている今、心不全を引き起こす要因となる病気や症状などについて解説してもらった。
(取材日2023年2月18日)
目次
心不全を引き起こす糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満などの生活習慣病は地域のかかりつけで管理を
- Qそもそも心不全とはどのような状態なのか教えてください。
-
A
心不全とは簡単に言うと、心臓が疲弊した状態。というのが心臓は全身に血液を送り出すポンプの役目をしており、一日中休むことなく働いています。そこに負担がかかる要因があれば心臓の疲弊は避けられません。ただ、一概に心不全と言ってもその原因や自覚症状は人によってさまざま。例えば、動脈硬化や塩分の取り過ぎなどが原因となる高血圧、心臓の血管が詰まってしまう心筋梗塞や狭心症、心臓の部屋を分けている逆流防止弁が障害される弁膜症、心臓の筋肉に問題が起こる心筋症、脈拍の数やリズムに異常がある不整脈、あとは先天的な心臓疾患など。このような、さまざまな病気が進行し最終的に行きつく先が心不全だと言われています。
- Q心不全を引き起こす確率は高齢者が高いのでしょうか。
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A
もちろん高血圧などは年齢が上がるにつれて増えてきますので、どうしても高齢者が心不全を起こす確率は高くなりますが、若い方が発症しないということではありません。心臓の筋肉の病気、例えば拡張型心筋症を発症後の心不全は若くても起こり得ます。ほかにも心筋梗塞を発症した若い方が、その後に心不全を起こすケースも。このように、一概に高齢者に起こる病気とは言えませんが、割合からいうとどうしても高齢者の患者が多くなりますね。誰でも加齢とともに心臓の機能は衰えてきますから、超高齢社会では心不全の患者数が多くなるのは必然と言えるでしょう。高齢者にとって数多くある中で、もっとも注意すべき健康問題の一つです。
- Q不整脈、動悸、息切れ、むくみなども関連がありますか?
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A
心不全の初期には、むくみ、体重の増加、息切れ、だるさ、倦怠感が多く見られます。これらの症状は、心臓機能が低下し、心臓から血液が十分に送り出せなくなるために起こります。例えば、腎臓へ送られる血液の量が少なくなり、尿の量が減って体内に水がたまるために起こるのが、むくみ。そして、ちょっとした動作や階段の上り下りで息切れや動悸がするのは、年齢のせいとは限らないということを多くの方にお伝えしたいです。今まで問題なくできていた動作で息が切れる、動悸がする、疲れやすくなったということがあれば、心不全の前兆かもしれません。ご本人だけでなく、周囲の方たちがそうした変化に気づき、受診につなげることが重要です。
- Q循環器疾患に多い高血圧はどのような治療をされるのでしょう。
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A
まずは生活習慣の改善ですね。塩分を控えるなど食事に気をつけることもそうですが、適度な運動を心がけるよう指導しています。濃い味つけが好きで運動不足の方はどうしても高血圧になるリスクが高まりますので、外食をできるだけ控えたり、ラーメンやうどんのスープを最後まで飲み干さないなど日頃から注意することが大事です。運動は手軽に始められるウォーキングが一番お勧めです。あとは、お薬でのコントロールですね。今、日本だけでも100種類以上の血圧に関するお薬がありますので、ご自身に合ったお薬が見つかると思います。複数組み合わせて処方することも少なくないため、そのさじ加減は医師の経験値も影響すると言えるでしょう。
- Q糖尿病など痛みがなくても定期通院をしたほうが良い理由とは?
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A
特に生活習慣病などは、良い状態を維持するためにお薬を飲むケースが多くなります。例えば塩分を取り込みやすい体質の方は根本的な体質を変えることはできず、食事に気をつけたり、お薬でコントロールすることで健康状態を維持していかなければなりません。そうなると、お薬を飲まなければ状態はまた逆戻りしますよね。それから、血管を収縮させる作用、動脈硬化を起こす作用、心臓の筋肉を肥大させる作用を持つホルモンを多く持っているか否かは体質で異なります。遺伝子を変えることはできないため、生活習慣の改善や定期的に通院しお薬でコントロールしながら状態維持を図ることが重要なのです。