糖尿病の治療は生活スタイルに合った
無理のない持続可能な選択を
医療法人 峯崎内科クリニック
(北九州市八幡東区/八幡駅)
最終更新日:2024/03/15
- 保険診療
日本人の5人に1人が何らかの血糖値の異常を有する可能性がある今、糖尿病は国民病として知られている。以前より糖尿病医療は格段に発展しているが、依然、糖尿病による失明や腎臓を悪くし透析になるケースは多く、食い止めるには発症初期からの適切なケアや合併症の進行に応じたケアが必要だと「峯崎内科クリニック」の峯崎智久院長は言う。適切な治療薬で良好な血糖値を保つのみではなく、自分に合う食事療法と運動療法で筋肉量を維持しつつ内臓脂肪を減らし、より理想的な体型に変化し維持することが重要だと強調する。だが、従来の生活を一新するのは難しく、焦りや不安から受診の足が遠のくことも。そこで無理だと悲観せず、一病息災のチャンスと前向きに捉えるべく、糖尿病の専門家である峯崎院長に話を聞いた。
(取材日2023年8月28日)
目次
「あなただけの治療の軸」をつくり上げ、前向きな姿勢で糖尿病に向き合ってほしい
- Q糖尿病の治療で大切にされていることは何でしょう。
-
A
一番は私の外来を通じて患者さんに自身の健康に対して自信を持っていただくことです。糖尿病と診断されると不安やプレッシャーを感じてしまい、病気から目を背けがちになります。しかし検査結果の説明や日々の生活習慣の聞き取りを通じて、一緒に問題点を考え適切に修正していくことで良好な血糖値が維持できるようになります。その過程を繰り返すことで、決して病気に脅かされるのではなく、自分自身で適切に対応できているという自信が持て、治療がより継続可能なものになっていきます。最初の診察では不安そうにされていた患者さんが自信を深め、前向きに治療をしておられる様子を見ると、患者さんの伴走者としてうれしい気持ちになります。
- Q糖尿病治療における食事療法の重要性を教えてください。
-
A
食事療法は薬物療法よりも重要な治療であり、運動療法と合わせて糖尿病治療の根幹を成す治療です。食事療法を適切に行うことができていない患者さんでは、体重が増加し、お薬がどんどん増えてしまうケースや極端な食事制限により痩せてしまうケースなど、さまざまな問題が生じてきます。特にここ数年のSNSの発展によりさまざまな医療情報が手に入りやすくなっていますが、偏った情報をうのみにしてしまうと逆に不健康になってしまうので注意が必要です。食事療法に精通した医師や管理栄養士の話を通じて患者さんそれぞれが自分の生活スタイルに合った、食事療法を確立して、より良い血糖値のみならず、より良い体型を維持することが重要です。
- Qでは、どのような食事療法を行うのが望ましいのでしょう。
-
A
適切な食事療法は体型や年齢、合併症に応じて変わります。また持続可能にするため生活スタイルに合わせ柔軟に考える必要があり、ひとくくりに表現はできません。ただ食事療法はカロリーとお米やパン・麺などの糖質量の調整を分けると考えやすいです。肥満体型はカロリーと糖質量両方の調整が必要ですが、痩せ型はカロリーをしっかりと摂取しつつ糖質量の調整を主体に考えます。特に筋肉量が低下した痩せ型ではタンパク質をしっかりと摂取し、筋肉量を増やすため運動療法を加えることが大切。そしてより大切なのは、その食事療法が適切か、各種検査結果を見て評価していくこと。血糖値だけでなく体全体の変化を俯瞰して見ていくことが大切です。
- Q治療では運動療法も取り入れることが重要だそうですね。
-
A
運動療法のみで減量効果を得ることは難しいですが、運動療法は血糖値の改善や筋肉量の維持において非常に大切な治療です。つまりダイエット目的で運動をするというよりも、血糖値の改善や筋肉量維持のためのサポートと考えることができます。運動療法は大きく分けてウォーキングなどの「有酸素運動」といわゆる筋力トレーニングなどの「レジスタンス運動」に分けられますが、両方を取り入れながら継続することが大切です。食事制限のみで減量を行うと筋肉量が低下し、基礎代謝量が低下するのみでなく、転倒しやすくなるなど不健康な方向に体が進んでしまいます。適切な食事療法に加え、運動療法を取り入れることが健康の維持において大事です。
- Q治療の継続に不安のある方も多いのではないでしょうか。
-
A
糖尿病の治療で重要なのは、これなら頑張れる、これだったら自分でも続けられるといった「無理のないライフスタイル」を医師と見つけていくことなんですね。そして外来受診を自分自身の健康状態を確認する場にしましょう。お薬の処方は外来の役割において主役ではありません。現在の状態を、医師と患者さんが、一緒に評価し、考え、落としどころを調整しながら、次の外来までの生活スタイルに生かしていく。そして良い血糖コントロールを保つことにより、健康に自信を持って、毎日を健やかに過ごしていきましょう。私を含め医療従事者は、患者さんと同じ目標に向かっていく伴走者。ご不安なときは気にせず相談されてください。