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弓倉 整 院長の独自取材記事

弓倉医院

(板橋区/ときわ台駅)

最終更新日:2021/10/12

弓倉整院長 弓倉医院 main

ときわ台駅から徒歩約8分、閑静な住宅街にたたずむ「弓倉医院」。シンプルにまとめられた院内は、どこか懐かしさを感じる。「長年、ご家族そろって通院してくださる方もいらっしゃいます。看護師、受付スタッフとも開業当初からのメンバーなので、患者さんのこともよく知っているんです。日々の診療は、とても和やかな雰囲気ですよ」と弓倉整院長。以前、医師として宇宙飛行士の健康管理を行った経験があるという弓倉院長は、現在、同院にて専門の循環器科のみならず認知症ケアも含めた内科全般に対応。対外活動にも意欲的に取り組んでいる。最近は新型コロナウイルスの問題で相談を受けることも多いそうだ。そんな弓倉院長に、診療で大事にしていることを聞いた。

(取材日2018年5月18日/再取材日2020年6月16日)

CCUや宇宙開発事業団で経験を積む

開業前は、日本大学医学部附属板橋病院のCCU(心臓血管系患者対象の集中治療室)に勤務されていたとか。

弓倉整院長 弓倉医院1

ええ。現在は医療の進歩に伴いCCU在室中の死亡率は低くなってきていますが、当時は全国の大学病院でCCUが設立され始めた頃で死亡率が高かったのです。日曜も休日もすべてを費やし、全力を尽くして治療したにもかかわらず、救命できない患者さんがたくさんいました。それがどうしようもなくつらかったですね。反面、回復につながった方もいらっしゃり、それは非常にうれしいことでした。CCUでの治療は一刻を争うシビアなものです。非常に緊張感が高いのですが、治療結果がすぐにわかる点で私の性に合っていたと思います。

宇宙飛行士の健康管理のご経験もあるそうですね。

1988年から5年間、宇宙開発事業団で、宇宙飛行士の地上訓練中と飛行前・中・後の健康管理を行いました。宇宙飛行士に対するアメリカ航空宇宙局の健康診断の基準はかなり厳密で、宇宙に飛んだ後は、地上の管制室から健康管理を行いました。アメリカでは宇宙航空医学は予防医学の領域です。日本人宇宙飛行士がフライト中は、毎日8時間管制室でヘッドセットをつけて、各種モニターを見ながら健康状態を管理するのが仕事でした。宇宙は重力もなく地上とはまったく違う環境であり、また直接診察はできずモニター越しでの管理で、最初は戸惑いましたね。

さまざまなご経験があって、開院されたのですね。クリニックの患者層を教えてください。

弓倉整院長 弓倉医院2

幅広い年代の方が来院されますが、生活習慣病で通院している中高年の患者さんが多いです。例えば糖尿病の方は心筋梗塞や不整脈を持っている方が多く、私は循環器内科の中でも心臓血管系の重い疾患を多く診てきましたので、生活習慣病と心臓の疾患を併せて診療できるのは強みだと思います。心臓に関しては、以前40代の方が健康診断で心雑音を指摘され、相談にいらっしゃったのですが、心音を聞いてすぐ心臓弁膜症だとわかりました。直ちに大学病院に紹介し、手術をする運びになったというケースもありましたね。一方20~30代の若い方は、動悸や息苦しさを覚えていて、インターネットで検索し当院を見つけたという方が多くいらっしゃいます。原因としては、生活習慣の乱れやストレスから来る不整脈が多いです。不整脈の薬は副作用も結構あるので、当院では基本的にまず生活指導で対応するようにしており、必要なケースのみ薬物投与を行うようにしています。

コンコーダンスに基づき、患者と二人三脚で病に挑む

循環器では、どのような症状があれば受診すべきですか?

弓倉整院長 弓倉医院3

はっきりとした胸の痛みでなくとも、胸部に違和感があってその頻度が増えている場合は受診をお勧めします。外傷と違って心臓の痛みはわかりにくいもの。胸でなくみぞおちや背中、時にはおなかの痛みとして訴えられる方もいます。しかしこういった痛みは、胃炎や逆流性食道炎など消化器疾患が原因のこともあるので、鑑別診断が欠かせません。狭心症の患者さんには、「胸が締めつけられるような感じ、圧迫される感じ」というのが多いですね。また体を動かした後にこのような症状が感じられる場合も、狭心症の可能性が高いです。もちろん喫煙習慣や高血圧、脂質異常症などがある方は、より一層注意が必要です。

診療の際に特に気をつけていらっしゃることは?

主に2点あります。1点目は「コンコーダンス」。これまで医療の現場では、患者さんが医師の指導を遵守する「コンプライアンス」の考えが一般的でしたが、今は両者がパートナーとして情報を共有し、意思を確認し合って治療を進めていく、「コンコーダンス」の概念が中心となりつつあります。私も患者さんに治療に関する情報をお見せしながら、お気持ちに寄り添って診療するよう心がけています。もう1点は「病気を見落とさない」こと。動悸や息切れなどは珍しい症状ではありませんが、重篤な病気が隠れている場合があります。また症状はなくても、年齢や生活習慣から考えると病気のリスクが高い人もいます。そういった人は大学病院へ紹介して専門的な検査を受けていただき、発症リスクを減らすことにつなげます。

地域の高齢者医療、特に認知症ケアに注力されていると伺いました。

弓倉整院長 弓倉医院4

以前、ご高齢の方に簡易の認知症検査を行ったことがあって、想像以上に多くの方が認知症のリスクを抱えていることがわかりました。それで2004年に「板橋区認知症を考える会」を立ち上げました。板橋区の行政や医療機関で、認知症に対する共通認識とどこでどういう医療を提供しているかということを共有する会ですが、今でも東京都健康長寿医療センターなどと連携を取りながら、板橋区医師会とも協力して活動を続けています。

認知症の診療において、どのようなことを大事にしていますか?

患者さんのご家族に対するアドバイスが重要と考えています。患者さんご本人の健康はもちろん大事ですが、介護をしている家族が疲弊することもあるからです。また、ご家族が正しい知識を持たずに患者さんと接していると、「なんで同じことを聞くの!」などと、間違った対応をしてしまいます。ですので、正しい接し方を指導したり、また、認知症の家族会をご紹介するなど、状況に応じてご家族をサポートできたらと思います。さらに、ケアマネジャーなど地域での連携も必要になります。認知症は早期に発見し、ケアマネジャーをつけて、その方の生活を早いうちから支援するのが理想的です。患者さんを担当するケアマネジャーと直にお会いして、サポートの仕方などを話し合ったりもしています。

安心して相談できるクリニックとして

クリニックの外でも幅広く活動されていますね。

弓倉整院長 弓倉医院5

日本学校保健会の専務理事として6年目になります。その関係で日本各地の学校やイベントに出向き、養護教員や保健の先生、校長先生、教育委員会の方々などに、アレルギーやメンタルヘルスなど、現代の子どもたちの健康課題について話をしてきました。最近は、新型コロナウイルスの件で学校が一斉休校になり、学校現場もさまざまな変更を余儀なくされています。3ヵ月近くの休校で、子どもたちもストレスがたまっています。学校を再開するにあたってどうしたら良いのか、そんな中、関係各所から相談があり、忙しくしていました。

クリニックでは、どのような感染症対策をしているのですか?

感染症予防の観点から、頻繁に通院するのは控えたほうがいい部分もあります。患者さん一人ひとりの状態を診て、症状が落ち着いている方に関しては、ご希望に応じて薬を多めに処方するなどしています。一方、発熱など緊急の方に対しては、通常の患者さんと発熱の患者さんとで診療時間帯を分けています。具体的には、診療前の時間帯や、お昼休憩の時間などに診療しています。

最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

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新型コロナウイルスの問題で、ソーシャルディスタンスをはじめ、働き方や、生活様式が変わり、戸惑うことや不安なこともあると思います。このようなときは、正しく恐れることが大切。いろいろな情報が飛び交う中で、何が正しい情報なのかを見極める意識を持つことだと思います。ヘルスリテラシーの一環として、信頼できる情報源を持つことです。大人も子どももストレスを抱えている人が多いと思いますが、必要以上に恐れないこと。安心して相談できる人を見つけ、落ち着いて行動していきましょう。通常の外来に加えて、訪問診療や、板橋医師会主導の認知症患者へのケアにも引き続き取り組みます。さらには日本学校保健会のイベントや厚生労働省の研究など対外活動も含めて、この板橋での地域医療を頑張っていきたいと思っています。

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