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「甘え」や「性格」で片づけないで
生きづらさを生む対人過敏

Baseクリニック赤坂

(港区/溜池山王駅)

最終更新日:2023/06/20

Baseクリニック赤坂 「甘え」や「性格」で片づけないで 生きづらさを生む対人過敏 Baseクリニック赤坂 「甘え」や「性格」で片づけないで 生きづらさを生む対人過敏
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ストレス社会といわれる現代。家庭や学校、職場などで人間関係がうまくいかず、生きづらさを感じている人はいったいどれほどいるのだろう。中には、人付き合いが苦手な自分を、「甘え」だと責めてしまう人もいるかもしれない。その一方、敏感で刺激を受けやすい人を表す「HSP」というワードが社会に認知されてきたことで、内心安堵したという人も少なくないはずだ。しかし、そうした自己判断の裏には対人過敏が潜んでいる可能性がある、と「Baseクリニック赤坂」の吉岡鉱平院長は指摘する。今回は、心療内科やペインクリニックなどの診療に精通し、患者とともにストレス疾患やメンタル不調の解決をめざす吉岡院長に、対人過敏の特徴や考え得る原因について詳しく語ってもらった。

(取材日2023年5月1日)

対人過敏の原因として考えられる要素は、実にさまざま。医師による、こまやかな診断が大切

Q対人過敏とは、どのようなものなのでしょうか?
A
Baseクリニック赤坂 気になる症状があれば我慢せずに相談を

▲気になる症状があれば我慢せずに相談を

人と話したり接したりすることが困難で、人間関係を長く保つことや相手に親近感を持つことが難しい状態のことです。例えば、学校や職場で否定的な評価や叱責をされると過度にショックを受け、疲弊してしまうことがあります。最近では、感受性が強い人を表す「HSP」や「繊細さん」と呼ばれることも多く、病的なレベルにないにせよ、成人の4人に1人が対人過敏であるという報告もあり社会的に注目されています。また対人過敏の強い人は他者の言動を過度に気にすることが多いので、ストレスを感じやすく、メンタル不調が生じやすい傾向も。従来型のうつ病や、いわゆる「新型うつ」になりやすい人の傾向としても、対人過敏性が指摘されています。

Q対人過敏の原因についても、詳しく教えてください。
A
Baseクリニック赤坂 さまざまな要因が、対人過敏につながることも

▲さまざまな要因が、対人過敏につながることも

原因としては、遺伝や脳機能など持って生まれた特性による「先天的要因」と、生まれた後の体験による「後天的要因」の2つの要素が関係していると考えられています。性格の範疇として語られることが多いですが、背景に精神疾患や障害が隠れている場合もあります。先天的要因の影響が強い原因としては、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)といった発達障害がありますが、その二次的な影響として対人過敏が現れることがあります。また、ASDとADHDのある人は生きづらさを感じやすいことから、二次的にトラウマ体験をしている場合があるので、トラウマ関連疾患と混合した状態で症状が現れることもあります。

Q後天的要因には、どのようなものがありますか?
A
Baseクリニック赤坂 オンラインでの診療にも対応している

▲オンラインでの診療にも対応している

対人過敏を特徴とする病態として「複雑性PTSD」が挙げられます。もちろん別の可能性もあるので安易な決めつけは禁物。PTSDとは生死に関わるような強い恐怖体験によって発症し、再体験、回避麻痺、過覚醒という3大症状を特徴とする病態です。一方、複雑性PTSDはICD-11(WHOの国際疾病分類第11版)で正式な疾病としてPTSDと区別されています。特徴としては虐待などの衝撃的なトラウマ体験が1度ではなく持続的・反復的にあったのかに加え、上述の3大症状や感情調節の異常、自己否定的認知、そして対人過敏をはじめとした対人関係障害から成る「自己組織化の障害(DSO)」が診断基準に含まれることが挙げられます。

Q複雑性PTSDのほかにも、後発的な要因はありますか?
A
Baseクリニック赤坂 患者に寄り添い、しっかり話を聞き診察していく

▲患者に寄り添い、しっかり話を聞き診察していく

強い対人過敏を示す可能性のある疾患を他に挙げるとしたら、「発達性トラウマ障害」「境界性パーソナリティー障害」があります。発達性トラウマ障害は、幼少期の生育の過程で繰り返された逆境体験によるストレスが原因で、幼少期の反応性愛着障害のほか、大人になってもさまざまな症状に悩まされ、発達の過程で複数の診断カテゴリーを渡り歩く「異型連続性」を示しやすい特徴を持つ病態です。境界性パーソナリティ障害も、感情調節や安定した対人関係の継続が困難になりやすいのが特徴。その原因としては、生まれ持った脳特性などの先天的要因と、幼少期に常に親から否定されて育った経験などの後天的要因のかけ合わせが考えられます。

Q治療についても教えていただけますか?
A
Baseクリニック赤坂 なんとなく感じている「生きづらさ」を相談することも大切

▲なんとなく感じている「生きづらさ」を相談することも大切

現状、対人過敏に対する根本的な治療があるというわけではなく、不安や抑うつといった二次的な症状に対する対症療法が中心となります。しかし、症状を抑え込むためだけの薬物療法は離脱症状や依存リスクもあり、注意が必要です。専門的な心理療法を受けられる場所が今後も増えていくことが必要ですが、何よりも、本人を支える周りの環境が重要であり、信頼できる他者との関係性の中で少しずつ改善に向かっていくと考えられています。

ドクターからのメッセージ

吉岡 鉱平院長

人付き合いの難しさや生きづらさを感じてしまうことは、性格の問題と切り捨てたり、甘えではないかと自分を追い込んでしまう人は多いと思います。もちろん、すべてのケースに当てはまるわけではありませんが、トラウマ体験とならないまでも、幼少期の逆境体験や愛着形成の問題が大人になってからも対人過敏をはじめとした生きづらさの原因として続く可能性もあります。診断基準未満のトラウマ関連疾患や神経発達症の傾向を持つ人も多いのですが、診断がつかないからといって何もできないわけではありません。適切な治療や支援を受けることで状況が改善に向かう可能性があります。一人で抱え込まず、一度、医師に相談してみましょう。

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