症状が出にくい骨粗しょう症
骨折の連鎖を防ぐため積極的な検査を
中野タカハシ整形外科クリニック
(中野区/中野駅)
最終更新日:2023/12/15
年齢を重ねるとともに、多くの人にとって他人事でなくなる骨粗しょう症。症状を自覚しづらいだけに、骨折してから初めて判明するケースも多い。日常生活の中でどのように予防し、また治療を行えば良いのだろうか。東京都中野区の「中野タカハシ整形外科クリニック」では、骨粗しょう症の精密な検査や治療方法の提案はもちろん、自己注射による治療を行うときには、まずは看護師が付き添いながら注射を打つ指導をするなど、患者自身が治療をうまく継続していけるようケアに努めている。「お一人お一人の状態や環境によって取り組みやすい治療法は異なるため、個々人に合わせた対応を心がけています」と語る高橋祐成院長に、骨粗しょう症の基本から日々の予防法まで解説してもらった。
(取材日2023年11月14日)
目次
女性では閉経後のホルモン量の低下が骨粗しょう症の引き金に。一定の年齢での骨密度測定が肝心
- Q骨粗しょう症とはどのような病気でしょうか?
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A
骨の強さは骨の密度(骨密度)と骨の質(骨質)という要素で決まりますが、骨粗しょう症とは、骨密度の低下あるいは骨質が悪化した結果、骨がもろくなり、骨折をしやすくなる病気です。骨は、日々新陳代謝をしています。つまり、新しい骨をつくり古い骨を壊すという代謝により強度を保っているのですね。ところが特に閉経後の女性では、女性ホルモンの量の低下により、そのつくる・壊す、すなわち骨形成と骨吸収のバランスが崩れ、骨吸収の影響が増加し、骨密度が低下しやすくなってしまいます。また骨の石灰化に必要なカルシウムやビタミンDの摂取が不足したり活性化されない場合にも、骨質が悪化し、骨粗しょう症になることがあります。
- Qどんなときに骨粗しょう症の検査を考えれば良いでしょうか?
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A
痛みなどのはっきりした自覚症状が現れにくいという特徴があります。そのため、例えば腰痛の検査の際に撮影したレントゲン写真で背骨が上下方向に潰れていたとか、骨折の治療を行った場合に、骨密度を測定して骨粗しょう症が判明するといったことも少なくありません。進行すると背中や腰の曲がりが強くなり、実際に体を支えることが難しくなることさえあります。一定の年齢に達して以降は、積極的に骨粗しょう症を疑って検査してみることをお勧めします。女性の場合は特に閉経前後から女性ホルモンの量が低下しやすくなりますのでおおよそ50歳前後くらい、男性でも70歳以上などのタイミングで一度検査してみてほしいですね。
- Q骨粗しょう症の治療法にはどのようなものがありますか?
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A
食事指導や生活指導を基本とした上で、骨粗しょう症と診断された方へは薬物治療を開始します。内服薬のほか、医院で行う注射や自分で行う注射があります。内服薬ではビタミンD製剤や、女性の方へはSERMという女性ホルモンの代わりに新陳代謝のバランスを調整するための薬を主に使用しますが、さらにビスフォスフォネートという骨吸収抑制のための薬も併用する場合があります。また、特に重度の骨粗しょう症に対しては、注射製剤を使用することが多いですね。注射製剤には、骨形成を促すと同時に骨吸収抑制も期待できる薬など、多くの種類の薬が登場しており、それぞれの特徴を生かして効率的に治療を進められるようになっています。
- Qこちらのクリニックで行っている治療の特徴を教えてください。
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A
まず正確に診断することが前提で、骨密度や血液検査をできるだけ詳しく行います。日本骨粗鬆症学会が推奨する、腰椎と大腿骨の2ヵ所の骨に2種類のエックス線を当てて測定するデキサ法で評価します。そして血液検査では、主に骨の新陳代謝に関わる細胞の活性やカルシウムやビタミンDなどのミネラルバランスを調べます。治療薬に関してはとても多くの種類がありますが、患者さんの年齢や状態、生活環境などによって、最も効果的な薬の種類や使用順序が異なりますので、一人ひとりに合った治療を心がけています。例えば自己注射の薬では動画をお見せして丁寧に指導し、注射の際は看護師が付き添って確認するなど、きめ細かくサポートしています。
- Q日常生活の中で行える骨粗しょう症の予防法はありますか?
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A
運動と食事がとても大事です。運動に関しては、例えば1日8000歩の運動を週3回行うと、腰椎の骨密度が増加するデータがあります。また1日30分の歩行習慣と週2回の筋力訓練は、骨密度の維持として有用です。太陽の光を浴びることも大切ですので、日中に外を歩く習慣をつけていただくといいですね。食事に関しては、カルシウムとビタミンD・Kが骨の栄養素として重要です。牛乳・乳製品や魚、たんぱく質を意識して摂取しましょう。反対に、加工食品などに多いリンを多く含む食品や、カフェイン・アルコールは取りすぎないよう注意してください。サプリメントは治療中の薬との相互作用が生じる場合があるため、まずはご相談ください。