「今できること」に目を向けた
自分らしく生きるための緩和ケア
小金井ファミリークリニック
(小金井市/武蔵小金井駅)
最終更新日:2023/06/08
- 保険診療
闘病中の人のさまざまなつらさを和らげるために提供される緩和ケア。痛みや呼吸困難などの身体的苦痛だけでなく、家族や大切な人との関係性の変化、お金の心配なども含めた心理社会的苦痛のほか、生きる意味や価値を問うスピリチュアルな苦痛までその人のつらさと捉えて対応するアプローチだ。「まずはお話をしっかりと聞き、その方が最後まで自分らしく生きるためにできることを一緒に考えていきます」と話すのは、「小金井ファミリークリニック」の大井裕子先生。大井先生は、長くホスピスで終末期の緩和医療に携わった経験を生かし、看取りを見据えて患者と家族に「今できること」に目を向けたサポートを行うことを大切にしている。取材では、緩和ケアの基本的な知識や、具体的な取り組み、家族が知っておくべきことなどについて聞いた。
(取材日2023年3月29日)
目次
終末期だけでなく治療中や診断直後でも受けられ、家族も対象になる緩和ケア
- Qまずは、緩和ケアについて教えてください。
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A
緩和ケアは、命を脅かすような病気のある人に対し、抱える苦しみを理解しようと関わることから始まります。「こんな状態で生きていかなくてはならないのはなぜ?」といったスピリチュアルな苦しみの奥には、緩和されていない痛みなどの身体的苦痛や、大切な人との関係性の変化など気がかりなことが潜むケースも。たとえ残された時間が限られ、病状が良くなることが見込めなくとも、「今」を大切に希望する療養が実現できるよう、医師らが伴走しながら必要な医療やケアを提供します。緩和ケアの対象として知られるがんの終末期だけでなく、病気の治療中や診断直後でも、不安な気持ちや苦痛を緩和するために受けられるもので、ご家族も対象です。
- Q具体的に、どのようなケアが受けられるのでしょうか?
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A
強い痛みや呼吸困難に苦しむ人には、苦痛緩和のための薬剤の処方や、日常生活でできる工夫やケアの提案が行われます。また、患者さんとご家族のQOL向上を図る上で、食べる支援は重要な要素の一つ。患者さんの中には、まだ口から食べたいのにそれを制限されていたり、逆に食べることが苦痛なのに十分な栄養摂取を周囲から勧められていたりして、つらい思いをしている人も少なくありません。そのような事態を避けるためにも、ご本人の思いをできる限り尊重し、病態に合った食事方法を提案します。近年は、医師が歯科医師や管理栄養士と連携することで、終末期でも口から食べられるような支援が行われるようになりました。
- Qどのようにすれば緩和ケアを受けられますか?
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A
前提として、緩和ケアは一般的に治療が限界を迎える頃に行われるものだと認識されていることが多いのですが、決して諦めの医療ではありません。患者さんやご家族が希望する療養をかなえるために、苦痛の緩和を図りながら、医師らができることを一緒に行っていくものです。希望される場合は、病院の主治医に相談するか、がん治療を行っている病院にある、がん相談支援センターで緩和ケアを検討している旨を伝えてみましょう。緩和ケアチームの看護師に相談に乗ってもらえたり、緩和ケアを受けられる地域の医療機関を紹介してもらえたりします。外来の通院が難しい人は、訪問診療によって在宅で緩和ケアを受けることができますよ。
- Qご家族に知っておいてほしいことはありますか?
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A
ご家族が患者さんに、今後の見通しについて伝えることを考える時期が来ると思います。それはとてもデリケートな問題ですし、たいへん勇気のいることでしょう。しかし、お互いが現状と今後の見通しを受け止めて、この先どう過ごしたいかを話し合うことはとても意義のあることです。地域にはご家族と患者さんをサポートしてくれる医師や看護師、ケアマネジャーなどさまざまな専門家がいますので、抱え込まずにまずは地域包括支援センターに相談してみましょう。中には悪い情報は知りたくないという患者さんもいるかと思いますので、その方のタイミングを見計らって話し合いの場をつくるのが理想的ですね。