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和田 豊郁 院長の独自取材記事

心血医院

(久留米市/西鉄久留米駅)

最終更新日:2024/03/13

和田豊郁院長 心血医院 main

久留米駅・西鉄久留米駅のちょうど間にあり、六ツ門・シティプラザ前のバス停から徒歩2分ほどの文化街アーケード内にある「心血医院(ここちいいん)」。有名SF映画の衣装をモチーフとしたコスチュームが印象的な和田豊郁(わだ・とよふみ)院長が、2015年に開業したクリニックだ。表の大通りには証券会社や銀行が何十社とある一方で、一歩奥まった道に入ると飲食店が立ち並ぶ、そんなエリアを開業の場所に選んだのは「健康診断で異常を注意されたものの、放置している人が、無理なく通院できるように」という思いから。働き世代の健康維持のサポートに尽力し、在宅診療や療養型病院の非常勤医師として精力的に取り組む和田院長に、実現したい医療の形について詳しく話を聞いた。

(取材日2024年1月24日)

会社帰りでも通院しやすい環境を提供したい

先生のご専門は循環器内科だそうですね。

和田豊郁院長 心血医院1

父が昔ながらの町医者をやっていて、母は受付と会計、自宅の一部が待合室や診察室で、トイレは患者さんと共用、子どもの頃から常に患者さんが身近な存在でした。診察室には写真式の心電計があったり、エックス線写真を父が押し入れの中で現像したりしていたこともあり、父の背中を見て医学の道を意識しました。循環器内科を選んだのは、私が通っていた久留米大学医学部の胸部外科の講義で、手術の成績が良いのは的確な内科の診断のおかげと聞いて、心電図にも興味がありましたから、循環器内科で病気の診断をやりたいと思ったのです。「富士山理論」の話をする的場恒孝先生との出会いもありました。一つの分野を一所懸命にやっていたら富士山のように裾野が広くなり、あらゆる分野に詳しくなっていくものだ、最初からあれこれやっていても高い山にはならないよ、と。循環器内科が専門だった的場先生は私が医師になる頃には環境衛生学の教授になられました。

この場所に開業された理由についてお聞かせください。

働く人からの健康管理の相談に対応する立場で感じる課題の一つが、自覚症状がないのに働き盛りの人が昼間に休みを取ってまで医療機関に行くのか、ということです。一方、高齢者で血管性認知症となっている人は高血圧や糖尿病が原因とされているわけです。病気には始まりがあります。健診で引っかかるということの多くは生活習慣病の始まりであり、ここで医療が介入すれば将来の認知症を減らすことができるのではないかと思うのです。しかし、いかんせん自覚症状はなく、医療機関へ行くことが生活の優先順位の上のほうには来ないんですね。この「まだはっきりとした自覚症状はないが、検査値に異常がある」状態の人たちのことを「未病」と呼んでいます。高齢になっても街に出歩く人が減らないようにしていくための支援活動をすることが医療者ができる街おこしだと考えています。

夜は19時から22時に対応されているので、周辺の飲食店のオーナーさんなども来院されるのでしょうか?

和田豊郁院長 心血医院2

ちょうどビジネスタイムのど真ん中なので行けない、と考えられる人も多いのですが、飲食店などの自営業のオーナーさんには会社組織のように健康診断を受ける義務が課せられておらず、急に体調を崩されて入院、という方もいらっしゃいます。でも同じ時間帯に働いている仲間意識を持っていただければ、相談もしやすいのではないか、検査値異常を自慢するお客さんを紹介してもらえるのではないか、と考えたこともあり、そのような時間設定になりました。

患者のライフスタイルに合わせ個別にアドバイス

診察について教えてください。

和田豊郁院長 心血医院3

まずは患者さんのライフスタイルを知るところから始まります。お酒は好きか、食べ物は何が好きか、どんな仕事をしているのか、どんな運動をしているのかなどなど。ここで循環器内科で培った「診断のための問診」が役立っています。そうしてアドバイスするのは、食事制限ではありません。私自身、食べるのも飲むのも好きですから、お酒が入った状態で来院されてもウェルカムです。それで何をアドバイスするかというと、運動です。生活習慣病の改善の最大のポイントになるのは速筋を使った運動。スポーツをするときには使うのに日常生活ではほぼ使わない速筋。だからその方に合った運動をアドバイスします。

具体的にどのようなアドバイスをするのですか?

例えば、2型糖尿病+脂質異常症+アルコール性肝障害と診断されるような方が、「ゴルフに週2回行っていて、行こうと思えばもっと行けるけれど遊んでばかりいると思われるので遠慮している」と言うのであれば、「医師の指導で週3~4日ゴルフをしていると言えばいいのでは?」とアドバイスするでしょう。ゴルフの回数を増やせば、数値も下がることが見込めます。他にも「おなかいっぱいなはずなのについ食べすぎてしまう」という相談があれば、「災害対策のために食糧備蓄をせよと言われていますが、本能は食べられるときに食べておかないと明日食べられないかもしれないと思っているので、1日に必要な分の食料だけを家に置いてください」とお伝えします。本能には逆らえません。このように無理なく続けられそうなアドバイスをするようにしていますね。

とても実践的なアドバイスですね。

和田豊郁院長 心血医院4

当院では、肥満の人には毎朝の体重測定を勧めています。体重が増えていたら余分に食べたものや運動量が少なかった理由のメモをしていると、体重が増える理由が見えてきます。人類の歴史からすると、ほんの少し前まで、人間は明日の朝食べるものを用意して寝るようなことはなく、朝に目が覚めたら子どものために親は狩猟や採集に行き、子どもに食事を取らせるという暮らしをしていたのです。これが本当の朝飯前の仕事。ですから目の前に食料があれば食べられるだけ食べておくことは本能なんです。今は保存食も冷蔵庫もあるので、なんでもかんでも自分で管理しないといけない。そう患者さんにはお伝えしていますし、私自身も先のような方法で自分の体を管理しています。冷蔵庫に入っているのは主に飲み物なんですよ。

本能を知り体を自身で管理して生活習慣病を改善へ導く

夜間にも診療されているということで、お酒を飲んだ状態で受診する患者さんもいらっしゃるそうですが……。

和田豊郁院長 心血医院5

患者さんがお酒が入った状態でも診察を行うなんてことはなかなか今の常識では考えにくいかもしれませんが、絶食時のデータは特別な一瞬で、日中はほとんど食後なのです。夜勤や交代制の勤務形態がある社会においては、入院中の患者さんのように「規則正しい生活」などできるわけがありません。そういう実情に合わないモデルを患者さんに押しつけるのは違うのではないかと思うんです。だからこそ、しっかりとご自身の体の管理を行ってほしいのです。今の生活パターンを是として、何が足りないのか考えることは難しいかもしれませんが、自分の体を客観視するお手伝いをすることが当院の存在意義だと考えています。

診察で心がけていることは何ですか?

時間をかけて患者さんのバックグラウンドをしっかりと理解すること、そして難しい言葉を使わず、小学4年生でも理解できる言葉で説明することです。大学病院にいたときに「電子カルテシステムを含めた病院の仕組みについて小学4年生のグループが話を聞きに来るから対応してくれ」と病院から言われたことがありましたが、普段の話し方で理解してもらえました。それくらいにわかりやすい話し方になっていると思います。また、小さなお子さんの診察でも、お母さんを通じて話すのではなく、お子さんご本人としっかりとコミュニケーションを取るようにしています。食事制限はほとんどせずに、日常生活にちょっとしたプラスの運動を与えることで、自己管理の意識が生まれ、生活習慣病の改善につながっていく、そういうやり方を提案していますから、新しい視点が欲しい方にはぴったりなのではないでしょうか。ぜひ気軽に来院してほしいですね。

今後の展望についてお聞かせください。

和田豊郁院長 心血医院6

今回お話しした内容を、いずれ健康増進に関する市の事業としてやっていくことができれば、もっと多くの方に、症状はないのに検査値異常が出る未病の危うさや生活習慣病の改善の仕方を伝えていけると考えています。今は定年後からの人生も数十年という時代です。体が弱り始める前に、医療や介護が必要な介入をしなければ超高齢社会は持たないと思っています。当院でそのプロトタイプを提案しているようなものかもしれません。いずれにせよ健康診断で異常を指摘された方、お酒を飲みながらでも生活習慣病を改善したい方はぜひ当院で気楽にお話をしましょう。きっとあなたに合ったやり方を見つけます。

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