認知症は早期発見・治療が重要
気になる物忘れや症状は早く受診を
ほどがや脳神経外科クリニック
(横浜市保土ケ谷区/保土ケ谷駅)
最終更新日:2024/03/15
- 保険診療
超高齢社会の中で5人に1人は発症するといわれる認知症。根治しないイメージがあるが、認知症の種類によっては、早期に医療介入することで進行を遅らせていくことも望めるという。最近、新しいタイプのアルツハイマー病治療薬であるレカネマブが発売されたことも注目される。そこで、長年の脳疾患診療で培った経験を生かし、物忘れや認知症の診療に注力する「ほどがや脳神経外科クリニック」の日暮雅一院長に診療で行う検査や、診療の詳細を聞いた。「命に関わる脳疾患が潜んでいることが原因で認知障害が起こっている可能性もあるため、気になることがあればすぐに検査を受けてほしい」という日暮院長。患者を尊重してその視点や立場を理解しながらケアを行うパーソン・センタード・ケアを実践する同院の物忘れの診療をぜひ知ってほしい。
(取材日2024年1月23日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q物忘れの診療とは、どのようなことを行うのでしょうか。
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A
当院では、認知症、加齢による物忘れ、うつ病や過労などが原因となる若い人の物忘れなど、さまざまなケースに対応しています。認知症には複数の種類があり、代表的なのはアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症などの変性疾患による認知症で、進行を遅らせるための薬を服用する対症療法や環境調整が中心です。正常圧水頭症や脳腫瘍などが原因で起こる二次性認知症は、原因となる疾患の治療を通して症状の改善をめざします。それ以外にも、薬の副作用や精神疾患により認知障害が起きることもあります。治療には疾患の種類や原因の見極めが重要なので、当院は問診だけでなくMRI検査や血液検査にも力を入れています。
- Qどのような症状が出たら、受診すべきでしょうか。
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A
料理や買い物、お金の管理、車の運転、外出など、今までできていたことができなくなったり、数分前のことを忘れてしまったりといった症状が出たら、一度、物忘れや認知症を専門とする医療施設の受診をお勧めします。認知症には段階があり、MCI(軽度認知障害)という、いわゆる認知症の前段階で医療が介入することが大切だといわれています。「年のせい」「自分は大丈夫」と安易に判断せず、本人やご家族が「おかしいな」と思ったら早めに受診をしていただきたいのです。認知症という言葉に抵抗感を持たず、「念のために検査を受けてみよう」くらいの気持ちでも構いません。検査の結果、何も異常がないとわかれば安心できますしね。
- Q具体的にどのような治療を行うのですか?
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A
変性疾患による認知症は、抗認知症薬を服用して進行を遅らせることをめざす対症療法や環境調整が中心。アルツハイマー病に対する新しい治療薬も期待されますが、薬の作用には症状の程度によっても個人差があります。日々の生活リズムの見直しや、ケアマネジャーを中心に環境の組み立てなども行います。認知症診療において、家族をはじめとした介護者は非常に大切な存在ですので、バランスを見ながら介護者への指導も行います。また適切な食事や運動、そして毎日を楽しむことも重要なので、趣味も積極的に勧めます。当院では診断や治療が難しいものは、専門機関と連携してケアを行っています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診と神経学的診察で現状共有。認知症の原因を追求
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どのような状況で物忘れが起こるのか、現在の悩みなどを問診で医師に共有する。客観的な意見を聞くために、本人だけでなく家族と一緒に問診を受けるのがベターだが、患者が家族の前で本当のことを言えないようなケースは家族別室で行うこともできるという。服用している薬の種類や病歴など、認知症の原因を明らかにするためにできるだけ詳しく伝えよう。また神経診察により錐体外路症状や失行、歩行の異常などを確認される。
- 2MRIや血液検査で疾患の有無を確認
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問診で必要と判断された場合、MRIや血液検査で脳の状態を詳しく調べ、物忘れの原因となる脳疾患、代謝的異常、甲状腺機能低下の有無などを確認。同院では初診日の検査も可能。認知症の症状が発作的に起こる人はてんかんの可能性もあるため、てんかん専門の医師によるチェックも。同院の診療で判断が難しい場合、脳波など精査をするために連携病院に紹介できる体制も整えているという。
- 3神経心理検査の実施
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認知症かどうかの診断をする上で、重要な材料になるのが神経心理検査。同院では「長谷川式知能評価スケール」のほか、疑い病名を意識して数種類の神経スケールを組み合わせて行う。複数の言葉を記憶し、後でもう一度回答することで即時記憶を試す質問や、複数の物を見せて隠し、何があったか回答することで視覚記憶を試す質問などが含まれる。認知症が進行している場合は、集中力が継続せず途中で放棄してしまうこともあるという。
- 4場合によっては、2回目の神経心理検査を行う
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神経心理検査は異なるものを2回実施することもあるという。1回目の検査で特定の数字が下がっていても、2回目の検査でその数値が正常になっている可能性もあり、1回の検査だけで判断できないケースもあるからだ。「1回目の検査は、認知症かもしれないと初めて告げられて緊張している状態によって数値が変化している可能性もあります。1~2週間空けて、気持ちが落ち着いた状態でもう一度検査や話をすることが大切」と院長。
- 5診断後、医師と相談しながら治療を開始
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認知症であると診断されたら、医師や家族と相談しながら治療方針を決めて治療を開始。精神疾患が疑われる場合は心療内科を、手術が必要な病気が潜んでいる場合は大学病院などを紹介するなど、同院は他医療機関とのネットワークを生かした治療ができるのも強みだという。患者を支える家族のケアも視野に入れ、介護相談に関しても包括的にサポートしてもらえる。