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笠原裕司 院長の独自取材記事

笠原クリニック

(流山市/流山おおたかの森駅)

最終更新日:2021/10/12

笠原裕司院長 笠原クリニック main

東京へのアクセスの良さから近年人気上昇中のつくばエクスプレス線沿線。買い物や通勤など多くの人でにぎわう流山おおたかの森駅前を抜け、徒歩5分ほどの「笠原クリニック」を訪ねた。院長の笠原裕司先生は、漢方と西洋医学両方の長所を取り入れた医療「和漢診療」を20年以上実践してきたベテラン医師。「患者の幸福」を第一に考え、西洋医学だけでは治療が難しい不定愁訴や心身症、アトピー性皮膚炎、冷え性、月経不順など幅広い症状を訴えて訪れる患者に対し、漢方・西洋医学双方を用いた治療を行っているほか、訪問診療にも注力。笠原院長に漢方による治療の特徴や西洋医学と併用する意味から医師をめざしたきっかけまで、幅広くお話を伺ってきた。

(取材日2015年7月27日)

「漢方で患者さんに幸福をもたらす」が医師になった原点

先生が漢方医を目指されたきっかけから教えてください。

笠原裕司院長 笠原クリニック1

僕の実家は薬局で、物品やOTC医薬品のほかに、漢方相談を受けて症状に合った漢方薬の販売も行っていました。小学校高学年の頃、父と一緒に町を歩くと、「先生のおかげで良くなりました!」と頭を下げてくれる患者さんとすれ違ったりして、子ども心に「医療全般はもちろん、漢方は人に幸福をもたらすことができる、感謝されるものなんだな」と強く感じたのが最初の一歩です。将来は医学か薬学に進もうと考え始めた高校1年の時に「寺澤捷年先生が富山医科薬科大学に赴任し、全国で初めて、東洋医学と現代医学を組み合わせた和漢診療部を開設された」ということを父から聞き、これはぜひ弟子入りしたいなと。そこに親元を離れての1人暮らしへの憧れなどの要素も重なり、同大学医学部の受験を決めました。西洋と東洋両方の医学をしっかり教わってまず思ったのは、現代西洋医学は本当にすごいものだということ。けれど同時に、そのすごい現代医学にもできないことがあり、すべてを治せるわけではないこともわかりました。内科のエキスパートになるのも、外科でゴッドハンドをめざすのも一つの道ですが、「漢方で患者さんに幸福をもたらす」というのが僕が小さい頃から思い描いていたことで、それはめざす方向として間違いではないと感じ、この道を選びました。

2013年の開業ですが、最初からいつかは開業しようとの思いはあったのでしょうか?

そうですね。両親は自営業ですし、叔父たちもサラリーマンより実業家が多かったので、「自分もいつか事業をやるんだろうな」という思いは、子どもの頃からありました。また、医師になってからは、臨床・研究どちらも経験しましたが、臨床が楽しかったのと比べ、研究は自分の一生の仕事にするイメージがどうしても湧かなかったため、漠然とですが「どこかで開業医になる」と考えてはいました。富山医科薬科大学卒業後は、研修医を経ていくつかの総合病院に勤務。2005年に千葉大学にも寺澤教授の和漢診療学講座ができることになったため、そちらに呼んでいただいて約7年間勤め、寺澤教授が退官されたのちに、私も開業した次第です。

なぜこの場所を選ばれたのですか?

笠原裕司院長 笠原クリニック2

理由はいくつかありますが、一番大きいのは勤務医時代にここの隣駅にある千葉大学の漢方診療所で週に1回勤務していたので、周辺の地域に親しみがあったからでしょうか。患者さんの中には、インターネットなどで漢方医の情報を調べて東京方面からいらっしゃる方も多く、むしろ大学の本院の外来よりも新患予約が混み合うほどで、漢方治療へのニーズの大きさは感じていました。土地勘のある場所として千葉市での開業も考えましたが、千葉大学の本院がありますし、歴史的な経緯から漢方医がたくさんいる地域なので、そこでわざわざ開業することもないかなと。加えて、市川に住んでいる両親も高齢になったことで、何かあった時にすぐに行ける距離にいてほしいと言われていたこと、このビルの3階が医療フロアになるという情報が入ってきたことなどが重なって、ここ流山で開業することができました。

看護師と医師、2人分の目と耳で患者の話を聴く

開業にあたり、特にこだわった所などはありますか?

笠原裕司院長 笠原クリニック3

看護師さんが問診するための専用の部屋を作ったことです。というのも、漢方の治療は患者さんの体質・生活・精神状態・性格などを総合的に捉え、全身の状態を診断した上で、一人ひとりに最適な漢方薬を処方していくものなので、患者さんの話をしっかり聞くことなしにいい治療はできません。けれど長年医師をやって来た中で感じるのは、診察室の短い時間の中だけでは思ったことが言えずにフラストレーションを溜めてしまったり、言ったら悪いかなと思って控えてしまって、後で窓口や薬局でぽろっとお話される患者さんがとても多いということ。面と向かって言っていただければ答えてあげられるのに! と歯がゆい思いもたくさん経験しました。そこで当院では、初診の方も再診の方も、まず看護師さんがじっくりお話を伺って血圧や体重も測定。その内容と結果を把握した上で僕が診察する、という2段構えのシステムにしたんですね。特に、現代社会で求められている漢方の役割は心身症など体と心を一体としてケアする部分が大きく、丁寧に話を聞くことが患者さんの満足度を高め治療効果をあげることにもつながると思っています。看護師さんと僕2人の目と耳でしっかり聴くこと、より細かく患者さんのニーズや変化を把握することは常に心がけています。

どのような症状の患者さんが多いのでしょうか。

現在9割ぐらいは漢方を使った治療を求めて来られる患者さんです。多い症状の1つであるアトピー性皮膚炎などはステロイドによる治療で一時的には良くなるんだけれど薬をやめるとまた悪くなってしまうという相談にいらっしゃる方がいます。また更年期障害や月経不良、冷え性など婦人科系の不調があるけれど、ホルモン剤を使うのはためらわれるという人や、症状はあるけれどホルモンの数値上は特段の異常はなく、ホルモン剤を使うほどではないと診断されたという人も多いですね。そういう場合は婦人科でも漢方薬が処方されることが多いので、どうせ漢方薬を飲むのなら専門家にかかりたいからと来られる方もいます。心身症的な要素も強いので、ストレスによって体調が崩れてしまったという人もよくいらっしゃいます。あとは、症状はあるけれど検査では異常が見つからない不定愁訴は現代医学より漢方の得意分野なので、結果的にそのような患者さんが多く集まってくる傾向はありますね。

漢方を取り入れた治療について教えてください。

笠原裕司院長 笠原クリニック4

東洋医学には「本治」と「標治」という言葉があります。「標治」は表に出ているもの、例えば鼻水が出るとか喉が痛いなどの症状を改善すること。それに対して「本治」は、体質を改善することで表面的な症状を起こさないようにする治療のことです。漢方にも即効性の高い薬もあるので、「本治」と「標治」の両方を漢方処方で行うこともありますが、場合によっては現代医学の治療で標治を行い、漢方で本治だけ行うということもないわけではありません。漢方治療で使用する漢方薬は、自然界に存在する天然の生薬を使ったもので、基本の配合に患者さんの体調や体質に合わせたアレンジを加えて処方します。せんじ薬を取り扱う薬局が少ないことや多くの場合エキス製剤でも十分な効果が得られることから、当院で処方する大半はエキス製剤を使ったものですが、病状が重かったり複雑だったりして必要があり、患者さんに納得していただける場合にはせんじ薬の処方も行っています。

これからはできる範囲で訪問診療を増やしたい

漢方による治療は、例えば生活習慣病の治療にも役立つのでしょうか?

笠原裕司院長 笠原クリニック5

生活習慣病はとても広い概念で、動脈硬化やがんの大本になっているような病変を広く指すものですが、例えば血糖やコレステロールの値が漢方治療で下がるかというと、それは下がりません。ただ、そういうことを求めて来られる患者さんに対して、「これは漢方で改善できますよ、これは現代医学で治療する方があなたのためですよ」ときちんと説明できることは、現代の日本の漢方医にとって非常に重要なこと。西洋医学と東洋医学、両方の長所・短所をわかった上で患者さんに一番最適なものを選んで提示し、納得できるようにきちんと説明してあげることが僕たち漢方医の役割であり、それができて初めて患者さんに幸福をもたらせるのだと思います。実際、こちらが提示する方法と患者さんの希望が一致しないことはままあります。しかし、だからこそ理由をきちんと話していきたいと思います。そのため、必要があれば東西どちらの薬も使うし併用もするのが患者さんの一番の利益になる、との思いで日々の診療に当たっています。

今後の展望や、力を入れていきたいことについて教えてください。

今も少しずつ行ってはいるんですが、できる範囲で訪問診療を増やしていくことです。普段外来に通うのは大変ですし、病状が急変した時は救急車を呼ぶので、普段の健康管理を訪問診療でしてほしいという希望があるので、それに応えていきたいと思っています。2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、自然増で死亡数が増えていく中で、病院のベッド数が足りなくなるのは間違いありません。在宅で亡くなる方も増えるはずで、その受け皿は誰かがやらなければいけない。「開業するからには、訪問診療に出て行く開業医になろう」という思いはあったので、訪問診療に出られるように開業時から昼休みは長めに設定しました。後になって診療時間を変えるとなると、スタッフの勤務時間の調整も必要になるので、かなり大変ですからね。休診日には訪問診療専門クリニックで勉強しています。今は月5〜6人の方を訪問診療していますが、徐々に増やしていきたいと思っています。

最後に、ドクターズ・ファイルの読者に向けて、一言メッセージをお願いいたします。

笠原裕司院長 笠原クリニック6

東洋医学も西洋医学も必要に応じてバランスよく診療していますので、「何か相談したいことがある。でもどこに相談に言ったらいいのかわからない」という段階でまず声をかけていただければ、僕の守備範囲で、西洋医学の方が必要ならそちらで、漢方の方が合っているなら漢方で、明らかに専門の先生に診てもらった方がよい場合は専門の先生を紹介いたします。一番最初の相談相手になれるように頑張っていきますので、何かあれば気兼ねなくご相談ください。

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