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玉木 領司 院長の独自取材記事

あさけメンタルクリニック

(四日市市/近鉄富田駅)

最終更新日:2024/02/07

玉木領司院長 あさけメンタルクリニック main

地域住民の生活道路である「あさけ通り」沿いに位置する「あさけメンタルクリニック」。日本精神神経学会精神科専門医の資格を有し、長年精神科診療に従事してきた玉木領司院長が2013年に開業した精神科・心療内科のクリニックだ。治療が長期間に及ぶケースが大半を占めるといわれる精神疾患。根気強く治療に取り組まなければいけない一方、患者や家族が回復を急ぐあまり、かえって治療が長引いてしまうことも珍しくないという。一日も早い回復を望む、切なる気持ちをくみ取りつつも、じっくりと治療を進める大切さを説く玉木院長。その静かな語り口には、患者の歩調に合わせ、深く寄り添っていく覚悟と信念がにじんでいた。

(取材日2019年8月9日)

精神科の専門家として地域に根差したクリニックを開業

明るく温かみを感じる院内ですね。

玉木領司院長 あさけメンタルクリニック1

ありがとうございます。設計士さんと相談しながら、自分なりに診療しやすい環境をつくれたと思っています。できるだけ明るい雰囲気にしたいと思い、木目などを生かしたやわらかい色合いでまとめていただきました。待合室には1人がけの椅子を置き、なるべく患者さん同士の視線が交わらないように向きを調整しています。患者さんによって好きな色は異なるでしょうから、座面の色のバリエーションをもたせました。お気に入りの色を選んで座られる患者さんもいるかもしれません。

医師を志したきっかけや、開業までのご経歴についてお聞かせください。

漫画などの影響からでしょうか、子どもの頃から漠然と医師に憧れを抱いていたんです。高校時代は研究職に就きたいと思っていましたが、周囲に医師をめざす友人が多かったこともあり、医師の道を考えるようになりました。三重大学医学部卒業後は、関心を持っていた精神科を専門とすると決め、大学医学部附属病院の精神科に入局しました。1993年には大学院に進み、産後うつなどに代表される、産後精神病の研究にも従事した経験もあります。その後、いくつかの精神科を主とする病院に勤務し、入院を必要とする症状の重い患者さんを診てきました。そして2013年に、当院を開業しました。

この地域で開業されたのは、どのような理由からでしょうか?

玉木領司院長 あさけメンタルクリニック2

大学も三重県でしたし、総合心療センターひながや、多度あやめ病院など、三重県の病院に勤務していたので、慣れ親しんだエリアで開業したいと思ったんです。また開業を決めた当時は、精神科や心療内科のクリニックが増え始めた頃で、駅近くにメンタルクリニックが1件ある、といった状況でした。近鉄富田駅周辺にはメンタルクリニックがなかったこと、富田駅は急行が停車するため交通至便な立地といえること、学校や大手企業の事業所が置かれており幅広い年齢層の方が生活されている町であることなどの理由から、この地での開業を決めました。開業から6年が経過し、今では若年層から高齢者の方まで、幅広い患者さんが来院されています。

患者の「心の体力」を疲弊させないように気を配る

診療では、どのようなことを心がけていらっしゃいますか?

玉木領司院長 あさけメンタルクリニック3

治療を開始して、速やかに改善に向かう方もいらっしゃいますが、中には継続治療が必要な方もいらっしゃいます。ですので、時間がかかることをご理解いただけるように、丁寧な説明を心がけています。どんな精神疾患の治療でも、重要となるのが「焦らないこと」ですから。精神科の患者さんに限った話ではありませんが、誰もが「早く良くなりたい」と思って、クリニックを受診します。しかし、精神疾患は薬を飲めばすぐに治るものではありません。むしろ数ヵ月や数年と、とても長い時間をかけて改善をめざしていくケースもあります。

治療を進める際に注視している点などございますか?

患者さんの病態に合った治療方法を熟考するだけでなく、適したタイミングを見極めることにもこだわっています。身体的な病気と同じく、精神疾患にも急性期や回復期があり、段階に応じてやるべきことが異なります。例えば、症状が強く現れている急性期では安静・休息を第一とし、症状が落ち着いてきたら読書を通じて集中力を維持するなど、生活能力の維持・回復をめざす取り組みが必要となってきます。もちろん無理は禁物ですが、これらを行うことでより順調な病状の改善につながります。患者さんの「心の体力」を疲弊させないように気を配りつつ、少しずつ高めていけるように、状態に応じて薬を調整したり生活のアドバイスを行いながら、日常を取り戻していただけるように努めています。

診療の他に、専門のカウンセラーによるカウンセリングも行っているそうですね。

玉木領司院長 あさけメンタルクリニック4

診察とは別に公認心理師などのカウンセリング専門のスタッフが、カウンセリングを担当しています。カウンセリングは20~50分と、患者さんの希望に応じてたっぷりと時間を取れるのが特徴です。カウンセリングのメインとなるのは、対話です。不安や悩みは、誰かに聞いてもらうことで和らぐ場合もありますし、カウンセリングを通して自分の考えがまとまるといったこともあります。特に未成年の患者さんの場合、なかなか自分の感じていることをうまく言葉にできない方もいるので、カウンセリングを行うことで自分の想いに気づき、安心していただけたらと思います。カウンセリングのみを利用される患者さんもいますが、カウンセラーが治療の必要性を感じた場合にはすぐさま情報を共有し、スムーズに治療へ移行できるように連携しています。

「こんなこと」と思っても、不安があればまずは相談を

思い出深い患者さんとのエピソードについてお聞かせください。

玉木領司院長 あさけメンタルクリニック5

ある60代の女性患者さんのことは、とても印象に残っていますね。一時は入院もされていた方で、治療を受ける場が変わったために処方される薬の内容も変わってしまい、退院後改めて私が担当することになりましたが、しばらくして薬の副作用が強く出てしまったことがあったのです。改めて治療方針を再検討し、柔軟に治療を進めることの大切さを強く感じた出来事でした。また、旦那さんが通院にはいつも付き添い、奥さんを献身的に支えていらっしゃいました。ご家族のサポートがいかに大切であるかということを、改めて感じました。

精神面に関わる病気の治療について、読者に知っておいてほしいことなどございますか?

やはり精神疾患は脳の病気なので、ゆっくりと時間をかけて治っていくものです。治療中、波の満ち引きのように症状が変動することもあります。例えば統合失調症の場合、幻覚や妄想といった陽性症状が改善したとしても、感情が乏しくなったり意欲や思考が低下したり、自閉的になるといった陰性症状が長期間続くケースもあります。治療を進める上で、患者さんにもご家族にも「ゆっくりと改善に向かっていくものなのだ」とお伝えします。また、時折「こんなことで受診してもいいですか?」と聞かれることがありますが、相談したいと感じたのであれば、少なからず困っていることがあるのですから、お気兼ねなくご相談ください。診察の結果、治療が必要ないとわかれば安心して悩みが軽くなることもありますから、「相談したい」と思ったお気持ちを大事にしていただきたいです。

最後に読者へのメッセージをお願いいたします。

玉木領司院長 あさけメンタルクリニック6

今はインターネットなどで簡単に情報を手に入れやすくなりました。ご自身でお調べになる患者さんも少なくありません。ご自分なりに調べて、病気を知ることは大事である一方、考えが偏ってしまい、治療がうまく進まない場合もあるため、注意が必要です。特にお薬の処方に関しては、プロである私どもにお任せください。独断でのお薬の調整は病状の改善につながらず、回復を遅らせてしまうこともあります。それぞれの患者さんの病状に合った治療を提供できるようスタッフ一同取り組んでいますので、まずは任せていただければと思います。

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