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田中 清宜 院長の独自取材記事

たなか内科クリニック

(新居浜市/新居浜駅)

最終更新日:2021/10/12

田中清宜院長 たなか内科クリニック main

JR予讃線の新居浜駅から車で9分ほどの住宅街にある「たなか内科クリニック」。国道11号線沿いに位置し、初めてでもわかりやすい立地だ。田中清宜院長は1985年に福島県立医科大学を卒業、学位取得後は朝日生命糖尿病研究所丸の内病院を経て地元の愛媛県へ。愛媛大学医学部附属病院で循環器内科、西条中央病院で勤務し、研鑽を積んできた。得意分野である糖尿病を深めたいという思いから、2004年に新居浜市で開業。糖尿病を中心に、生活習慣病の患者の治療に取り組んでいる。診療の特色は、NLPというコミュニケーション技法を導入し、患者の気持ちに寄り添った診療を行うこと。物静かで穏やかな雰囲気の院長に、診療に対する思いやクリニックの特色などを聞いた。

(取材日2021年3月15日)

糖尿病内科と循環器内科を専門領域として

開業されるまでどのような経験を積まれたのか教えてください。

田中清宜院長 たなか内科クリニック1

私は愛媛県新居浜市の出身ですが、大学は福島県立医科大学へ進みました。卒業後は同大学の糖尿病内科の医局に入り、糖尿病を専門に診療を行いました。糖尿病は、血液中を流れるブドウ糖、つまり血糖が増えてしまう病気ですが、血糖値が高いまま放置すると血管が傷つき、やがて脳梗塞、心筋梗塞や心不全などの重い疾患を合併します。研修医時代は、血糖値が高めという軽い症状の方から、重症の患者さんまで幅広く診断し、食事療法と運動療法、薬物療法を組み合わせた治療を提供していました。その後、地元に戻り愛媛大学医学部附属病院の循環器内科に入局しました。

どうして循環器内科へ進まれたのですか。

私自身は糖尿病内科に軸足を置いていたのですが、糖尿病の患者さんは循環器疾患を合併することが多くあります。そこで循環器についても学ぶために愛媛大学医学部附属病院に1年間勤め、循環器内科全般を学び直すいい機会を得ることができました。その後、西条中央病院の内科に7年間勤務しました。そこでは、生活習慣病を中心とした予防医学のスペシャリストとして、糖尿病に合併する疾患の早期診断と各診療科への紹介、循環器疾患の治療などに携わりました。

開業した経緯について教えてください。

田中清宜院長 たなか内科クリニック2

当時、私は勤務医として満足のいく日々を過ごしていたのですが、たまたまクリニックを開業した後輩医師に会う機会がありました。そのとき、「開業して、自分の専門領域を追求している」という話を聞き、開業に興味を持つようになりました。糖尿病内科に特化した診療をして、もっと専門性を深めたい、と考えるようになり、思い切って開業を決意しました。というのも、病院では外来診療に時間をかけられず、患者さんと十分にコミュニケーションをとれない、というジレンマがありました。自分のクリニックなら一人ひとりの患者さんにたっぷり時間をかけ、療養生活などの指導を丁寧にできると考えたのです。その後、ちょうど私が生まれ育った新居浜市でいい物件が見つかり、思いどおりのスタートが切れました。

糖尿病患者に対し心理的にアプローチする

順風満帆な滑り出しだったんですね。

田中清宜院長 たなか内科クリニック3

ところが、そうでもないんです。最初の頃は、思うように患者さんの力になれなかったですね。糖尿病の治療は、食事指導が全体の7、8割を占め、残りが運動療法、薬物療法になります。どんなにいい薬を使っても、食習慣を改善しないと効果は期待できません。そこで私は、医学的に正しい食事療法の知識を患者さんに一生懸命伝えました。でも、患者さんの食習慣は一向に良くならなかったです。どうしてできないんだろう、という気持ちが強くなり、相手の感情や考えを無視して、ただ治療を押しつけるようになっていったんだと思います。ある日、診察の途中で、患者さんが立腹して帰ってしまうことがありました。そのことがずっと心に残り、思い悩んでいた頃に出会ったのが、NLPというコミュニケーション技法でした。

このコミュニケーション技法とはどういったものなのでしょう?

田中清宜院長 たなか内科クリニック4

NLPは、問題解決、目標実現に向かうための考え方で、「脳と心の取扱説明書」といわれることもあるコミュニケーション技法です。私は当時、どうして患者さんは望ましい療養行動をしてくれないんだろう、課題を克服できないのは本人が努力を怠っているのではないかと考えていました。でも実は、そう考える私自身こそ問題だったのです。よく人間関係で「自分が変わらないと相手は変わらない」と言いますよね。この考え方を学び始めてすぐそのことに気づき、私は自分自身と向き合うところからスタートしました。そして、「医学的に正しいことは完璧に守らなければならない」という考え方を改め、患者さんの訴えを素直に受け入れる訓練を重ねていったのです。それによって、押しつけではなく、患者さんの気持ちに寄り添う療養指導ができるようになりました。

患者さんに寄り添う療養指導とはどんな指導法ですか。

一言で言えば、患者さん自身に気づいてもらう指導法です。例えば、「家族が残したおかずを捨てるのがもったいないから食べてしまう」という主婦の方がいらっしゃったとします。その場合、「もったないとは、どういう背景があるのでしょう?」「おかずを残すと、どのような問題がありますか?」など、患者さんが持っていない視点でいろいろと問いかけていきます。そうしていくことで患者さん自身が「残しても問題がないのだ」という気づきを得られれば、自然と食習慣は改善に向かっていくようになるでしょう。当院では毎週1回、院内カンファレンスを開いて、このように問題を抱えた患者さんへのアプローチ法について話し合っています。また、スタッフも院外の勉強会や講習会に積極的に参加、発表するなどして、このコミュニケーション技法を活用して患者さんに対応できるよう努めています。

患者の幸せな人生のためにサポートをしていきたい

患者さんはどんな方が多いですか。

田中清宜院長 たなか内科クリニック5

高齢の糖尿病患者さんが多いですね。平均年齢は70歳前後だと思います。この地域に住んでいる方が大半ですが、遠方から通院してくださる方もいらっしゃいます。当院で糖尿病をコントロールして、より健康な状態を維持できればいいですが、症状が改善しない場合やより専門的な検査や治療が必要だと判断した場合、市内の4病院と連携を図り、速やかに紹介しています。糖尿病以外では、動脈硬化の患者さん、心臓疾患の患者さんもいらっしゃいます。また、糖尿病で通っている方の中にも、動脈硬化や心臓病が合併することがよくあります。当院では動脈硬化検査や頸動脈エコー検査、心エコー検査などを通して、そうした合併症を見逃さないよう常に細心の注意を払っています。

診療で大切にしていることについて教えてください。

一番大事なのは、患者さんにとって安心安全が確保されている「場」をつくることだと考えています。ここに来れば、何をしゃべってもいい、安心できる、そんな場所を、スタッフみんなでつくり上げることが大前提だと思います。当院の診療理念は「患者さんに優しいクリニックづくり」です。最終的なゴールはそこにありますから、それを達成するために、これからも努力していきたいですね。また、患者さんにとって安心安全の場所は、スタッフにとっても安心安全の場所でなくてはならないと考えています。スタッフが職場に満足し、幸せになれば、患者さんに優しくできるし、本当の意味で患者さんの幸せをお手伝いしていくことができると思います。

最後に、闘病中の糖尿病患者さんにメッセージをお願いします。

田中清宜院長 たなか内科クリニック6

糖尿病を患うと、自分の生活イコール糖尿病になってしまう方が結構いらっしゃいます。朝から晩まで食事のこと、運動のことをずっと考える。外食しても、これ食べたら悪いだろうと考え、食べてしまえば後悔し、罪悪感に陥ってしまうようになります。それでは自分の人生とは言えませんし、生きていても楽しくないと感じてしまうかもしれません。糖尿病は人生の全部ではなく、ほんの一部に過ぎません。患者さんには、もっと糖尿病とうまく付き合うことで、自分の人生、幸せな人生を歩んでいただきたいと願っています。そのために、これからもできる限りのサポートをさせていただきたいと思います。

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