全国のドクター9,338人の想いを取材
クリニック・病院 158,519件の情報を掲載(2024年5月22日現在)

  1. TOP
  2. 北海道
  3. 札幌市南区
  4. 真駒内駅
  5. 医療法人社団愛歯会 船本歯科クリニック
  6. 船本 能教 院長

船本 能教 院長の独自取材記事

船本歯科クリニック

(札幌市南区/真駒内駅)

最終更新日:2022/07/07

船本能教院長 船本歯科クリニック main

「歯科医師である前に地域の一員。たまたま担っている役割が、歯科医師というだけ」。そう言いきるのは、「船本歯科クリニック」の船本能教院長。生まれ育ったこの地域で、36年にもわたり住民の歯の健康維持に努めてきた。歯科、小児歯科、歯科口腔外科を標榜して多様なニーズに対応するが、無理に自身で完結しようとせず、必要に応じて信頼できる専門の医療機関を紹介するスタンスだ。歯科医師になって40年。ベテランといわれる年齢になり「引き際が重要」だと本人は繰り返すが、長年にわたり構築されてきた絆と明るく気さくな人柄で、院長はまだまだ地域に必要とされている。

( 取材日2022年05月20日)

患者の生活の一要素として歯科治療を捉え適切に対応

歯科医師になったきっかけやここへ開業された理由などを教えてください。

船本能教院長 船本歯科クリニック1

祖父も父も歯科医師だったので、僕が歯科医師になったのは、その影響もあるかもしれませんね。僕は洋楽が好きなんですが、あの時代は外国のアーティストは北海道には来てくれず、それで東京歯科大学に進学したというのもあります(笑)。卒業後は大学に少し残って、それから千葉のクリニックに勤務しました。関東に残って横浜辺りで開業したいとも思っていたのですが、父の体調が悪くなって、地元であるこちらへ戻ってきたんです。この物件のオーナーは小学校の同級生のお兄さんなのですが、歯科医院を入れたいということで声をかけてもらって、ここへ決めました。

お父さまはどのような歯科医師だったのですか?

歯を診るのではなく人を診る。偉そうに聞こえるかもしれませんが、そういうふうなことを口にしていました。「歯」は人生において何よりも大切というものではなく、生活を構成するさまざまな要素の一つ。虫歯があっても優先しなければならない仕事があるのなら、当然それを先にしなければいけない。患者さんの生活の優先順位を考えながら僕たちは診ていかなければならない。そんなスタンスの人でした。後はPTAだったり地元の会だったりに積極的に参加する人で、歯科医師が先に来るのではなく、「地域の一員」の中で歯科医師という役割を担っている。そういう感覚を持っていましたね。どちらも、今の僕の診療のアイデンティティーになっています。

患者さんの層は? 患者さんによって対応に気をつけていることなどはありますか?

船本能教院長 船本歯科クリニック2

自分が生まれ育った地域ですし、今は地元の祭りでバンドをやったりもしていて、うちはまさに地域密着型の歯科医院です。なので、うちの患者さんの20~30%は友達や知り合い、そのご家族だったり、さらに知り合いだったりといった感じなんです。父の歯科医院の患者さんだった方も来られて、方針がよく似ていると言われます。患者さんによって対応を変えることは特になく、子どもだからといって赤ちゃん言葉で話しかけるなんてこともしません。大人と同様、どうしても痛みが出る治療なら、最初から隠さずそう話します。それでも来てくれる子は来てくれる。年齢関係なく人と人との信頼関係だと思うんですよね。昔と違って歯科医院はいっぱいあるし、他へ行くこともできる。そんな中でも、子どもに限らずリピーターの方が多く来てくださいます。ありがたいと思いますし、その方たちのためにもできる限りニーズに応えていきたいと思っています。

適切で標準的な治療と病診連携を診療の柱に

こちらの治療の特徴は?

船本能教院長 船本歯科クリニック3

歯科医師としては魅力的ではないかもしれませんが、ごく一般的でベーシックな治療をしています。患者さんにとって何が一番いいかと僕なりに考えるのですが、医科ではかかりつけ医で診て、その結果に応じて専門の病院へ紹介するといった流れが普通ですよね。歯科でも本来それぞれ専門性や得意・不得意があるわけだから、何でも一つのクリニックで完結しようとするのは無理があるのではないかと思うんです。特に口腔外科分野は専門の知識や十分な経験が必要で、親知らず1本抜くのでも後々の治りに違いが出てきます。インプラント治療のような難しい手術ではなおさらです。僕のところでできる基本的な治療は行い、専門的な知識や技術が必要な治療については、「この症状はこの先生、これならここ」と、信頼する歯科医師に紹介しています。もちろんすべての分野を得意としているクリニックもあるでしょうし、それはそれでいいと思います。

訪問診療もされているそうですね。

地域包括ケアシステムといって、医療と介護で連携してチームで一人の患者さんをサポートする体制を自治体のほうで整えているところなんですが、僕はその委員をやっているんです。異業種間で連携して患者さんお一人お一人を適切な形でサポートできるようなスタイルです。医科や介護の専門家との連携が大切で、患者さんの情報を共有することで、適切なキュアやケアが可能になります。南区は札幌市全区の中で最も高齢化率が高いため、ニーズが高く、理想的なシステムだと思っています。訪問診療は基本的には南区内ですが、リクエストがあれば、ある程度の距離まで対応しており、中央区に行く場合もあります。内容は入れ歯の調整が多いですが、訪問用のキットもあるので、外来とまったく同じとはいかないまでも、治療をすることが可能です。新型コロナウイルス感染症流行の影響で依頼が少なくなりましたが、ニーズがあれば居宅でも施設でも訪問します。

今少し話が出ましたが、特に注力されているのは入れ歯治療ですか?

船本能教院長 船本歯科クリニック4

ニーズがあるので、おのずとやっている感じです。入れ歯を実際に製作するのは歯科技工士なんですが、どのように作るかは歯科医師が指示するので、やはりその判断によって異なった仕上がりになります。うまくいくと、「しっかり噛めます」と、患者さんにストレートに感謝されるでしょう。歯の根っこの中の治療などは、うまくいったのかいっていないのかが患者さん自身にはあまりわからないですよね。でも入れ歯治療ではすぐにわかる。そういったところが面白いと思っています。

これからも患者ファーストの歯科医療を

歯科医師歴40年のベテランですが、改めて思うことは?

船本能教院長 船本歯科クリニック5

改めて今思うことというわけではありませんが、歯科医師は国家試験に受かったら、もう「先生」と呼ばれるでしょう。世間的な常識を身につける機会もなく、実はそれをコンプレックスに思っていたんです。昔、青年会議所に所属していたのですが、そこで他業種の方と一緒に活動するうちに、服装や名刺のやりとりなど世間の常識を知らない自分の駄目さを痛感したんです。メンバーに、「歯科医院は予約の時間に行っているのに待たせるところが多いけれど、なぜか」と聞かれたこともあります。確かに歯科医院で歯の治療をすることが最も大事ではない中、都合をつけて予約時間に間に合うよう患者さんは来られているのに、待たせるのが当然のような風潮がある。その矛盾に気づいてからは、「もっと予約を詰めれば経営的には有利だけれど、うちではできる限りお待たせしないように」と考え、余裕を持たせて時間設定をし、スタッフにも気をつけてもらっています。

歯科医師だからこそのやりがいは?

一生懸命やっても、なかなかそれを認めてもらえない仕事もあるかと思います。しかし、僕らはお金を頂いて治療しているのに、すぐに「ありがとう」と感謝してもらえる。これは僕らの特権のように思います。また、僕は患者さんのご希望どおりの治療をすることが大切だと思っており、治療のメリット・デメリットを説明した後、患者さんに「決めてください」ということをよく言います。そんな中でも「先生にお任せします」と言われたら、信用されているんだなとうれしくなりますね。

今後の展望を教えてください。

船本能教院長 船本歯科クリニック6

高齢者の多い地域なので、今後、訪問診療のニーズが増えてくるでしょう。やはり人は口から食べるのが理想で、それができるとできないとではQOLが大きく変わります。できれば最後の食事が栄養剤などではなく、好物のお寿司といったものであればいいなと思うんです。そういうところで役に立っていければと考えています。あとはこれまで同様ベーシックな治療を提供すること、来られる患者さんのニーズにできる限り応えることですかね。それと同時に、自分の年齢のことも考えます。会社勤めの方なら65歳が定年ですよね。年齢を重ねると集中力も落ちてくるし、患者さんに迷惑をかけるようなことになる前に次に譲ることも必要かなと思います。今すぐではありませんが、僕の経験値が役に立つなら、若い先生の後ろに立ってアドバイスするポジションでしばらくいるとか、そういうのもいいですね。

Access