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多和田 泰之 院長の独自取材記事

くりの木歯科

(新潟市中央区/新潟駅)

最終更新日:2022/04/25

多和田泰之院長 くりの木歯科 main

新潟市中央区。沼垂(ぬったり)という古くからの町にある「くりの木歯科」。多和田泰之院長は、義理の叔母が50年以上続けてきた歯科医院を引き継ぎ2008年に開業した。長年日本歯科大学新潟生命歯学部の補綴学教室で研究と臨床に携わっていたが、開業してからは幅広い患者を診るようになり新鮮だったと話す。多和田院長は、大学生の時に出会ったパソコンの知識と技術に詳しく、「コンピューターを道具として使いこなさないと」と、ないものは自分でプログラミングをして歯科用ソフトの制作も行っている。新潟全体への歯科医療にも熱い思いを抱き、大学病院に長く在籍していたことを生かして、大学病院と開業医の間でのネットワークづくりにも力を入れる。そんな多和田院長に、地域のことや診療での心構えなど話を聞いた。

(取材日2022年3月18日)

50年以上も地域を支えてきた歯科医院を継承

この歯科医院は院長の叔母さまから受け継がれたそうですね。

多和田泰之院長 くりの木歯科1

叔母は大正生まれで、戦後間もなくこの歯科医院を開業しました。当時は「鈴木歯科医院」という院名で建物も木造の平屋だったんですけれども、その後1982年頃にビルに建て替えて、86歳になるまで50年以上も頑張ってきました。体の不調で閉院を考えたようで、叔母から歯科医院を継いでくれないかと打診されました。閉院したのが2008年8月だったんですが、1ヵ月でリニューアル工事を行って、9月中旬に「くりの木歯科」を開業しました。

当時は大学病院に勤務されていたそうですね。

日本歯科大学を卒業して大学院に進み、その後大学に残って、クラウンブリッジという、歯に固定してつける差し歯を専門に、臨床と研究と学生指導を行っていました。その専門的な治療を行っていきたいと思い、大学にずっと残って研究していたんですけれども、大学という場所は自分の専門の治療しかしないんです。例えば歯周病は歯周病専門の部門で治療を行うので、専門外の自分は携わらないんですね。ところが、開業すると、一人であらゆる診療を担うことになります。診療全体を総合的に把握できるので、最初は新鮮で楽しかったんですが、治療においてはそのうち壁にぶつかるようになりました。専門で行ってきた入れ歯や差し歯を作る以外の、例えば歯根の神経の治療や歯周病の治療ではつまずきがいっぱいあって、それぞれの分野の先生に教えを乞うかたちでいろんな勉強を重ねました。

現在はどういった患者さんが多いですか?

多和田泰之院長 くりの木歯科2

叔母が長年地域に寄り添ってきたので、最初のうちは引き継いだ患者さんがメインで高齢の方が多かったですね。上越や佐渡、県外からおみえになる患者さんもいらっしゃいます。それとクチコミで来てくださる方もいらっしゃいますし、私が大学で診ていた患者さんも来院されます。あと、開業当初は、虫歯が痛いとか、歯が抜けたのですぐに入れ歯を入れてほしいといった急を要する状況での来院が多かったのですね。ですが入れ歯を作るにも土台になる歯がしっかりしていないといけないので、歯周病治療や予防にも力を入れるようになりました。その結果、急なトラブルで来院されるような患者さんは徐々に減り、今では患者さんの半分がメンテナンスで来られています。

丁寧な治療で再発防止に努める

そもそも先生が歯科医師を志したきっかけは何だったのでしょう。

多和田泰之院長 くりの木歯科3

父が歯科医師で、日本歯科大学の教授だったんです。そういう家庭で育ち、小さな頃から父と同じように自分も歯科医師になるんだろうなと自然に思っていました。歯科医師以外の職業の選択肢は考えなくて、進路には悩まなかったですね。もともと物を作ったり、細かい作業をしたりするのが好きで、中学生の時にはプラモデルでジオラマを作って遊んでいましたから、自分に向いているという思いもあったのかもしれません。大学は日本歯科大学に進み、専門も父と同じ補綴学を選びました。

診療で心がけていることは何ですか?

再発を起こさないことです。痛い所を応急手当するのではなくて、一人ひとりの患者さんに30分や1時間の枠で向き合う中、できる限り丁寧に治療することを心がけています。虫歯に関しても、歯周病に関しても再発しないように。専門は入れ歯ですので、噛み合わせの問題が気になるのですが、噛み合わせは1本だけを見るのではなく全体を見通します。そうやっていくとどうしても時間がかかり、治療回数も増えたりするのですが、将来的に見ると不具合が起こりにくく、何回も歯科医院にかからなくて済むのでそのほうがいいのかなと思います。

患者さんとのコミュニケーションも大切になさっているそうですね。

多和田泰之院長 くりの木歯科4

インフォームドコンセントは今でこそ当たり前になってきましたけど、こちらの地域にはご高齢の患者さんが多いせいか「私はわからないから、先生にお任せします」とおっしゃる方が多いんですよ。ですが、そういう方にも今のお口の状況や治療法を丁寧に説明しています。以前は「わからないからいいです」と途中で話をさえぎられることもありましたが、最近はだんだん少なくなってきましたね。世の中が確実にコミュニケーション重視の方向に向かっているようです。それでもやはり言いづらいのか、最後まで本当の希望を言わない方がいらっしゃいます。歯が入った後に「本当はもうちょっと白い歯が良かった」と言われたことも……。希望を聞いて確認もしているのですが、そういう齟齬も出てきます。遠慮がちな方もいらっしゃるし、意思を疎通させるのは本当に難しいです。だから戒めとして、「コミュニケーションを大切に」と常に意識するようにしています。

印象に残っているエピソードを教えてください。

大学病院時代、若い女性の患者さんで、半年後に海外に留学するのだけど、それまでに前歯の歯並びをどうにかしたいという方がいらっしゃいました。そこで矯正をお勧めしたのですが、それでは留学に間に合いません。健康を優先する医療上のモラルと、削ってかぶせる短期の治療を望む患者さんのニーズが合わず、どうやって折り合いをつけるかでずいぶん悩みました。結局は健康にも配慮し、歯もできるだけ保存して短期間で矯正と補綴を組み合わせた治療を行うことに。治療自体はそんなに複雑ではなかったのですが、患者さんとの意思疎通やコミュニケーションがいかに大切かということを実感した症例で、今でもとても印象に残っています。

歯科医療のネットワークをつくり地域に貢献

コンピューターに精通されていると聞きました。

多和田泰之院長 くりの木歯科5

大学生の頃からコンピューターに興味を持ちまして。特に大学院に入ってからは、どっぷりとコンピューターにはまり、研究にも使っていました。ちょうどパソコンが使われ始めた時代でソフトもそんなに売っていなかったので、自分でプログラムもしていましたし、大学のいろんな研究室からコンピューター周りの相談を引き受けていました。当院でも、受付や会計などパソコンを使ってどう効率化するかなど考えています。ややもするとコンピューターに使われがちなんですけれども、コンピューターに自分で手を加え、自分向けに役に立つように変え、道具としてどうやって使うかが問題なんだと思います。そういった歯科医院向けのIT情報についてブログで記事を書いています。

今後の展望をお聞かせください。

開業医である限りは、地域医療にどれだけ貢献できるかということが大事だと思います。それは地域の患者さんの歯の健康に対する質をどれだけ上げていくことができるかということです。そのために何か特別なことをしていくというのではありません。地道にやっていくしかないと思っています。その一つが、大学病院や各診療分野の専門家のいる医療機関へ患者さんを紹介できるようにすること。それと、患者さんに対してではないですが、同業の歯科医院と大学との橋渡し役になりたいと思っています。そのための情報の発信をすることが、私にできる仕事だと思っています。

大学病院での勤務経験の長い先生だからこその役割ということですね。

多和田泰之院長 くりの木歯科6

新潟はまだまだ、虫歯や歯周病治療、矯正、小児歯科など、歯科医師の専門領域単一で診療しているクリニックが少ないんです。専門に特化した歯科医院は、やはり大都市に集中してしまう傾向にあります。今のところ、矯正専門の歯科医師は専門歯科医院として開業できていますが、今後は口腔外科や歯周病専門のクリニックも、これから少しずつ開業していけるような土壌ができればいいなと思います。単一の専門分野の歯科医師や歯科医院とネットワークをつくって連携し、地域医療の質を向上させていくのも開業医としての大事な仕事だと考えています。

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