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近藤 万知 院長の独自取材記事

糸井川歯科医院

(羽島市/竹鼻駅)

最終更新日:2024/04/12

近藤万知院長 糸井川歯科医院 main

岐阜県羽島市の「糸井川歯科医院」は、現在の院長、近藤万知先生の祖父が大正時代に開業し、長年、地域の歯科医療を担っていた歴史のある歯科医院だ。近藤先生は同院の待合室を遊び場にして育ち、やがて岐阜歯科大学(現・朝日大学)を卒業。県内基幹病院の口腔外科勤務を経て、1993年に休業していた実家の歯科医院をリニューアル開業した。祖父の代からの高齢の患者や、女性特有の症状に悩む患者から信頼を寄せられている。また、歯科医師を続けながら2人の子を育てた母親でもあり、子どもたちの歯科治療や予防歯科に温かい気持ちで取り組んでいる。「一人ひとりの患者さんにじっくり向き合っています」と語る近藤先生に、同院の歴史や診療方針を聞いた。

(取材日2020年1月8日/情報更新日2024年3月15日)

祖父が開業した歯科医院で地域の歯の健康を見守る

とても歴史の長い歯科医院だそうですね。

近藤万知院長 糸井川歯科医院1

明治生まれの祖父糸井川勝男が1924年にこの場所で開院しました。昭和の始めまで、市内に歯科医院が3軒しかなかったので、とても忙しかったようです。私が物心ついた時、祖父は70歳を過ぎていましたが現役で診療していました。当時は立位の診療チェアでしたよ。待合室は畳で、冬は患者さんたちが火鉢を囲んでおしゃべりをして、地域の社交場のようでしたね。私にとっても居心地の良い場所だったのを覚えています。私が結婚して姓が変わったので、昔のことをご存じない若い患者さんに「近藤先生なのに、どうして糸井川歯科医院なんですか?」と聞かれることがありますが、子どもの頃から診察室の雑巾がけをしていたんですよ(笑)。

そんな体験から歯科医師をめざすようになったのでしょうか。

学校の先生になりたいと思った時期もありましたが、母が「歯科医師に」と強く望んだので岐阜歯科大学(現・朝日大学)に入学したんです。卒業後は岐阜大学医学部の口腔外科教室に入局し、その後、国民健康保険関ケ原病院、東海中央病院の口腔外科に勤務しました。大学進学の時は「歯学部に行かせてもらえるなら行こうかな」くらいの気持ちでしたが、勤務先はいずれも地域の基幹病院で、事故で顎を骨折された方や口腔がんの患者さんなど幅広い症例を診ることで鍛えられました。手術や抜歯をバリバリこなして、まるで医療ドラマみたいでした。婦人科や外科の手術をよく見学させてもらって、全身的な知識を得られたのも良い経験でしたね。

その後、実家の歯科医院を継がれたのには、何かきっかけがあったのですか?

近藤万知院長 糸井川歯科医院2

勤務医時代に長男を産んで、産休が明けるとすぐ仕事に復帰したのですが、だんだん「子どもが学校から帰ってきた時、顔を見て『お帰り』と言ってあげたい」と思うようになりました。開業医なら、そうできるかなと考えて、祖父が亡くなってから15年ほど休業していたこの歯科医院を建て替えて、1993年に開業したんです。母親になり、開業したことで歯科医師として、いい意味で変わりました。独身の頃は「子どものむし歯は親の責任」と思っていましたが、自分が子どもを持つと、忙しいお母さんの事情がわかるようになりました。また、高齢の患者さんを多く診ていると、ご自身で徹底した口腔ケアをするのが難しいこともわかります。ですから患者さんとのコミュニケーションを深めて、一人ひとりの生活環境に配慮した治療やアドバイスをするように心がけています。

女性、母親としての人生経験を歯科治療に生かしたい

患者層は地域の方たちが中心ですか?

近藤万知院長 糸井川歯科医院3

祖父が診療していた頃はそうでしたが、今は車社会になりましたから市外から来院する方もいらっしゃいます。「女性の歯科医師に診てほしいから」という女性の患者さんも多いですね。女性はライフステージによってホルモンの状態が変化し、それが口の中の状態に影響しがちです。例えば、生理前になると口内炎ができたり、歯茎が腫れやすくなったりする方がいますし、妊娠中は唾液が酸性に傾きやすいのでむし歯のリスクが高まります。また、更年期になると唾液の分泌が減って口の中の自浄作用が弱まるために歯周病が悪化することがあります。こうした女性特有の変調を私自身が経験してきたので、患者さんの悩みに共感できるのが当院の強みだと思っています。

子どもの患者さんに接する際に気をつけていらっしゃることはありますか?

慌てて治療しないことですね。緊急処置が必要な症状は別ですが、泣いて嫌がる子は無理に治療しません。ただし、お子さんが「泣けば治療しないで済む」と思うようになってはいけないので、「今日は歯磨きだけね」とか「ちょっとだけ、お口の中を触るね」というように、ある程度の処置はするようにしています。私も子育てをしてきましたから、本当に怖くて泣いているのかうそ泣きか、わかりますからね(笑)。この頃の親御さんは予防歯科の意識が高くなっているのを感じます。「乳歯は生え替わるからむし歯になっても大丈夫」という方は少なくなり、お子さんが小さい時から口腔ケアの習慣をつけるように頑張っていらっしゃいます。ちなみに岐阜県は子どものむし歯が少ない県で、2020年の統計では12歳児のむし歯数の平均が全国平均の0.74本を大きく下回る0.4本。新潟県に次いで2番目に少ないんですよ。

子どものむし歯が少ないのは自慢できることですね。

近藤万知院長 糸井川歯科医院4

親御さんや学校が予防歯科に熱心に取り組んでいる成果だと思います。一方で気がかりなのは、中には予防歯科に関心の薄い家庭もあることです。お子さんのむし歯や歯周病を放置していて、かなり進行した状態で来院されても、当座の痛みが治まると治療の途中で通院を止めてしまうケースがあるのです。そうなりそうな子には、次の来院につながるように、毎回「歯がきれいになったね」とか「よく噛めるようになるよ」とフォローして、達成感や満足感を感じてくれるように努めています。親子ともに治療へのモチベーションを上げて、その場しのぎの治療で終わらせないことが大切です。将来にわたって自分の歯で噛める人生を送ってほしいですからね。

家族に接するような心遣いで診療に臨む

高齢の患者さんには、どのような配慮をされていますか?

近藤万知院長 糸井川歯科医院5

お食事をよく噛んで召し上がれることは暮らしの張り合いですから、高齢の方の口腔ケアには力を入れています。歯を丁寧に磨くことは体の機能の維持やリハビリテーションにもなりますので、義歯の患者さんにも「入れ歯の出し入れや洗浄は、できるだけ自分でやりましょうね」と言います。また、義歯の違和感は当人にしかわからないものですし、認知症のある方だと痛くなくても「痛い」、痛いのに「痛くない」と言われることがあります。そんな時も、じっくりお付き合いします。開業したばかりの若い先生は、たくさんの患者さんを診て信頼関係を築くことが大切ですが、私はそういう時期は過ぎましたので、あまり予約を詰め込まず、のんびり治療しているんですよ(笑)。高齢で通院しづらい方の往診もしています。往診の場合、義歯の不具合などはいったん持ち帰って調整することになりますが、患者さんの顔を見に行くことも大事だと思うので続けています。

スタッフの皆さんに心がけてほしいと伝えていることは、何かありますか?

全員、女性で子育て中のスタッフもいますので「主婦の視点で患者さんや院内を見てね」と言っています。汚れていたら掃除し、患者さんの口の周りが濡れていたら拭いてあげるというように自分の家族にしている気遣いを仕事でも発揮してほしいのです。また、同じ女性として「家庭を持ちながら働き続けるのは大変だけど、頑張ろうね」という気持ちで接しています。子どもが小さいうちは午前中や週2回だけの出勤でもいい。手が離れるようになったら、本格的に活躍してもらい、資格や経験を生かして長く活躍してほしいと思っています。

読者へのメッセージや今後の展望をお聞かせください。

近藤万知院長 糸井川歯科医院6

先ほどお話ししたように、予防歯科の意識が高まって子どものむし歯は減りましたが、働き盛り世代が口腔ケアを後回しにされがちなのが心配です。仕事最優先で突っ走ってきて、定年を迎える頃にはむし歯や歯周病が進行してしまっている方がいらっしゃるのです。よく「歯科の疾患は差し当たり命に関わらないから治療から足が遠のいてしまう」という声を聞きますが、近年、歯周病が循環器や呼吸器の疾患、糖尿病などの全身疾患に影響を及ぼすことがわかってきました。口の健康は全身の健康につながっているのです。日頃、忙しいかもしれませんが、例えば月に一回、美容院ならシャンプー・ブローをしに行くつもりで歯科検診や口腔ケアを受けていただきたいです。

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