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稲田 雅仁 院長の独自取材記事

稲田歯科医院

(伊予郡砥部町)

最終更新日:2021/10/12

稲田雅仁院長 稲田歯科医院 main

砥部町大南にある「稲田歯科医院」。同院はタイル張りの落ち着いた外観が印象的だ。院内はバリアフリーで、車いすでもスムーズに移動できるよう診療室も廊下もゆったりとした造り。白と木目を基調とした待合室は自然光が差し込む明るい空間だ。治療方針についてはメリットもデメリットも丁寧に説明し、十分理解を得た上で患者自身に選択してもらうことだという稲田雅仁院長。県歯会の学校保健関係や郡市歯会の仕事にも携わるなど長年地域医療にも貢献してきた。優しく温かい雰囲気が漂う稲田院長に、診療におけるポリシーや歯科医療にかける思いを語ってもらった。

(取材日2019年8月23日)

地域住民の全身の健康を歯・口の健康から支える

開業されて25年目とのことですが、開業までのご経歴を教えてください。

稲田雅仁院長 稲田歯科医院1

幼い頃から医療職に就きたいと思っていたところ、遠縁に私の母校、城西歯科大学(現・明海大学)1期生の人がいて、話を聞いていたこともあり進学を決めました。大学院期間を含めて8年間、大学病院に在籍しながら非常勤で歯科医院でも勉強させてもらった後に開業しました。口腔外科が専門で、大学病院では有病者といわれる糖尿病や高血圧など生活習慣病の患者さんの治療、骨折やがんの患者さんの治療、また全身管理という意味で麻酔科の研修なども経験しました。おかげで現在も広い視野から患者さんに向き合うことができていると感じます。当院のある場所は私の実家があったところ。生まれ育った地域に恩返ししたいという思いもあってここで開業しました。

開業当初と比べて来院される患者さんに変化はありますか?

開業当時は、私の子どもの世代から親世代まで年齢層は幅広かったですね。とはいえ当時からご高齢の方が多く、開院当初は入れ歯の治療で苦労しました。それまで勤務していた大学の近隣はこちらに比べるとご高齢の患者さんが少なかったので、入れ歯については開業後に必死で勉強しましたね。現在は当時よりもさらにご高齢の患者さんが増えて、開業当初から通ってくださる方も少なくありません。私は開業当初から安全に的確な治療を進めたいとの強い思いがあり、病気やお薬のことも含め普段の生活についても細かくお聞きしていたのですが、当時は「どうしてそんなことが歯科治療に関係あるんだ?」と理解されないこともよくありました。今は全身の健康と口腔の健康の関連が広く知られるようになり、患者さんにも私の診療方針をよくご理解いただいているように思います。

自家歯牙移植を手がけていらっしゃると聞きました。

稲田雅仁院長 稲田歯科医院2

自家歯牙移植は、歯を抜歯しなければならない部位にご自身の親知らずなどを移植する治療法です。第一大臼歯という6番目の歯が駄目になった場合、抜歯して5番目から7番目をつなぐブリッジを入れるのが一般的ですが、その際健康な歯を削ることになるんです。自家歯牙移植ではほかの健康な歯を削る必要はなく、移植した歯もご自身の歯ですし、噛み心地にも違和感が出にくいのです。開業後に講演会でその有用性が高いことを知り得て以来、積極的に取り組んでおります。

健康な歯を1本でも多く残せたらうれしいですね。

私は自家歯牙移植で10年間以上、噛める状態が維持できることをめざしています。歯が多く残っている人のほうが生活習慣病のリスクは低いともいわれ、自分の歯が20本以上ある人とない人を比較すると、ある人のほうが医科の医療費がはるかに低いというデータもあります。8020運動が推進されるのはそのためなんですね。

子どものカリエスフリーをめざして

特に印象に残っている患者さんはいらっしゃいますか?

稲田雅仁院長 稲田歯科医院3

小学校高学年のお子さんでお母さんと一緒に何度も来ていて、治療の練習を何回もして、今度は絶対に本番の治療をすると約束して朝10時頃来院したんです。麻酔をしたもののなかなか口を開けてくれず、お母さんには治療が終わったら電話すると言っていったん帰宅してもらいました。結局治療終了は午後3時頃。お子さんの場合、時間の長さはともかく似たようなケースは少なからずあります。でもそこで帰したら、お子さんはああ言えばやらずに済むのだと思ってしまう。それは良くないことですよね。ちなみにそのお子さんはそれ以降問題なく治療できるようになりました。お母さんもよく我慢して待ってくれましたね。

子どもの歯のために親が心がけるべきことは何ですか?

生後半年ぐらいで歯が生えてきますから、その頃から定期的に歯科にかかるのが理想ですね。フッ化物塗布も役立ちます。大人も同じですがだらだら食いはむし歯リスクを高めるので、決まった時間に食事をしてその後しっかり歯を磨く習慣も大事ですね。親御さんには「仕上げ磨きをしてあげてください」と口を酸っぱくして言っています。私の子どもも、おばあちゃんからもらってチョコレートなどをかなり食べていましたが、私が「むし歯にするものか」としっかり歯磨きをしてフッ化物洗口を続け、むし歯にならないよう注意を払いながら育てました。

やはりむし歯にならないのが一番ですね。

稲田雅仁院長 稲田歯科医院4

お子さんの将来のためにはぜひむし歯をつくらない「カリエスフリー」をめざしてほしいですね。私が開業した頃、この地域の小学校でフッ化物洗口が始まりました。私は大学生時代にまだ8020運動が叫ばれる前から、講義で聞いていましたのでフッ化物の応用は当然のことと認識していました。でも当時はまだ一般的ではなく、砥部町内全域の小学校で取り入れられたのは、開業翌年の1996年になってから。お子さんの乳歯を守り、うまく永久歯を生えさせてそれをさらに守ることが大事です。もし永久歯がむし歯になってしまうと、そのままブリッジになり、いずれ歯を失って入れ歯になってしまうことも。そうならないようなシステムをつくってカリエスフリーをめざすことは、お子さんの将来のために非常に大切なことです。

健康な歯を長く保つため一人ひとりに適切な治療を

訪問診療にも力を入れておられますね。

稲田雅仁院長 稲田歯科医院5

今は老健施設に毎週水曜に行っています。入れ歯の調整などを行うほか、摂食嚥下のケアも重視しています。脳梗塞などの後遺症や寝たきりになってしまったことで飲み込みがうまくできない方は、以前は鼻や口からチューブで、あるいは胃ろうで栄養を摂取していましたが、今は口から食べられるようになることをめざしているんです。認知症が進むと、食べ物を口元に運ぶと口は開けてくれますが飲み込めずに口の中にたまっていることもありますし、寝たきりになると入れ歯を入れるのさえ嫌だという方もいらっしゃいます。「口から食べたい」講演会を開催する私が所属する伊予歯科医師会を通して、私もその活動に携わってきました。入れ歯の調整とともに口の中の環境を整えていくことで、少しでも口から食べられるようになってもらえるようサポートしています。

診療で心がけていることは何ですか?

治療方法については、私が良いと思う治療を患者さんも望まれるとは限りません。メリットとデメリットを丁寧に説明して、患者さんに納得して選択してもらうことが重要ですね。こうしたら入れ歯になりますが、こうすればブリッジで対応できます、といったご説明をしています。基本的に私は、自費になって少々費用がかかってもできるだけ入れ歯にしないほうがいいと考えていますが、お一人お一人に合わせて提案しています。また、認知症の影響がある場合、入れ歯を入れるかブリッジを入れるかは、少し無理をしてもブリッジにしたほうがご本人のためになるという場合にはそちらを勧めることもありますね。その判断は患者さんの状態によって異なるため慎重に行っています。

今後の展望などお聞かせください。

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これまでどおり患者さんの安心・安全に努めるということですね。県内の多くの歯科医院と同様、当院でもAEDや救急医薬品セットを設置し、患者さんに何かあっても対応できる体制を整えています。さらに患者さんが通る通路と医療スタッフの通路を分け、衛生面・安全面に配慮しています。また、親知らずなどの抜歯後の腫れや痛みへの処置や口内炎、知覚過敏、歯周病などの治療に役立つ炭酸ガスレーザーを取り入れ、患者さんの精神的・肉体的負担の軽減に努めています。私は開業当初から県や郡市の歯科医師会、行政の仕事にも携わり、学校保健にも長く関わってきましたが、地元の皆さんの健康向上にお役に立てるのはうれしいことです。今後も自分の体力と相談しながら無理のない範囲で診療を続け、地域の歯科医療にも貢献していきたいと思っています。

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