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横浜市立市民病院 石原 淳 病院長

こちらの記事の監修医師
横浜市立市民病院
石原 淳 病院長

せいちょうほるもんぶんぴつふぜんせいていしんちょうしょう(かすいたいせいこびとしょう)成長ホルモン分泌不全性低身長症(下垂体性小人症)

概要

下垂体は頭蓋骨の中にある内分泌器官で、さまざまなホルモンを分泌し、人間の体の機能をコントロールしている。成長ホルモン分泌不全性低身長症(下垂体性小人症)は、その下垂体の前葉から分泌される成長ホルモンの分泌低下によって成長障害を起こす病気である。後天性で腫瘍(頭蓋咽頭腫)などの原因によるものが3分の1、原因のはっきりしない特発性のものが3分の2である。また、成長ホルモンのみの分泌障害の場合と、成長ホルモン以外のホルモンの分泌障害を伴う場合とがある。成長ホルモン以外の分泌も損なわれている場合には、併せて性機能の発育にも影響が出ることが多い。3:1で男児に多く見られる病気で、早期に診断し治療すれば身長はかなり獲得できる。 

原因

脳下垂体からの成長ホルモンの分泌が低下、または欠如した場合に起こる。後天性で腫瘍(頭蓋咽頭腫)などの原因によるものが3分の1、原因のはっきりしない特発性のものが3分の2を占める。特発性の場合、多くに骨盤位(逆子)分娩など分娩時の異常があり、お産が関与していると考えられている。MRI検査で下垂体茎(視床下部と下垂体の連結部)に断裂が見られる例もあり、これは周産期に産道内で起こった頭部の変形によって生じたものと考えられている。

症状

特発性の場合、出生時の身長は平均的だが、幼児期から成長が遅れてきて年を追うごとに平均身長との差が大きくなる。後天性の場合、正常に成長していた子どもがある病気の発病をきっかけに身長が伸びなくなる。いずれも体格は均整が取れているが身長が伸びず、骨の発達が遅れて骨年齢がなかなか上がらない。また成長ホルモン以外のホルモンの分泌障害を伴う場合には、そのホルモンが欠落した際に見られる症状が併発する。例えば、性腺ホルモンが障害されると、体形が幼いままであり、男子では声変わりや射精がなかったり、女子では月経が来なかったりする。また、ストレスに反応して血糖などを上げる作用のあるホルモンの分泌が低下すると低血糖に陥り、意識が低下することもある。

検査・診断

身長測定を行い、同年齢の平均身長との差異を確認する。両親の正確な伸長も情報として重要。学校や家庭で身長グラフを記録している場合には、それを利用して身長の伸びの推移を確認する。そして、手首のエックス線検査により骨年齢をチェック。また、入院によりホルモン分泌刺激試験(成長ホルモンが体内でどの程度分泌されるかを確認する検査)を行うほか、MRI検査やCT検査により下垂体とその周辺の画像診断も行う。そのほか、染色体検査、脳波検査、頭部エックス線検査などにより、ほかの要因による低身長ではないかどうかも確認する。

治療

遺伝子工学的手法により作られた下垂体ホルモン製剤(成長ホルモン製剤)の皮下注射を週6~7回自宅で行い、成長ホルモンの補給を行う。これは保護者や本人でも扱えるものである。そのほかに、不足しているホルモンの補充を並行して行うこともある。この治療は骨年齢が10歳以下の時点から始めることが望ましいとされ、それ以後だと効果が出にくくなるといわれている。毎年、治療効果判定を申請して、効果が持続している間は治療を継続することになる。

予防/治療後の注意

身長が低い子どもについては、身長の測定とその伸び率の観察が重要である。定期的に身長をグラフに点として打ち、身長曲線を把握することによって、ほかの子どもと比べてどの程度の伸び率なのかを把握しやすくなる。ほかの子どもよりも異常に身長が低い、または伸び率が低いと感じる場合には、早めに検査を受けるべきである。両親とも身長が高くない場合などには、子どもの低身長を気にかけない傾向もあるが、少しでも低身長が気になったら、小学校低学年までのなるべく早い段階で成長ホルモン検査を受けることが大切。

横浜市立市民病院 石原 淳 病院長

こちらの記事の監修医師

横浜市立市民病院

石原 淳 病院長

島根県出身。1979年慶應義塾大学医学部卒業。同大学病院や関連病院で小児循環器科の診療に携わり、1998年に市民病院に入職。 小児科部長、副病院長などを経て2013年より現職。研修医の指導や育成、看護師の教育に力を入れる。