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伊藤病院 伊藤 公一 院長

こちらの記事の監修医師
伊藤病院
伊藤 公一 院長

はしもとびょう橋本病

概要

橋本病とは甲状腺に慢性の炎症が起こる病気で慢性甲状腺炎ともいう。甲状腺はのどぼとけのすぐ下あたりにある重さ10g~20gほどの小さな臓器で、甲状腺ホルモンを作っている。慢性の炎症のため、この小さい甲状腺が腫れてきたり、甲状腺ホルモンを作る働きが低下して甲状腺ホルモンが減って甲状腺機能低下症を起こしたりする。男女比は約1対20くらいで女性の割合が多く、年齢は30~40歳代で起こりやすいという特徴がある。 

原因

橋本病の原因は自己免疫の異常である。免疫機能は本来細菌やウイルスから身体を守るための機能だが、その働きがうまくいかなくなり自分の身体を攻撃してしまうのが自己免疫疾患である。橋本病は、免疫異常によって、甲状腺に炎症が起きている甲状腺の自己免疫疾患である。炎症が持続すると、甲状腺ホルモンを作る働きが不十分となることがある。甲状腺ホルモンが不足し甲状腺機能低下症となると、さまざまな症状が現れる。 1912年に橋本策博士が世界で初めてドイツの医学誌に発表したために、「橋本病」という病名がつけられた歴史がある。それから100年以上が経過したが、自己免疫の異常がどのようなきっかけで起こるのか、いまだに明らかになっていない。 

症状

慢性の炎症のため、正常ではさわってもわからない小さい甲状腺が大きくなり、腫れとしてわかったり、表面が硬くなりごつごつしてきたりする場合もある。また、甲状腺の炎症の強さや持続によって、甲状腺のホルモンが低下してくると、甲状腺機能低下症となる。甲状腺ホルモンは新陳代謝を調整するなど、全身で働いているため、甲状腺ホルモンが減るとさまざまな症状が現れる。全身がむくんだり、汗や髪の毛の量が減って、皮膚が乾燥してかさかさしたり、熱を生産できないため寒がりになったり、胃腸の働きが悪くなり食欲がなくなったり、便秘や声が低くなりかすれ声になったり、物忘れがひどくなったという症状を訴える方もいる。 

検査・診断

橋本病の診断は、血液検査で甲状腺の自己免疫の異常があるか検査する。具体的には、甲状腺に対する抗体である抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)を測定する。また、甲状腺から出る甲状腺ホルモン(FT3、FT4)の濃度をはかる。甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、脳下垂体という場所から出ているホルモンで、甲状腺のホルモンを調節している。これらをあわせてはかることで、甲状腺ホルモンのバランスのみだれがあるかどうか、つまり甲状腺ホルモンの治療が必要かどうかを判断できる。また、医師が頸部の甲状腺を触診し「腫れ」を判断する。しこりがあるかの確認や、男性や高齢の方では甲状腺が下の方にあって触診ではわかりにくいことから、腫れの有無と甲状腺の内部の確認のため、エコー検査でも甲状腺を調べる。エコー検査は身体の表面から人の耳には聞こえない音波を当てて、体内の組織や臓器にぶつかって跳ね返ってきたエコーを画像にして目に見える形にした検査で、負担が少なく安心して行える検査である。 

治療

治療が必要かどうかは、甲状腺ホルモンバランスのみだれがあるかどうかによる。甲状腺の機能が下がって、体内に必要な甲状腺ホルモンが足りない状態では、必要な量の甲状腺ホルモンを薬として内服し、甲状腺ホルモンを補う。甲状腺の機能が低下していない場合は治療の必要はない。治療は、患者の状況や病状に合わせた方法が選択される。橋本病は女性に多く、妊娠を希望する場合は症状が出ていなくても妊娠前から治療が必要になる場合も多いため、専門医療機関や専門医で判断を仰ぐことがすすめられる。また妊娠判明後にも定期的に通院し必要に応じ治療を続け、出産後にも甲状腺の炎症の状態をチェックする必要がある。

予防/治療後の注意

橋本病であっても甲状腺の機能がきちんと働いていて甲状腺ホルモンのバランスに問題がない場合や、治療によって甲状腺ホルモンが体内に必要な量だけある場合は日常生活へ制限はない。ただ、甲状腺ホルモンに重度の異常が出ている場合は、甲状腺ホルモンが改善するまで身体に負担がかかることは避けておくと安心だ。昆布や昆布だしなどヨウ素を多量に含む食品を食べるなどでヨウ素が過剰になると、甲状腺機能に影響が出る可能性がある。しかし、過度に神経質にならず、バランスの良い食生活を心がけることがよいだろう。 

伊藤病院 伊藤 公一 院長

こちらの記事の監修医師

伊藤病院

伊藤 公一 院長

東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学内分泌外科教室、米国留学などを経て、1998年、祖父が創業した伊藤病院の院長に就任し、甲状腺疾患の専門診療体制の強化にまい進している。外国人診療の実績から、国土交通省・観光庁「インバウンド医療観光に関する研究会」の委員会に参加をした経験もあり、メディカルツーリズム普及にも努力している。