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神奈川県立こども医療センター 副院長兼血液/腫瘍科部長 後藤 裕明 先生

こちらの記事の監修医師
神奈川県立こども医療センター
副院長兼血液/腫瘍科部長 後藤 裕明 先生

けつゆうびょう血友病

概要

出血部位の血液を固めるために必要な、「血液凝固因子」というタンパク質の一部が生まれつき不足している疾患。通常の場合は、出血するとまず血管と血小板が血を止める働きをし、血液凝固因子がタンパク質の網を作って出血したところを塞いで血を止めるが、血友病はこの凝固因子が不足しているため出血が止まりにくくなる。血液凝固因子は13種類あり、そのうち第8因子が不足しているものを血友病A、第9因子が不足しているものを血友病Bと呼ぶ。日本では年間で約50~60人が発症するといわれている。

原因

遺伝子のX染色体に存在している第8因子遺伝子または第9因子遺伝子の異常によって、正常な第8因子と第9因子を十分に作れなくなることが原因。女性では一方の親から遺伝子変異のあるX染色体を受け継いだ場合でも、他方から正常なX染色体を受け継げば、正常な第8因子または第9因子を作ることができるため、女性では血友病を発症することはほとんどない。遺伝子変異のあるX染色体を持った女性は血友病の保因者となり、その女性のこどもは血友病を発症する可能性がある。男性はX染色体が1つしかないため、保因者の女性から遺伝子変異のあるX染色体を受け継げば、必ず血友病を発症することになる。そのため、患者の多くが男性であることも特徴。まれに家族に血友病の人がいなくても遺伝子の突然変異で発症する場合もある。

症状

全身のさまざまな部分での出血が止まりにくくなるが、表面の出血よりも体の中で起こる「内出血」が問題となり、特に関節や筋肉部分の内出血による症状が多くみられる。関節内出血は肘や膝、足首などに発生しやすく、出血すると腫れや痛み、熱感などが起こる。筋肉内出血は体をぶつけたり足をくじいたりすることで起こり、出血でできた血の塊が筋肉を圧迫するため、痛みや腫れなどを感じるようになる。また、鼻や口腔内、歯茎からの出血や、皮膚の青あざ、血尿なども起こりやすくなる。特に注意が必要なのが頭蓋内出血や消化管出血で、重い後遺症やショック症状などを引き起こす可能性もあり、緊急治療が必要な場合もある。同じ部位での出血を繰り返すことで関節症などの症状が表れることも。

検査・診断

血が止まりにくいかどうかを調べるため、血小板数、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の3つの測定を行う。PTとAPTTは採血をした血液に固まるよう命令を与える物質を入れ、血が固まるまでの時間を測る検査。このうちAPTTだけが長い場合は、血液凝固因子がどの程度働いているかという「因子活性」を調べる検査を行う。正常な場合の因子活性を100%とし、40%未満の場合に血友病と診断され、血液凝固第8因子活性が40%未満であれば血友病A、第9因子活性が40%未満であれば血友病Bと診断される。凝固因子の働きがどの程度かによって血友病の重症度が判断され、5~40%未満は軽症、1~5%が中等症、1%未満が重症とされる。

治療

不足している血液凝固因子が含まれている薬剤を注射する「補充療法」が主となる。運動会や旅行などの予定がある場合や外科手術や抜歯など出血がある手術や処置がある場合は、事前に血液凝固因子製剤を注射する予備的補充療法が行われる。また、定期的に血液凝固因子を注射することで出血を予防し、日常生活の制限を少なくする定期補充療法が行われることもある。薬剤の投与量や方法は患者の血液凝固因子レベルや出血の頻度などから判断される。

予防/治療後の注意

出血したら出血部位を圧迫、冷却することが基本。軽い切り傷や擦り傷の場合は出血部位を水道水でよく洗い、ガーゼなどで圧迫して止血する。血が止まらない場合は血液凝固因子製剤を投与し、主治医に相談を。出血した部位によっては早めに主治医に連絡したほうが良い。頭をぶつけたときや首周りの出血などは緊急対応が必要になるので、すぐに病院へ行くこと。予備的あるいは定期補充療法を行う際は主治医と相談し、決められた投与量・間隔を守ること。

神奈川県立こども医療センター 副院長兼血液/腫瘍科部長 後藤 裕明 先生

こちらの記事の監修医師

神奈川県立こども医療センター

副院長兼血液/腫瘍科部長 後藤 裕明 先生

1991年横浜市立大学医学部卒業。2012年より現職。難治の白血病と固形がんに対する治療に注力している。日本小児科学会小児科専門医。