日比谷ガーデンクリニック (千代田区/日比谷駅)
高橋 栄 院長の独自取材記事
オフィスビルが林立する日比谷駅周辺。駅直結の日比谷マリンビルの地下2階に「日比谷ガーデンクリニック」はある。院長の高橋栄先生は、精神医学の研究者としてハーバード大学への留学を経験、そして現在も大学教授として活躍している。同院には日比谷エリアに勤める30~40代のストレスフルなビジネスパーソンが多く来院する。大きなソファーに、木や花などのインテリアが置かれた院内は、「ガーデンクリニック」の名にふさわしい和やかな空間だ。診療ではカウンセリングが中心で、じっくり時間をかけて患者と打ち解けていくことを心がけているという。そんな高橋院長に、これまでの道のりや心療内科の病気、患者への思いについて、幅広く話を聞いた。
未開拓の精神医学にやりがいを感じ精神科の道へ
まず初めに、先生が医師になったきっかけを教えてください。
子どもの頃から昆虫や人体などの生物学が好きだったので、進路を考えた時に理系に進もうかなと思っていました。そして生物学の中で一番興味があったのが人体学でしたので、医学部をめざすようになりました。家族に医療関係者はいませんでしたが、小学校の頃から、昆虫図鑑や人体図鑑などをよく読んでいたので、自然と生物学系の道を選んでいました。
医学の中でもなぜ精神医学に興味を持ったのでしょうか?
私が医者になったのは約30年前ですが、当時の精神医学は今ほど発展していませんでした。例えば内科であれば多くの病気も解明されていましたし、薬も開発されていましたが、精神医学はまだまだ体系づけられていなかったのです。私はそこに大きなやりがいがあると感じて、精神医学を勉強してさまざまな病気を解明できればいいなと思いました。私が医者になった頃と比べ、精神医学はこの30年間で大きく発展し、今ではほかの医学分野と同じように、「病気に対して薬を使う」という方法が当たり前になりましたね。
先生の研究分野や開業に至った背景について教えてください。
私の研究分野は統合失調症の原因遺伝子というもので、臨床では統合失調症やうつ病、躁うつ病の薬物療法を専門にしていました。約3年半、米国のハーバード大学に留学し、その後も日本大学医学部の准教授や臨床教授をしており、大学の業務や研究についても自分なりに納得することができました。そして、臨床中心にやっていきたいという想いから、開業を決めました。開業にあたり、研究と同じように理詰めではなく、ハートフルな部分を大切に、患者さんと痛みを共有しながら診察をしたいと思っています。また、この日比谷という地で開業したのも、やはりストレスフルに働く人が多いだろうと考えたからです。そういった現代社会で悩まれている方々の手助けができればと思っています。
カウンセリングを中心とし、患者の痛みを共有する診療
院内のこだわりについて教えてください。
あまり堅苦しい雰囲気にならないよう、ソファーを置いたり木のインテリアを置いたり、花で飾ったりしています。日比谷公園の近くということもあり「ガーデンクリニック」という名前をつけたので、ガーデンのように和んだ空気の中で診療ができると良いなと思っています。外観のドアは、今は窓がないのですが、今後は窓つきのドアに変え、患者さんが入りやすいようにしたいと思っています。光が入ってきたほうが安心しますしね。
このクリニックではどのように診療を進めていくのでしょうか?
薬物療法も行いますが、カウンセリングを中心に診察を行っています。まずは患者さんが「精神病なのかそうでないのか」を見極めなければなりません。例えばうつ病にしても、実は必ずしも「うつ=うつ病」ではありません。「うつ病」というのは脳の機能異常による病気、つまり薬によって脳の異常を治療する必要があります。それに対してノイローゼなどによる「うつ状態」は薬も使いますが、カウンセリングを中心として治療していきます。「うつ状態」の患者さんの中には「うつ病」の方もいれば、ノイローゼの方もいます。例えば、強いストレスのためにノイローゼになっているという患者さんには、カウンセリングと安定剤を処方して少しでも落ち着いて暮らせるような治療を施します。
診療ではどんなことを心がけていますか?
ありきたりのように感じてしまうかもしれませんが、やはり「共感する」ということを大事にしています。患者さんにはそれぞれの悩みがあり、どんな悩みであっても患者さんにとってはつらい事実ですし、それで苦しんでいるのです。世間一般では相談に乗ってくれる人が少ないということもあるでしょう。ですが、現に患者さんが苦しんでいるわけですから、その痛みを共有する。それが精神科医師の仕事だと思っています。また、患者さんは質問攻めにあうと追い詰められたような気分になってしまうため、じっくり時間をかけて患者さんと打ち解けていくようにしています。
このクリニックのスタッフについて教えてください。
当院の受付スタッフは、優しくて人当たりが良い方にお願いしています。精神科に来る患者さんは皆さん敏感で傷つきやすいので、われわれが何げなく話していることでも傷ついてしまうことがあります。ですので、そこは注意を払うよう指導しています。また、当院の予約の段階では、年齢や詳しい症状の話をあえてしないようにしています。よく「予約の電話でスタッフの方があれこれ聞いてくる」と不快に思われる方もいるかと思います。確かに正しい診察のためには必要なことではありますが、私としては来院されてから話を聞くのでも遅くないと思っていますので、ご安心ください。
気軽に立ち寄れるようなクリニックをめざして
ところで、先生の趣味やリフレッシュ方法は何ですか?
週3日ほどジムに行っています。あとはウォーキングでしょうか。土日はほとんど歩いてリフレッシュしていますね。週末に大きな公園に行くと、イベントをやっていたり屋台が出ていたりするので、そこで食べ物を買って楽しむこともあります。やはり健康や若さを失うよりかは、頑張ってトレーニングしたほうが良いなと考えているので、運動は継続してやっています。あとは昔からやっているテニスの観戦も好きですね。
クリニックの今後の展望についてお聞かせください。
日比谷近辺でお勤めになってる方々で、ストレスフルな毎日を送っている方はたくさんいらっしゃると思います。ノイローゼ気味になり、うつ状態になっているような方が気軽に立ち寄り、気軽にカウンセリングを受けていただけるような場所にしたいです。お話をすることで、少しでも楽になるお手伝いができればいいなと思っています。また、近い将来、多くの患者さんに対応できるよう、二診制にすることも考えており、診療時間も拡大していく予定です。
受診をする際、患者さんに何かアドバイスはありますか?
精神的な病気を患っていたとしても、症状に気づきにくいこともあります。その場合は、精神科医師が書いているブログなどを見てみることをお勧めします。私の場合ですと、クリニックのホームページの「お知らせ」の欄に、精神病のセルフチェックができるような情報を掲載しています。例えば「パニック障害の人はこういう症状がある」など、定期的に情報を更新しています。こういった情報を知っていただくことで、「もしかしたら自分もパニック障害なのではないか」などと、気づくきっかけになるかと思います。受診を考えられている方はぜひ一度、見てみてください。
最後に、精神科にかかることに抵抗がある人に向けて、メッセージをお願いします。
確かに精神の問題で病院やクリニックに行くというのは抵抗があるかもしれません。しかし、一度来ていただければ今よりきっと楽になると思います。お越しいただくことで、少しでも気持ちが楽になったり、少しでも夜眠れるようになったりできるよう協力いたします。そして、1回目からではなくても構いませんので、2回、3回と来ていただく中でだんだんと打ち解けていければと考えています。当院では、精神に関するどんな症状であれ、基本お断りはいたしません。すべて診る方針で拒否をすることはございませんので、お気軽にお越しいただき、じっくり治療していきましょう。