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伊藤 大樹 院長の独自取材記事

あおばクリニック

(福岡市東区/舞松原駅)

最終更新日:2021/10/12

伊藤大樹院長 あおばクリニック main

西鉄青葉台入口バス停から徒歩約3分。静かな住宅街にあるのが、1996年に開業した「あおばクリニック」だ。高齢社会において課題の1つとなる在宅医療に早くから取り組んでいるのが同院。「赤ちゃんから高齢者まで誰もがアクセスできる環境でありたい」と考え、機能強化型在宅療養支援診療所として看取りにも対応。院長である伊藤大樹先生をはじめ、スタッフ一丸となって外来診療・在宅医療を問わず、24時間365日対応する体制を整えている。また福岡東在宅ケアネットワークの事務局として、地域の医療機関・医療関係者との連携を図り、患者中心の地域密着型医療の提供に心血を注いでいる。アメリカでの臨床経験もある院長に、地域医療の在り方、同クリニックの考えをじっくりと聞いた。

(取材日2020年10月31日)

終末期患者の在宅医療・緊急の往診・看取りにも対応

まず、こちらの特徴でもあるという機能強化型在宅療養支援診療所とはどういったものなのでしょうか?

伊藤大樹院長 あおばクリニック1

地域において、在宅医療を支える窓口として、他の病院や訪問看護ステーションと連携を図りながら、24時間体制で往診や訪問診療を行う診療所を指します。当院は1996年に小児科の単科から始まりましたが、2000年には内科を併設すると同時に、在宅医療も提供し始めました。機能強化型在宅療養支援診療所となったのは2012年のことです。最初は私の母が診療する小児科から始まった当院ですが、両親ともに長崎の対馬や、福岡青洲会病院などで早くから在宅医療に取り組んでいました。2000年は介護保険制度が始まった年でもあり、本格的に地域の患者さんのニーズにお応えできる体制を整えたのが当院なのです。複数の医師が在籍し、緊急の往診や看取りなどにも対応しています。

24時間、365日対応されているとのことですが、スタッフの体制はどうなっているのでしょうか?

常勤の医師が5人、非常勤の医師が3人、看護師は9人、医療事務は7人という体制です。当院は在宅医療と外来診療、いずれも同等に対応し、プライマリケアを提供することをモットーとしています。当院では患者さんのニーズに応じ、赤ちゃんからご高齢の方まで年齢に関わらず在宅・外来を選択できるようになっています。当院を受診された方には在宅・外来の区別なく、24時間いつでも、どんなご相談でもお受けする専用の電話番号もお渡ししています。これは当院が掲げる「アクセス」の1つで、どんな場合でも患者さんが当院に連絡を取れる状態になっているのです。スタッフとは毎朝カンファレンスを行っており、そこでは日々の診療に関する共有の他、患者さんの薬1つであっても「どの医療機関の誰が、どんな理由で処方したのか」までをきちんと追跡しています。

そこまでカバーするとなると、スタッフ全員に幅広い対応が求められますね。

伊藤大樹院長 あおばクリニック2

そのためのカンファレンスでもあります。1回のカンファレンスは短くとも、毎日やることでスタッフ全員が同じ方向を向いて進んでいけるのです。私は九州大学や福岡大学の非常勤講師も務めていますし、山口大学や福岡済生会病院の後期研修医も当院に勉強に来ています。そこでも彼らに教えているのが、「世界基準で考え、地域で活動する」ということです。アメリカのボストンにあるマサチューセッツ総合病院(MGH)は世界的にも専門性の高い医療機関とされていますが、院内は地域の患者さんであふれています。大学病院であっても、あくまで地域医療機関の1つなのです。日本の大学病院でもこういった意識は徐々に高くなっており、当院に来る研修医にも徐々に浸透してきていると感じています。

各医療機関と連携し、患者の意向を尊重した診療を行う

先生は当初からこのクリニックを継ぐおつもりだったのでしょうか?

伊藤大樹院長 あおばクリニック3

いえ、日本で研鑽を積んだのち、さらにアメリカで循環器内科を専門に働いていたので、永住ビザを取ろうと考えていたんです。特に心臓カテーテルを専門としていたのですが、患者さんとの向き合い方を少し考えている時期でもありました。顔よりも冠動脈の写真を見て「ああ、この患者さんか」という日々で、本当にこれでいいのだろうかと。そんな時に父が入院したと聞き、1ヵ月ほど帰国し、クリニックを手伝い、在宅医療を行う中で、初心に帰るといいますか、このプライマリケアをやりたかったんだと気づいたんです。それが2012年のことで、ちょうど機能強化型在宅療養支援診療所が始まった年でもあったんです。

在宅医療や看取りは患者さんのプライベートな部分にもふれるかと思いますが心がけていることは何でしょう?

普段は隠れている関係性など、見えないものも見えるのが在宅医療です。私たちが心がけているのは、主人公はあくまでご本人とご家族だということ。ご本人方の意向や希望をできるだけ尊重し、私たちは脇役に徹することが大事です。在宅医療も外来診療も同等に行うため、どちらかに固定することはないんです。患者さんのニーズに応じて、在宅・外来を選べますし、それが流動的になっても構わない。昔の緩和ケアは在宅・病院の2択でしたが、今は病状の変化に応じて療養場所も選べるようになっています。症状は日々変わりますし、それに伴って心境も変化しますから。自宅に帰りたいのなら帰宅していいし、病院が安心だというならそれでいい。こういった点からも、2012年に比べ、病院と地域の診療所などとの連携が随分強固になったと感じます。

患者さんの状況に応じて、都度、適した場所を提案するのですね。

伊藤大樹院長 あおばクリニック4

当院は福岡東在宅ケアネットワークの事務局も兼ねています。地域の看護師、理学療法士、ケアマネジャー、病院の先生方、保健所などの他職種の皆さんとの横のつながりをつくるための活動にも力を入れています。この関係なしに在宅医療を提供するのは難しいのです。訪問看護ステーションの数なども2012年に比べるとかなり増えました。特に昨今では新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、入院しても面会ができないという課題も生まれ、がんの終末期の患者さんが帰宅を希望されることも多くなっています。こういった連携が今後の医療のコアになってくるのではないかと思っています。

プライマリケアを行い、地域のニーズに応え続ける

患者さんやご家族の選択肢が増えたということですね。

伊藤大樹院長 あおばクリニック5

先ほども言いましたように、症状も考えも日々変わります。たとえ3日前に言っていたことでも変わっていいのだと患者さんにも伝えていますし、だからいつでも相談してほしいという思いで24時間対応の番号を渡しています。患者さんの心や言葉は週末や夜に変化しやすい傾向にあります。研修医には「深夜の電話は心の叫び」と教えています。昼間は落ち着いていても、夜や週末になれば内に秘めていた本音があふれてくるんです。医師から見たものとご本人、ご家族が見るものにも違いがありますから、常に言葉を交わし、コミュニケーションを取り、変化に対応しながら、プライマリケアを提供していくということに尽きますね。

スタッフの皆さん、患者さんとともに歩んでいくのですね。

在宅医療をやりたいという意思を持った先生たちが当院には来てくれています。今後も彼らと、患者さんや地域のニーズに沿った患者中心の医療を展開し続けます。とはいえ、最近感じるのは、スタッフのケアも大切だということです。当院では時間を問わず往診や電話に対応しますから、どうやってスタッフを休ませるのかも課題だなと。患者さんのほうばかりを向いているとスタッフ側が疲弊するかもしれませんから。けれど、やりがいを感じるのはやはり、患者さんや、その側にいるご家族に「できるだけのことはやったのだ」と思ってもらえる時です。これが本当にうれしいですね。

お忙しい毎日とは思いますが、先生の息抜き方法は何でしょう?

伊藤大樹院長 あおばクリニック6

愛犬と過ごす時間です。全員で4匹いるので散歩も1回では終わらないですが、いい運動にもなっているんですよ。他にも猫もいるので大変なんです(笑)。そうやって息抜きをしながら、当院のビジョンである、患者中心の医療、地域密着型の医療をこれからも行っていくつもりです。私たちの特徴の1つが、どんなご依頼、ご相談にも必ず応じる点。24時間365日、望めばいつでも当院にアクセスが可能です。病気だけではなく、生活、ご家庭の環境などいろいろな条件を踏まえて対応していきます。皆さんの生活や健康の介助者としてぜひ当院を活用していただければうれしく思います。

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