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荒木 冨士夫 院長の独自取材記事

シエスタ荒木医院

(北九州市八幡西区)

最終更新日:2024/06/03

荒木冨士夫院長 シエスタ荒木医院 main

九州自動車道・八幡インターから車で5分ほど。周囲にのどかな風景が広がる「シエスタ荒木医院」は1992年の開院以来、うつ病やパニック障害、仕事や家庭に疲れた人など、精神科としては軽い症状の人を主にサポートしてきたクリニックだ。外出も面会も自由な個室の入院施設を持っていたが、昨年閉鎖。現在は、荒木冨士夫院長をはじめドクター6人体制で、外来診療に注力している。特徴的なのは、新患の予約の必要がないこと。精神科や心療内科の診察を受けるのに数ヵ月待ちが当たり前の昨今にありながら、「今、困っている人を今日診る」というポリシーを貫く。予約不要にこだわる理由、具体的な診療内容、同院の歴史などについて荒木院長に話を聞いた。

(取材日2021年3月29日)

平日は午前11時までに来院すれば予約不要に

どのような主訴の患者さんが来られますか?

荒木冨士夫院長 シエスタ荒木医院1

うつ病、自律神経失調症、不安障害、仕事や家庭に疲れてしまった方など、比較的軽症の患者さんが多いですね。誰にも言えない、持っていき場のない思いを話すために定期的に来られる方や、「また一から事情を話すのはきついから」と病院を移らず、遠方からわざわざ通院される方など、本当にいろんな方がいらっしゃいます。私たちの最初の願いは、まずここに来て話をして、わかってくれる人がいたと思って帰っていただきたいということ。実際、問題はまだ何も解決していないのですが、抱えていた悩みを話すだけでスッと気持ちが楽になったりするものです。その後、解決方法を探っていくわけですが、答えが初めからあるわけではありません。患者さんがどこを向いているのか、それに合わせて一緒に悩み、相談に乗るのが私の仕事だと思っています。

診療体制のポリシーについて聞かせてください。

当院では、今、困っている人すべてに対応できるよう、平日午前11時までに来院されれば、新患の患者さんも予約不要で一切断りません。面接時間は新患でも20~30分と不十分かもしれない、待ち時間も長いかもしれない、でも今つらい思いをされている方を放ってはおけない、その一心です。待ち時間が長くなってしまうのがたいへん心苦しいのですが、少しでも快適に過ごしていただけるようにと、待合室に、私が毎週末トレーニングのために登っている立花山で撮った写真や北アルプスの風景を映像で流したり、花を飾ったりしています。周辺を散策されても構いませんよ。ドクターは、元大学教授や日本精神神経学会精神科専門医などキャリアのある6人が在籍し、1日2~3人体制で外来診療を行っています。

この記事に「スタッフの写真をたくさん載せたい」とおっしゃっていましたね。

荒木冨士夫院長 シエスタ荒木医院2

病院は、私1人で成り立っているわけではありません。非常勤で来ていただいている先生方をはじめ、デイケアスタッフ、受付、お掃除の方まで、皆さんに支えられてこそ。おかげでこの年までこうして仕事をすることができ、本当にありがたいことです。当院の中庭にはさまざまなかんきつ類の木や花が育っていますが、これは昨年まで受け入れていた入院患者さんが退院の記念にと植えていかれたものが多いんですよ。29年前に開院した時、建物だけで何もなかったこのクリニックを、「患者さんやスタッフと一緒につくり上げていきたい」と願っていた思いが実を結んでいるように感じています。

どのような悩み事も相談に応じる

診療において、特に心がけていることは何ですか?

荒木冨士夫院長 シエスタ荒木医院3

心の病気をどう治療するか、方法としては大きく薬物療法と精神療法がありますが、当院では基本的に、面接を主にした精神療法を行っています。患者さんとお会いして、話を伺い、どうしてこうなったのか、原因を突き止め診断。解決方法を模索します。言葉は悪いかもしれませんが、精神科の診断はまるでパズルをするようなもの。ピースを埋めていく時に一番大切なのが、患者さんとの信頼関係です。関係性ができ、ここに自分のことをわかってくれる人がいる、と思えるだけでずいぶん状況は変わってきます。そんな関係が築けるよう、患者さん一人ひとりと誠実に向き合い、「ここに来て良かった」と思っていただけるようなクリニックでありたいですね。

最近、増えてきた相談内容はありますか?

明らかに増えているのは、性同一性障害の方。世の中の雰囲気が変わってきたこともあって、相談しやすくなったのでしょうね。患者さんは別にそれを治したいわけではなく、自分らしく生きたいと思っていらっしゃいます。治療の対象ではないので診療を断る先生も多いですが、私はお話を伺って、「それでどうしたいの?」と相談に乗っている感じです。また、中学生以下のお子さんでは不登校、チック症、発達障害に関するご相談も多いですね。発達障害は専門機関の検査を受けるのに数ヵ月待ちの状態のようで、そこまで待てない親御さんが、とりあえず一度診てほしいとお子さんを連れてこられることがあります。当院のドクターのうち、私を含め2人だけがこの性同一性障害と中学生以下のお子さんに対応していますので、事前に曜日をお問い合わせください。

こちらで取り組んでいる「デイケア」について教えてください。

荒木冨士夫院長 シエスタ荒木医院4

平日の午前10時から午後3時、10人前後の小グループでの「デイケア」を行っています。慢性的なうつ状態の方、薬だけでは改善が難しいと判断した方、対人関係が苦手な方などにご案内しています。新型コロナウイルス感染症流行の中、一人暮らしで社会的に孤立した方が引きこもってしまうと、うつ病や不安障害、認知症などの原因になることも。みんなで中庭に花や野菜を植えたり、そこで収穫したものを使って食事をしたり、お話ししたり。もちろん、特に何もされなくても、お話しされなくても大丈夫です。介護保険のデイケアではなく、費用は医療保険が適用されます。興味のある方は気楽に、まずは見学に来られてくださいね。

快適なロビーで待ってもらいたい

そもそも院長が精神科医師になった理由を聞かせていただけますか?

荒木冨士夫院長 シエスタ荒木医院5

高校までは大阪で過ごしました。大学進学にあたって、医師をめざすか、仏像やお寺の修復の仕事に就くかで迷っていたのですが、先に金沢大学医学部に合格したのでそのまま進学。勉強するうちに、今で言うパニック障害のような症状で来院された患者さんに対して、内科の先生がいろいろ検査して「どこも異常はないよ」で帰してしまうのに納得できず、それはそれできちんと治療すべきだと考えるようになりまして。当時「心療内科」で知られていた九州大学で学ぼうと、九州大学の医局へ。心療内科に入局するつもりだったんですが、1年間の内科研修を終え、たまたま精神科の医局にいる頃に大学紛争が最盛期に。大学病院の前がバリケードで閉鎖され学生も暴れ回り、研修どころじゃなくなってそのまま精神科にはまり込んでしまった、というのが正直な話です(笑)。

そこからクリニック開院まで、どのような経緯があったのでしょう。

九州大学に来て知ったのですが、精神科にも素晴らしい指導者がいらっしゃいました。心の病気の治療方法としての「精神療法」に、本格的に取り組んでいる先生方に出会えたことは本当に恵まれていたし、幸せでした。その後、九州厚生年金病院(現・地域医療機能推進機構九州病院)精神科部長として14年間勤める中で、日常生活に疲れた軽症の方がちょっと休みながら治療を受けられるような、入院施設のあるクリニックをつくりたいと考えるようになり、当院を開院しました。入院と言っても、個室で、面会も外出も自由。全国的にも少ない施設で、遠方から定期的に入院に来られる患者さんもいらっしゃいましたが、スタッフの補充が難しくなったこともあり、昨年やむなく病棟を閉じました。現在は外来とデイケアに絞っていますが、「患者さんを大切に」というポリシーは変わらないつもりです。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

荒木冨士夫院長 シエスタ荒木医院6

医師として診療にあたっていて一番うれしいのはやはり、患者さんからの「ずいぶん気持ちが楽になった」という言葉。私たちは、患者さんの本当の思いをくみ取りながら、一緒に悩み、解決への道を探っていく専門家です。今日誰かと話したい、心の限界が近いと思われたら、お待たせするかもしれませんが、必ずその日中に時間をとってお話を伺います。ロビーは快適に過ごしていただける工夫も施しております。また当院では、院内処方を取り入れており、調剤薬局でお待たせすることはありませんので、どうぞお気軽にお越しください。

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