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竹田 育弘 院長の独自取材記事

竹田内科クリニック

(北葛城郡王寺町/王寺駅)

最終更新日:2024/04/19

竹田育弘院長 竹田内科クリニック main

「安心のある医療を、希望のある生活へ」という医療理念のもと、20数人の多職種のスタッフが働いている「竹田内科クリニック」。院長である竹田育弘先生は循環器を専門として救命救急の経験を重ね、2011年に父のクリニックを継承。循環器だけでなく一般内科の外来も行っているほか、在宅医療にも注力。東日本大震災での経験が、現在の医療活動に大きく影響を与えているという。家族を失った人々のサポートをしながら「命は救うことができたけど、魂を救うことができなかった」と話す竹田院長。「長生きできたらいいというのではなく、その中身をいかに生きるのかに焦点を当てなければ」という思いが、医療理念である「希望ある生活へ」に込められている。まっすぐな思いで患者に寄り添う彼の思い描く医療について、命についての考えを聞いた。

(取材日2024年4月1日)

命を助けるだけでなく幸せに暮らせるよう寄り添いたい

まずは、循環器内科をご専門に選ばれた理由をお聞かせください。

竹田育弘院長 竹田内科クリニック1

先輩から「循環器は自分の力で人の命を救うことができる」と言われ、やりがいがあると思ったことがきっかけです。循環器内科だと、救命救急などきちんとした処置をすることで、次につなげられるケースもあります。これまで、各病院では循環器の専門の医師として勤務し、10数年にわたり救命医療にも携わってきました。命を救うという使命感は、病院で働いていたときの私のスタンスでしたし、クリニックで働く今でも大切にしています。

院長に就任するまでの経緯を教えてください。

大学を卒業後、1997年に奈良医科大学病院第一内科に入局しました。その後は2011年に開業医になるまで各病院で循環器内科の医師として救命医療に携わり奈良県立三室病院心臓血管センターを退職後に開業医となりました。勤務医時代は人の命を助けることを、使命と考えていましたが、今は命を助けるだけではなくて、いかに生きるか、もっといえば、いかに命を終えるかが問題だと考えるようになりました。そのように変わったのは、東日本大震災のときに被災地に行って医療活動に携わったことが、きっかけになっていると思います。

それはどのような変化だったのでしょうか。

竹田育弘院長 竹田内科クリニック2

昔から私は「患者さんの元気な笑顔を見たい」と思っているのですが、東日本大震災後、災害医療の現場に行って感じたのは、傷つき希望を見出すことができなくなった方の笑顔を見ることができなかったという無力感です。「どうすればこの方は笑顔を取り戻せるのだろうか」と考えることは、病院勤務の際にはない悩みでした。おこがましいのですが、今までは病院でたくさんの命を救ってきたと思っていました。しかし震災の現場では、いくらいい治療を施しても、救えないものがあると実感しました。当時の「患者さんが笑顔になるためには何が必要なのか」という問題は、現在の在宅医療、そして看取りにもつながっています。そして、「患者さんが幸せに暮らすにためには何が必要なのか」「最期をどう迎えるのが幸せなのか」と常に仲間と考えています。それは、「今をどう生きるか」を考えることなのだとも思っています。

多職種のチームで支える医療

こちらのクリニックではどのような患者さんが多いですか。

竹田育弘院長 竹田内科クリニック3

40年前に父が開業したクリニックですので、当時から通ってくださる方々がたくさんいらっしゃいます。ですから来院される患者さんは、ご高齢の方が多いですね。当院は、循環器内科が専門ですが高血圧や心不全のような循環器疾患だけでなく、糖尿病などさまざまな疾患の方が多くいらっしゃいます。どこの科を受診すればいいのかわからない方も多くいらっしゃるので、そのような方のお話もしっかりと聞いた上で、その人に応じた先生を紹介させてもらっています。また、高齢になってくると衰弱して歩行が困難になってしまう方も多く、そのような方に対して当院ではリハビリテーションも行っています。基本的には予約の外来ではありますが、どなたでも希望される方は予約外でも診察させていただいております。

在宅医療に力を入れているそうですね。

長年通われていた患者さんが通院できなくなった時、「ご自宅で診察をしましょう」と始めたのがきっかけです。父が往診をする姿をみて育った私にとって、受診できない方に往診をするのは自然なことでした。初めての在宅医療の体験は、東日本大震災での医療活動で、避難所や家を回った時でした。医療全般にいえますが、特に在宅医療は医師1人でできるものではなく、看護師、栄養士、ケアマネジャーなど多職種の人が関わって、患者さんをサポートすることが大切だと考えています。当院では、患者さんによりよい医療を提供するため、訪問看護、訪問リハビリ、訪問栄養を行うスタッフやケアマネージャーが在籍し、密接な連携を心がけています。ただ在宅医療に特化するわけではなく、外来の患者さんと在宅の患者さんを区別せずに一人ひとりを同じ目線で見つめ、それが患者さんやその家族にとって必要とされる支援となるように努めています。

在宅医療で感じていることを聞かせてください。

竹田育弘院長 竹田内科クリニック4

医療が進んで100歳近くになる方も増えていますが、そんな皆さんが素直に長生きしていることを喜べているかというと、必ずしもそうではないと感じます。生きている自分の存在価値のようなものが見つけられない方も多いのではないでしょうか。例えば、新しい薬を飲んで寿命が延びても、そこに幸せが伴っているかというと、必ずしもそうではありません。医者の役割は患者さんの命を救い、病気を治すことであり、患者さんの幸せを考えることは医者の役割ではないのかもしれませんが、「豊かな人生とはどのようなものなのか」について改めて考え直すことも必要なのではないでしょうか。

患者、そして家族とどのように向き合っていくのか

同クリニックではイベントにも取り組まれていると聞きました。

竹田育弘院長 竹田内科クリニック5

患者さんの中には、家に籠っていて普段は誰とも喋らないという方もいらっしゃいます。そのような方にとって、クリニックの受診はとても大切な時間になっているのだと、日々感じています。というのも、月に一回の受診の際に、スタッフや私と話すことが唯一の楽しみだとおっしゃっていただけるからです。そういった方に一歩を踏み出して元気になってもらうのには、どうすればよいのかと悩んだ際に、社会性がなくなるのが一つの問題なのではと感じました。社会と接点を持ち活動をしている方は、リハビリをしていなくても元気な方が多いように思えます。逆に、いくらリハビリを頑張っても、社会とつながっていないと元気を維持するのは難しいのかなと思います。当院では、そういう社会活動の一つのきっかけになればという思いから、コロナ禍前まではクリスマスなどのイベントやヨガを取り入れたイベント、認知症の教室などを行っておりました。

患者さんと接する上で、心がけていることを教えてください。

「ここに来て、先生に話を聞いてもらったら元気になった。また来るね」などと言ってもらえるとうれしく、患者さん方にそのように思っていただけるような診療を心がけるようにしています。ただ病気を治したらその人は健康になるかというと、必ずしもそうではないと思います。いくら病院で「あなたは検査も異常ないし健康ですよ」と言われても、不健康な人がいらっしゃいます。それは社会的や精神的に健康でないことに理由があるのだと思います。そういう方に少しでも元気になっていただくためには、私一人の力ではなくスタッフ全員の力が必要になってきます。スタッフ一同がそのような思いを持って、患者さんを支えていけるようなクリニックでありたいと頑張っています。

最後に、地域の方々にメッセージをお願いします。

竹田育弘院長 竹田内科クリニック6

患者さんにはいろんな方がいらっしゃいます。例えば、余命宣告を受けた時、自分のやりたいことをやり遂げようと頑張る人もいれば、気力が低下してみるみると弱っていく人もいます。その時どのように生きるのか、ただ命を長らえればいいのではなく、その方々それぞれの人生そのものにもっと焦点を当てられたらと思います。そうすることで皆さんが健康に過ごせるようなサポートを行い、在宅療養の場面でも患者さんとそのご家族に寄り添うことで、家で過ごすことの不安を少しでも取り除けるような関わり方ができればと思っています。それと、もう一つ伝えたいことは、人生の最期の迎え方について、家族で話合いましょうということです。しっかりと家族みんなで話し合える環境ができて、人の命や人間の尊厳を尊重できるような社会になることを願っています。

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