久野 篤 先生の独自取材記事
久野医院
(名古屋市守山区/小幡駅)
最終更新日:2023/04/19
小幡駅から徒歩約6分の住宅街に立つ「久野医院」は、50年以上前からこの地でかかりつけ医として頼りにされてきたクリニックだ。2代目となる吉村貴子院長が眼科を、その弟である久野篤先生が内科・消化器内科・小児科を担当し、2人体制で連携した診療を提供している。内視鏡検査を得意とする同院では、精度の高い診断に役立てるため、今年、新しい機器を導入したばかり。また、眼科では目の網膜の断層が見られるOCTという先進の検査機器を導入し、緑内障の早期発見、糖尿病網膜症をはじめ黄斑疾患についても精密な検査が期待できるという。内視鏡検査やクリニックの診療について、久野先生に話を聞いた。
(取材日2022年8月8日)
2人の医師が連携して医療を提供する
この地域で50年以上、診療を続けているクリニックだそうですね。
私の両親は内科の医師で、このクリニックは1971年に母が開業しました。両親ともに患者さんに親切で皆から慕われていたので、子ども心に誇らしく感じていたのを覚えています。こんな優しい目を見たことがないというくらい、患者さんにはいつも優しく接していました。そんな診療のおかげか今も、先代からの患者さんが来てくださっています。両親の背中を見て私も医師を志しました。「人の役に立てるかかりつけ医になりたい」という思いで内科を選択し、消化器内科を専門に研鑽を積み、勤務医時代には生活習慣病を含めた内科全般を幅広く診療してきました。母が他界してからは、姉が院長となり眼科を、2008年からは私も加わって消化器内科も診療するかたちになりました。
現在はお2人で診療されているのですね。どんなメリットがありますか?
糖尿病や高血圧のように、合併症を診るために内科と眼科両方を受診する患者さんにとっては、一度の受診で済むことが一番のメリットですね。私は日本消化器病学会の消化器病専門医で、院長は日本眼科学会の眼科専門医ですから、かかりつけ医としての一般的な診療から専門的な検査・治療まで、2人の医師が連携しながらさまざまな患者さんに対応しています。また、新型コロナウイルス感染症の流行に際しては、通常診療に加えて発熱患者さんへの対応とワクチン接種の業務が増えるという非常時を経験して、医師が2人いる体制のメリットを実感しました。診療の起点となる医師が2人いるからこそ、仕事を分担したり協力したりして、スムーズな診療ができるようになっています。
消化器内科の専門家として、最近気になる病気はありますか?
健康診断を受ける人の約3割に脂肪肝と肝機能異常がみられるともいわれます。その中には、飲酒習慣のない非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が急増してきました。NAFLDは、肝臓に脂肪が蓄積した状態で、肥満や糖尿病の人によくみられます。NAFLDの10~20%は、高度の炎症が続き、線維化を来して無症状のまま5~10年で肝硬変に進行するともいわれ、肝硬変から肝細胞がんを発症する場合もあります。当院では今年から新しい超音波診断装置を使って肝臓の硬さを調べ、線維化の程度を数値化できるようになりました。患者さんも、数値で示されることで、食事や運動などの生活習慣を改善する意欲が上がるはずです。
先進の内視鏡で精度の高い診断と苦痛ない検査をめざす
院内もリニューアルしたそうですね。
老朽化もありましたが、世代交代を皆さんに知っていただきたいという思いもあり、5年前に内装の全面改装をしました。床材や壁紙、照明など、明るくモダンな印象になるよう検討を重ね、満足のいく仕上がりになりました。患者さんからも、「明るくきれいになった」、「この場所に真新しいクリニックがあったなんて知らなかった」など、好評です。これまで玄関でスリッパに履き替えて負担をおかけしていましたが、靴を履いたまま入れるバリアフリーにしたので、高齢者も車いすのまま入れます。それと同時に、働く環境が新しくなったことで、医師もスタッフも今までより気持ち良く働くことができて、モチベーションも上がっています。さらに、検査機器も刷新して機能的にも向上しました。
内視鏡機器のリニューアルでは、どんな点が進化していますか?
今年の6月に内視鏡を新しいものに更新しました。ハイビジョン化された経鼻内視鏡の画質は素晴らしくきれいで、隔世の感があります。遠くからでも視野全体が明るく鮮明に映るようになったので、病変を発見・診断するまでの時間が早くなり、検査時間の短縮につながっています。大腸内視鏡については、拡大観察が可能になり、血液中のヘモグロビンに強く吸収される狭帯域光を用いたNBIとの併用で、微細な血管と粘膜の表層模様が詳細に観察できるようになりました。これは、大腸ポリープを発見した場合に、切除を図るべきかを鑑別するのに有用です。内視鏡の太さは11.7mmとより細くなっているので挿入性も良く、患者さんも楽に受けていただけると思います。もちろん、ポリープ切除術も当院で可能です。
内視鏡検査では、鎮静剤を用いての検査もできるそうですね。
私自身が内視鏡検査を何度も受けた経験上、胃内視鏡では異物を喉から押し込まれる不快感と胃が空気で張ってゲップが出そうになるのを我慢するつらさがあり、大腸内視鏡ではS状結腸を進んでいく時におなかの張りや腹痛があり、何度経験してもそれなりに苦痛を伴いました。こうした苦痛を記憶に刻まないように鎮痛剤を使用することは、過去の検査で痛い思いをした人や、検査が初めてで不安が強い人にとっては、メリットが大きいと思います。鎮痛剤のデメリットとしては、呼吸や心臓機能を一時的に弱めることがまれにあること。年齢や持病の有無によって使用可能かどうかは事前に診察して判断しますので、迷っている方はぜひ一度ご相談ください。
身近な医療の専門家として気軽に頼ってもらいたい
患者さんの層について教えてください。
内科では50~70歳代の患者さんが過半数で、当院は18時から夕診もしているため仕事帰りに受診される人もいらっしゃいます。生活習慣病が最も多いですが、胃腸の不調を訴える人も増えていて、私が消化器内科を専門としていることをホームページを見て、来院されているようですね。最近気になるのは、機能性ディスペプシアという病気が増えていること。これは、内視鏡検査では異常はないけれど、吐き気やつかえ感、胃痛や胃もたれなどの食道・胃の症状が慢性的に続く病気です。食道から胃・十二指腸の運動機能異常、胃酸分泌の亢進、ピロリ菌感染、心因的要素などが原因で、10~20歳代の若年層にも増えています。適切な検査をした上で、病状と各治療薬の作用を説明し、仕事や学業に支障なく生活できるように相談しながら治療を進めています。
眼科ではどんな診療をしていますか?
眼科は、子どもから高齢者までの患者さんが来院しています。大半の方が、目の痛みや充血、かゆみ、見えにくいなどの自覚症状で来院されていますが、現在、失明理由の上位となっている緑内障や糖尿病網膜症などの病気は、症状が出てから受診したのでは手遅れになることもあるため、注意が必要ですね。糖尿病で定期通院されている方には、目の合併症である糖尿病網膜症の経過観察が必要なことや、緑内障の視野狭窄は自覚症状として現れないうちに進行してしまうケースが多いことをその都度、伝えるようにします。病気の啓発をしながら、患者さんが気軽に相談でき、受診していただけるような診療に努めています。
今後、地域の方にどんな医療を提供していきたいですか?
リニューアルやスタッフ増員により、この数年間でクリニックの機能と対応力はかなり向上しました。それに伴い、医師として新しい知識を学んだり、技術を磨いていくことも大事だと思っています。そして、患者さんが健康面に不安を感じた時、「内科の病気じゃないかもしれないけどあの先生に相談してみよう」と思っていただけるよう努めています。皮膚科は標榜していませんが水虫の治療もしていますし、高度な医療が必要であれば信頼する病院を紹介します。診察室や処置室の窓からは、春は桜、秋は紅葉が見え、患者さんからは「気持ちが落ち着く」と言っていただいています。快適な医療環境と自分がこれまで培ってきた技術や経験を生かした医療を、今後も提供していきたいですね。