ピロリ菌治療で胃がんリスク軽減を図る
保険適用の治療と内容
中川胃腸科外科
(名古屋市港区/港北駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
日本人の罹患率が男女ともに高いと言われる胃がん。その原因の一つに挙げられるものとして、近年耳にする機会が増えているのが、「ピロリ菌感染」だ。胃に生息するピロリ菌を治療することによって胃がんリスクの低減につながると考えられているが、実際に感染を患者自身が目で見て確認することはできないこともあってか、その重要性について考えることは、あまり多いとは言えないのではないだろうか。今回は以前からピロリ菌の治療に取り組み、「胃がん撲滅は医師の使命」と語る「中川胃腸科外科」の中川俊廣院長に、治療の流れから注意点、治療しなかった場合のリスクについて、深く話を聞いた。
(取材日2017年6月27日)
目次
胃がんをはじめ消化器疾患と関係の深いピロリ菌を治療することで、疾患リスクの軽減をめざす
- Qピロリ菌とはどのような特徴を持つ菌なのですか?
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A
ピロリ菌は胃の粘膜に生息する細菌です。胃という強酸性の環境で細菌が生息するとは考えにくく、1983年に発見されるまでその存在が確認されることはありませんでした。従来の方法では培養することもできないことから、その発見も偶然のたまものだったのです。ピロリ菌は日本人の約半数が感染していると言われていて、特に60代以降の方が多く感染しています。衛生管理が十分でなかった時代に口からピロリ菌に感染したのでは、という見解が一般的です。日本人の場合はお箸を共有して、離乳食などを食べ与えたり、口移ししたりしたことで感染した多能性が高いとも言われていますが、明確な感染経路はまだ明らかにはなっていません。
- Qピロリ菌を治療しないとどうなるのでしょうか?
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A
感染によって、まず胃炎の発症リスクが高まります。その胃炎が原因で潰瘍ができてしまったり、がんを発症してしまうことも。胃炎の原因はいくつかありますが、その中の1つにピロリ菌感染があるということです。ピロリ菌に感染しているからと言って必ず胃がんを発症するわけではありませんが、治療によってそのリスクの低減を図ることができます。そのため1994年にはアメリカ国立衛生研究所(NIH)が、潰瘍の初発あるいは再発防止のためにピロリ菌を除菌する勧告を出しそれから6年後の2000年より、日本でも胃・十二指腸潰瘍に対するピロリ菌治療が保険適用となりました。また2013年には慢性胃炎も保険対象に加わりました。
- Q保険で受けられるピロリ菌治療の内容を教えてください。
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A
ピロリ菌感染の検査方法は複数種類あり、保険適用の場合、そのうちの1つである胃カメラまたは胃透視による精密検査を受ける必要があります。当院では胃カメラ検査で感染と胃炎や潰瘍などの症状が確認されたら治療に移ります。具体的な流れとしては、複数種類の薬を組み合わせて処方し、1週間服用してもらいます。その後2ヵ月程度期間をあけた後、呼気検査を行い陰性反応であれば終了です。保険では2回まで治療を受けられるため、1回で治療しきれなかった場合は、2回目用に組み合わせた薬を服用してもらいます。
- Q貴院では治療前にヨーグルトを摂取してもらうそうですね。
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A
特定のヨーグルトに含まれる乳酸菌OLL2716株には、ピロリ菌の活動を抑制する効果が期待できるとされています。もちろんこれを摂取し続けることでピロリ菌が除菌できるわけではありませんが、活動を抑制することでより治療の効果を高められると私は考えています。そのため、薬の服用開始の1週間前から摂取を開始してもらい、薬の服用期間が終わるまで継続してもらいます。
- Q治療の際、気をつけるべきことはありますか?
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A
抗生物質によって腸内の善玉菌も除菌してしまうため、薬の服用期間中はほとんどの方が下痢になります。しかし下痢を起こすのは良い兆候だと考えています。下痢にならないということは、体内の菌が薬に抵抗しているということ。当院でも治療開始前に下痢の症状が出ても不安視しないよう説明をしています。しかし服用中に見過ごしていけない症状もあります。特に発疹が出た場合、直ちに服用を中止しなければいけません。これはペニシリンに対するアレルギー反応で、服用を継続してしまうと最悪の場合アナフィラキシーショックを起こすことも。発疹に限らず、服用中に違和感を覚えたら必ず医師へ相談すべきですね。