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藤掛 彰史 院長の独自取材記事

蘇春館 藤掛内科

(可児市/顔戸駅)

最終更新日:2024/02/19

藤掛彰史院長 蘇春館 藤掛内科 main

静かな山間の町で蔵も残る通りに溶け込むように立つ「蘇春館 藤掛内科」。中に入るとほど良い広さで、きれいに磨き上げられた床に、壁紙も白く、清潔で明るい雰囲気が漂う。2023年1月より4代目院長に就任したのは、藤掛彰史先生。患者は高齢の人が多く、内科系全般を診療するが、藤掛院長の専門はパーキンソン病をはじめとする脳神経内科の疾患である。脳神経内科は脳や脊髄、神経、筋肉に関わる病気を診るが、「基本的に患者さんのお話をよく聞き、身体所見をとることが最も大事」と藤掛院長。内科の昔からの診療姿勢を今も大切にして患者と向き合う日々だ。藤掛院長の普段の心がけや専門分野について聞いた。

(取材日2022年3月30日/情報更新日2023年3月22日)

4代続く医院で地域住民に寄り添う

こちらは歴史ある医院と伺っています。

藤掛彰史院長 蘇春館 藤掛内科1

当院は曾祖父が開業し、私で4代目となります。その前は、当地で薬問屋や油問屋を営んでいたと聞いています。いずれにしても、先祖代々、この町で暮らしてきたのは間違いがないようです。「蘇春館」という屋号は祖父の時代から。「患者さんが病気を治して元気になられるように」という願いをこめて「蘇って春が来る」という名前にしたということです。古臭い名前だという意見もあるかもしれませんが、改号はせず、続いてきた歴史を大切にしたいと考えております。一方で建物については、数年前に前院長である父が内装をリフォームしていますので、今年は外装をきれいにしたいと考えていますね。

この地域や患者層について教えてください。

この辺りはもともと城下町で川湊が開かれるなど交通の要所として栄えました。昭和初期まで当院の前の通りは料亭や宿屋などが立ち並んで栄えていたそうです。その後、河川交通が廃れたことにより、町も衰退したと聞いております。地域の高齢化の影響もあり、患者さんは基本的にお年寄りが中心で、祖父の代から来てくださる100歳ぐらいの方もおられます。多くの方は高血圧や脂質異常症などの生活習慣病や、めまい、頭痛などで来られています。

先生のこれまでのご経歴をお聞かせください。

藤掛彰史院長 蘇春館 藤掛内科2

祖父も父も医師だったので、自分も医師になるものだと何となく思い込んで育ちました。小学校でも先生から「将来は医者になって継がないといけないな」と言われていましたから刷り込みのようなものですね(笑)。しかし今となってみれば、医師になって良かったな、と思っています。常に知識をアップデートし続けなくてはならないという面は大変ですが、大きなやりがい・喜びもあります。愛知医科大学卒業後は大学に残り、2年目からは大学院で学び、以後ずっと同大学病院で勤務して、2023年1月に当院院長に就任しました。愛知医科大学病院には現在も非常勤として行っており、当院が休診の木曜日に外来を担当しています。

脳神経内科専門の医師として問診と身体所見を重視

ご専門は脳神経内科だそうですが、どんな病気を診るのですか?

藤掛彰史院長 蘇春館 藤掛内科3

脳神経内科は、脳や脊髄、神経、筋肉に関わる病気を診る科です。頭痛やめまいといったよくある症状から、手足がしびれる、歩きにくい、ふらつくといった運動機能の障害までさまざまな症状が対象になります。具体的な病名としては、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳卒中、認知症、てんかん、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎などです。脳神経内科が扱う疾患の多くは完治をめざすのではなく、お薬を上手に使いながら、いかに生活の質を高く長く保っていくかを重点に置いた治療になるものが多いです。患者さんとは5年10年と長いお付き合いになりますので、信頼関係の構築が大事です。実は、診察室に入って来られる時の歩き方で病気の種類がわかることもあります。

脳神経内科を専門にされた理由は何ですか?

学生時代には脳神経内科はとっつきにくいイメージで試験も難しく、正直、専門にしようという気はありませんでした。しかし臨床研修で現場に立ち、さまざまな疾患の方を診ている中で、その複雑さや難しさ、それゆえの治療の奥深さに気づき興味を持ったのです。現代の医療は検査機器の発達もあり、検査重視になりがちな所があります。かつて有名な内科医の先生が「病気の8割は問診と所見で診断がつく。あとの2割は検査が必要」と言葉を残していらっしゃいます。自身の経験から、現代でも7対3ぐらいの割合であれば当てはまるのではないかと思っております。検査のみによって明確にわかる病気もありますが、反対に検査でもわからない病気もあるのが現実です。脳神経内科は、患者さんの話をよく聞いて、診て触れてという内科の伝統的な診療スタイルが強く残っており、そうした職人のような診療姿勢も魅力だと思っております。

患者との対話を大切にされているのですね。

藤掛彰史院長 蘇春館 藤掛内科4

はい。問診に重きを置き、所見をとるというスキルは、いわゆる総合診療科に近い要素だと思いますし、そうした診療スタイルとスキルは開業医であっても十分生かされると思っています。当院には長年勤務してくれている頼りになる看護師もおり、安心していただける診療環境が整っていると思っています。高価な機械はなくともできる範囲の診療をして、確定診断のために必要最低限な検査を、先進の設備のある病院に紹介して受けていただくという体制でやってていきたいと思っています。例えばパーキンソン病については、前勤務地の愛知医科大学病院にパーキンソン病総合治療センターがありますので、そちらと連携して治療を進めることが可能です。

地域医療と脳神経内科の専門医療を二本柱に

診察の中で気をつけておられることはありますか?

藤掛彰史院長 蘇春館 藤掛内科5

患者さんは、データや数字を出し理詰めの説明に納得される方や、細かいことよりは「大丈夫ですよ」という言葉が一番落ち着く方などさまざまな方がみえます。その方に合わせて言葉を選び、話し方に注意するようにしています。脳神経内科の病気は長く付き合っていくものなので、まず初めの一歩は、ここに通うのに慣れていただくことですね。特に認知症の方は通院の意味が理解できなかったり、前回来ていただいたことを忘れている方もおられるのですが、「楽しかった」「嫌だった」という気持ちは残るのです。ですから「行って良かった」「少し元気になれた」と感じていただけることをめざしています。通院に慣れていただくうちに、ご家族のことも含めてこちらが把握できるのでより円滑に個別の指導ができ、治療を計画的に進めることができるようになっていきます。

読者へのメッセージをお願いします。

めまいや頭痛、体の痛みなども脳神経内科の守備範囲です。結局は内耳に原因があったり、ヘルニアが原因だったりと、耳鼻咽喉科や整形外科など他科の疾患の場合もあるかもしれませんが、その場合は適切な科にご紹介させていただきます。まずは戸口としてお気軽に相談のつもりでいらしていただければと思います。また、脳神経内科の病気はざまざまありますが、認知症や変性疾患の予防としては最も重要なのは習慣的に運動をしていただくことだったりします。また、糖尿病や歯周病も脳の機能低下につながるという報告もありますから、若い頃から健康的な生活を送っていただくといいですね。

今後の展望についてお聞かせください。

藤掛彰史院長 蘇春館 藤掛内科6

繰り返しになりますが、良い意味で、古いスタイルの診療を続けたいですね。曾祖父の時代から地域に根づいてきた医院ですので、地域の患者さんを大事にして、いつでも通いやすい「かかりつけ医」のような存在でありたいです。一方で脳神経内科専門の医師として、対象の病気の方には適した治療を提供し、必要な場合には病院での治療に速やかにつなぐ中継点のようなゲートウェイの役割を担うことも大切だと思っています。実は岐阜県は人口あたりの脳神経内科専門の医師が最も少ない県ともいわれています。そうした方々に自分のスキルや経験を少しでも還元し、生かしていけたらと思っています。

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