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佐藤 勇 院長の独自取材記事

よいこの小児科さとう

(新潟市中央区/新潟駅)

最終更新日:2022/03/09

佐藤勇院長 よいこの小児科さとう main

新潟市中央区神道寺1丁目。大型スーパーの隣にある「よいこの小児科さとう」は、1997年開業。車場は20台分。保育園をイメージした建物は天井が高く、カラフルでくつろげる雰囲気。「病児保育室・よいこのもり」を併設しているのが大きな特徴だ。佐藤勇院長は、さまざまな勉強会やイベント、産前・産後の取り組みなどを通じて、市内の保護者からも知られた存在だ。「小児科の医師として常に子どもの味方でありたい。そのためには親御さんをサポートすることも大切」という信念のもと、地域で親も子も安心して過ごせる環境づくりにも注力してきた。力強い言葉と優しいまなざしが印象的な佐藤院長に、診療ポリシーや来院者への思いなどを詳しく聞いた。

(取材日2022年2月1日)

子どもだけでなく保護者のケアも大切に

開業当初から座右の銘としている言葉があるそうですね?

佐藤勇院長 よいこの小児科さとう1

そうなんです。当院は1997年に開業した医院ですが、開業してからずっと、「子どもの主治医はお母さんです」という看板を掲げてきました。これは、病気を治療するのは医師の役目ですが、お母さんだからわかることがあるというメッセージなんです。昔、インフルエンザによる脳炎が毎年のように新潟で出ていた時があったのですが、その時、「どこかがおかしいんです」とお子さんを連れて来られた親御さんがいました。念のためお子さんに入院してもらい様子を見ていると、突然けいれんが止まらなくなり……結果、脳炎だったということがあったんです。親御さんが医学所見以上のことに早く気がついたことで速やかな処置につながり、お子さんも大事に至らずに済みました。この時、親は本当にすごいなと強く思い、以来「子どもの主治医はお母さんです」を座右の銘にして日々の診療にあたっています。

実際の診療で大切にしていることや工夫点はどのようなことですか?

そうですね。まずは、親御さんにお子さんの状態を確認してもらうことを大切にしています。例えば、お子さんに口内炎ができた場合、親御さんにもお子さんの口腔内を一緒に見てもらったり、超音波検査を必要とする症状の際には実際に検査画像を見てもらったりと工夫しています。親御さんたちにある不安や違和感をなるべくすぐに解消できるよう、あらかじめ診断する際には証拠をきちんと示し、納得してもらえるよう診療を心がけています。勤務医時代は画像診断に多く関わりましたが、画像診断技術も格段に進歩しています。そういった医学の進歩や技術の発展を生かし、親御さんとも互いに情報を共有しながら、診断・治療を進めていくようにしています。また、来院するお子さんや親御さんに安心感を与えられるような空間にしたいと考え、院内を保育園のような造りにしました。カラフルな装飾と天井の高い待合室も特徴ですね。

健診の際には親御さんの緊張が伝わってくるとか?

佐藤勇院長 よいこの小児科さとう2

そうですね。乳児の3ヵ月健診を行っていますが、みんな、自分の子は問題ないかどうかと試験を受けるような気持ちで健診に来ているように思います。「わが子は標準であってほしい。標準でなかったらどうしよう。」という緊張がとてもよく伝わってくるんですよ。私は、「そうでなくていいんだよ」と伝えたいですね。もともと子どもは生きる力を持って生まれてきています。細かい記録を取ったり標準体重と比較することよりも、目の前のわが子の笑顔を見て、「いとおしい」という気持ちを育てるほうが大事だと思っているんです。もっとお母さんたちに子育てを楽しんでもらえたらと常に考え、そのために自分ができることでサポートしたいと思っています。

先生のお優しい表情と心強いお言葉に励まされる親御さんも多いのではないでしょうか。

ありがとうございます。来院される方に、そういうふうに思ってもらえたらうれしいです。私は、診療をする上で、病気を治療する場である前に安心してもらう場であることが大切と考えています。風邪など、病気の多くは自然に治癒するものかもしれませんが、親御さんはとても不安な思いで来院します。心配ごとの確認をして、そこを解決して差し上げることを心がけています。そのためには、親御さんには何が心配なのかを話してほしいですね。例えば、「髄膜炎を患った子を知っていて、自分の子もただの風邪でなかったらと心配になった」など、抱えている不安ごとを些細なことでもできるだけ具体的に伝えてもらえたらありがたいですね。その上で、お子さんの症状がどのくらいで収まりそうか予測し、悪い病気ではないと伝えることで安心していただきたいです。

育児支援が必要と病児保育室の併設を決意

診断書や登校許可書などの作成も対応されているそうですね。

佐藤勇院長 よいこの小児科さとう3

例えば、インフルエンザなどの学校伝染病に指定されている疾患では、登園・登校許可証など出席停止を解除する医師の連絡証を求められます。医療側と教育側の連絡として重要なことですが、診療の延長上で書くべき書類と考えています。ですから、私は負担を患者さん側に求めることに大きな違和感があります。負担を理由に治癒判定を受けなかったり、検診で異常を指摘されても受診しないなど、子どもたちが不利益を被ることのないよう強く願っています。

併設している「病児保育室・よいこのもり」について教えてください。

佐藤勇院長 よいこの小児科さとう4

小児科の医師は子どもの味方、代弁者でなければいけないという面もあり、時には親御さんと意見が対立することもあります。事情があり保育園に20時、21時まで居てほしいと思っても、子どもにとって良いことではないでしょう。親の支援も必要と考えたのがきっかけです。この辺りは祖父母と離れて住んでおり支援を受けられない家庭も多い。お子さんが病気になるとやむなく解熱剤を飲ませて仕事に行く人がいるという現実もありました。子どもたちに良い環境をと、開業3年目の2000年に開園しました。市内の6ヵ月から小学6年までの病気回復期にあるお子さんが対象です。当時は共働き家庭も今より少なく、始めたばかりの取り組みだったため認知度も低い。「病気の小さな子を預かるなんて」「親が看るべき」などの批判もありました。理解を深めてもらおうと保育士向けに勉強会を開くことから始めましたね。

子どもが成長して再び受診してくれるのは大きな喜び

先生が小児科の医師をめざした理由を教えてください。

佐藤勇院長 よいこの小児科さとう5

大学2年の時、脳性麻痺を患う友人ができ、その彼と共同生活を送った影響が大きいです。40年も前ですから段差もいたるところにあり、障害者は町に出ることもままならないと知り、衝撃を受けました。その経験から、子どもたちの教育に関わりたいと思うようになったのです。当時は養護学校が義務化され、普通学級と養護学級を分けるという考え方で、小児科もそんなに細分化されていなかった。先輩が循環器、心臓病を専門に診ていて、「子どもに長く寄り添っていきたい」と相談したところ、できると。そこで大学で循環器、心臓病を勉強するのですが、それがスタートラインでした。浪人中に父が亡くなったことも思いを一層強くしました。突然死だったのですが、母が「悔しい」と言ったのが忘れられず、そういう思いをさせたくないと思ったんです。

医師になられてからも、さまざまな出会いがあったそうですね。

診療をしながら、心身障害児施設のスタッフや先生と一緒に、障害者参加のイベントを企画しました。北欧の障害者のプロのロックバンドを日本にお招きし、新潟でも千人規模のライブを開催しました。大きな手ごたえを感じましたし、さまざまな職種の人と知り合うことができました。仲間が広がり、この先も継続していこうと、映画上映会や講演会などを毎年企画しました。

開業医となって良かったと感じるのはどんな時ですか?

佐藤勇院長 よいこの小児科さとう6

病院での勤務が3年たった頃に、子育て支援もしていきたいと思ったのが開業のきっかけでしたが、当時は勤務医から役職に就き、そろそろ開業をというのが一般的だったので、若いほうでした。手ごたえを感じたことはいろいろありますが、開業して24年、自分が診た子たちが親になってお子さんを連れて来てくれる。そういうお付き合いができているのは、小児科の医師冥利に尽きますね。スタッフにも恵まれました。みんな優秀で自主的に動いてくれますし、15年、20年と長く勤務している人も多く、安心して任せられます。私はかなりラクしていますね(笑)。

最後に今後の展望についてお聞かせください。

医療関係以外の仲間などとも協力し、地域で親御さんもお子さんも安心して過ごせる環境づくりの力になれるよう、引き続き努めていきたいですね。小児の在宅医療にも挑戦できたらと考えています。

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