子宮筋腫や子宮内膜症治療の選択肢
傷痕が目立たない腹腔鏡手術
内出医院
(横須賀市/馬堀海岸駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
生理痛や過多月経の原因になり、不妊にも関係するとされる子宮筋腫や子宮内膜症。子宮頸がんなどの悪性腫瘍とは異なり、基本的には命に関わらない良性疾患だが、それだけに診断の結果、手術を勧められても決断できない人も少なくないようだ。そこで、婦人科疾患の腹腔鏡手術に豊富な経験を持つ「内出医院」内出一郎院長に、子宮筋腫や子宮内膜症の手術について取材した。内出院長は、同院での診療に加え、今も提携する病院でオペを手がける腹腔鏡手術のスペシャリスト。また強い生理痛を引き起こす子宮内膜症に対しては手術以外の治療にも注力。「私は手術を多く手がけてきたからこそ、安易には手術を勧めません。腹腔鏡手術を含め、手術のリスクやデメリットもよく知った上で選択してください」という内出院長に聞いた。
(取材日2021年8月4日)
目次
手術のメリットやデメリット、症状、年齢、妊娠希望をよく考え、治療法の選択は慎重に
- Q子宮筋腫や子宮内膜症は、手術したほうがよいのですか?
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A
婦人科の病気には、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣腫瘍などがあります。子宮頸がんや子宮体がん、卵巣がんのような悪性の卵巣腫瘍は何よりもがん病巣を速やかに取り除くことが必要ですから、ガイドラインに則り、手術や抗がん剤治療、放射線治療などを行います。それに対して、子宮筋腫や子宮内膜症は良性の病気ですから、どのような治療を行うかは、患者さん個々の症状や年齢、妊娠を希望するかどうかなどの条件によります。手術には、出血や、腸や尿管などほかの臓器を傷つけるリスクもあります。病気による痛みや生活の支障と、治療のリスク、どちらを重視するかはケースバイケースで、一概には結論が出せないのです。
- Qでは、子宮筋腫はどのような場合に手術するのですか?
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A
子宮筋腫は多くの人が持っていますが、症状がない場合、治療は必要ありません。しかし筋腫が大きくなり、子宮の内側を圧迫するようになると過多月経や生理痛が起こり、貧血につながることもあります。外側に飛び出て膀胱を刺激すると頻尿、直腸を圧迫すると便秘になることもあります。子宮筋腫の症状があり、それによる生活への支障が大きい場合は手術などの治療を検討します。手術には子宮筋腫核出術と、子宮全摘術もしくは亜全摘術(腟上部切断術)があります。前者の場合、ほぼ100%の確率で子宮筋腫は再発すると考えます。後者は根治を目的とした治療ですが、妊娠できなくなります。よって治療方針の選択は総合的な判断が求められます。
- Q子宮内膜症の治療についても教えてください。
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A
子宮内膜症は、子宮内膜や類似した組織が、子宮の内側以外の場所で発生し発育する病気です。卵巣にできて大きくなるとチョコレート嚢胞となることもあります。病変が周囲の組織と癒着を起こして生理痛や慢性骨盤痛などの痛みをもたらしたり、不妊の原因になったりするといわれていますが、原因や発症メカニズムがまだ解明されておらず、根治も難しい病気です。治療には薬物療法と手術があり、チョコレート嚢胞などの病巣部がはっきりしている場合は手術を検討します。妊娠希望の場合は病巣部のみを切除して子宮や卵巣を残す手術を選択し、妊娠希望がない場合には原則患側の卵巣・卵管を切除します。
- Q 腹腔鏡手術とは、どのような手術ですか?
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A
腹腔鏡手術は、おなかに開けた小さな穴から、鉗子(かんし)と呼ばれる道具を中に入れ、開腹手術と同じ操作をおなかの中だけで行う高度な技術を要する手術です。開腹手術よりも簡単なイメージがありますが、実はその反対で、技術的にはより難しい手術だと思います。腹腔鏡手術による傷は小さくてすみますが、その分手術時間が長くなり手術の出血が増えることでトータルとして体への負担は大きくなる可能性もあります。開腹手術で出血量を少なくし、手術時間を短縮させることで、体への負担は少なくなる場合もあります。そのため、サイズの大きな筋腫や筋腫が多発している症例では、開腹手術をお勧めすることもあります。
- Q入院期間や術後の痛みについて教えてください。
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A
腹腔鏡手術の入院期間は施設によりますが、5日から6日ぐらい。一方、開腹手術は1週間から10日ぐらいです。腹腔鏡手術では傷痕が小さいので、傷の痛みは開腹手術より軽い傾向があり、傷痕も目立ちにくいです。しかし、開腹手術も腹腔鏡手術も筋腫を切除した傷の痛みが出ることはありますし、筋腫が大きくて子宮が伸びきっていた場合は収縮痛が出たりします。術後は、どちらの手術でも癒着や血栓症のような合併症を減らすために、なるべく早く病床から離れることが勧められます。当院では、希望される方は提携する大森赤十字病院に紹介して、私が腹腔鏡手術を行っています。術前のホルモン治療や術後管理は当院で行います。