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村島 善也 院長の独自取材記事

メンタルクリニック葛西

(江戸川区/葛西駅)

最終更新日:2024/05/08

村島善也院長 メンタルクリニック葛西 main

葛西駅から徒歩3分の場所にあるビルの2階にある「メンタルクリニック葛西」は、「予約は不要。診療情報提供書がなくても、来た患者さんはすべて診る」という院長の村島善也先生の方針のもと、受診のハードルを下げて多くの患者を受け入れている。村島院長の診療は水曜の午前中と木曜で、あとの曜日や時間帯には別の医師が診療を担当している。「私が生きている限り患者さんに寄り添い続けたい」という村島院長に、クリニックの特徴や精神科医をめざしたきっかけ、診療で大切にしていることなどをじっくり聞いた。

(取材日2024年4月3日)

「来院した患者は全員診る」をポリシーに

クリニックの特徴について教えてください。

村島善也院長 メンタルクリニック葛西1

いわゆる「駅前のクリニック」ですね。精神病院との提携をしていない地元密着型のクリニックで、精神科疾患だけでなく発達障害や依存症など、幅広い疾患に対応しています。「来院した患者さんはとにかく全員診る」のがポリシーで、予約制ではなく、新患の人数制限もしていません。今、新規で精神科にかかろうとすると1ヵ月待ちとか、発達障害のお子さんだと半年待ちという話をよく聞くのですが、当クリニックでは、例えどんなに短時間でも、受診したいと思った時に受診できるようにしています。また、私は院長ではありますが水曜の午前中と木曜のみこちらで診療していて、他の時間帯は別の医師が担当しています。曜日や午前・午後で医師が変わるのも当クリニックの特徴ですね。

曜日によって先生が変わる良さはどんなところにありますか?

患者さんと医師とにも「相性」があると思うんです。すべての患者さんにとって良い医師、というのは存在しません。精神科は特にその傾向が強いと思っていて、主治医が変わったことで治療がスムーズに進み始めたり、またその逆だったりすることは臨床でもよくあるんです。「この先生と合わない」と思ったら別の曜日に来てみて、別の医師に会ってみることができるのがこの体制のメリットだと思います。自分が「合わない」と感じている医師と我慢しながら会って、うまくいくわけがないですよね。今、私のところに来ている患者さんは「村島先生が良い」と言う人たちですし、逆に「先生を変えたい」「別のところにかかりたい」と言う患者さんがいたら、私もすぐに紹介状を書きます。

どのような相談、どういった症状で来院される方が多いのですか?

村島善也院長 メンタルクリニック葛西2

さまざまな疾患の方が来ていますが、感情障害を持つ患者さんが多いでしょうか。年齢層は10代のお子さんから80代のお年寄りまで幅広いです。あとは双極性障害ですね。現代社会ではうつ病が多いといわれていますが、うつ病と診断されている人の半分くらいはうつ病ではなく双極性障害ではないかと思っています。他院でうつ病の治療を続けていたけど改善が見られなかったというケースでは、診断そのものを疑うようにしていますね。認知症なども、アルツハイマー型認知症と診断されていながら、実際はそうではない方が多いと感じています。他の疾患もそうですが、薬を出すだけでなく、本人が生きやすくなるような環境調整などもアドバイスしています。

「一番わからないものに取り組みたい」と精神科の道へ

精神科というと、通院が長期間に及ぶイメージがあります。

村島善也院長 メンタルクリニック葛西3

そうですね。しかし、それは決して「時間をかけないと良くならない」わけではないんです。「治療が終わったらそれでおしまいではなく、治療後もその状態を長く維持できるようにしていかないといけない」ということです。急性期の治療と維持期の治療は違いますし、患者さんの発達段階や年齢・環境などによっても関わり方が異なってきますので。特に発達障害などは、小児から大人へ至る連続性の中で診なければなりません。当クリニックは、私が小児神経を専門としていることもあり、発達障害のお子さんを積極的に受け入れています。発達障害は、早い段階であれば、薬を使わず環境の調整や心理社会的療法で治療を行っていきますので、疑いがある場合はできるだけ早く相談にいらしてください。

先生が精神科医を志したきっかけや動機について教えてください。

「一番わからないもの」に取り組みたかったからです。私が学んでいた東京大学は当時紛争中で卒業しても東京大学の医局には入局できなかったので、東京大学医学部附属脳研究施設に進学し、その後精神医学専門の総合研究所である「東京都精神医学総合研究所」に進みました。私の考え方や治療の進め方が、基礎・発症メカニズムに基づいて構築されているのは、ここでの経験が大きいと思います。先輩研究者から「臨床から離れるな」と言われていましたので、日々研究を続けながらも常に臨床にも身を置いてきました。2011年にこの研究所が東京都医学総合研究所に統合されたのを機に研究からは引退し、今は完全な臨床家です。

どんな時に医師としてのやりがいを感じますか?

村島善也院長 メンタルクリニック葛西4

私が持つ病態の知識や薬理学が治療に役立ち、患者さんから感謝していただけることですね。例えば、すでに何らかの診断のもと治療を受けていても改善につながらない場合には別の疾患である可能性を考えます。また、受診された理由とは関係がない部分でも、身体疾患が合併した状態の患者さんにおいては気になる動きや症状があれば検査を促すようにしています。経験をもとに気づいたことを見逃さず、適切な診断や適切な治療につなげたいですね。

どんな相手にも正直でいたい。希望を与え続けたい

患者さんとの向き合い方で意識されていることを教えてください。

村島善也院長 メンタルクリニック葛西5

正直でいたいと思います。「子どもだから理解できないだろう」「幻聴がひどいから説明がわからないかも」ではなく、診断や疾患のメカニズム、治療方針など、全部説明するようにしています。双極性障害などは「治癒が見込める病気ですからね」ということも言いますし、そうでない疾患の時も、失われた部分だけではなく残された部分を伝えたり、認知症などは「治療ではないけれど、住みやすくする方法、楽に生きるための方法はたくさんあります」と伝えたりします。治療についても、例えば統合失調症のLAI(持続性抗精神病薬)注射などは看護師でもできますが、私は自分でやるようにしています。

今後の展望について教えてください。

このクリニックの特徴である「予約は不要。診療情報提供書がなくても、来た患者さんはすべて診る」診療体制をずっと続けていきたいです。私が生きている限りやめるつもりはありません。少し前に古希を迎えましたが、今後もできるだけ長く現場に立ち続けたいので、自分自身のヘルスケアも大事にしています。ジムでのトレーニングは30代から毎日続けていますし、朝食と夕食は毎日自炊です。やはり運動と食事って大事なんですよ。ジムでは、プールでのウォーキングとマシントレーニングをしています。自炊では、味つけよりも食材にこだわっていて、野菜も契約農家から直接買って、できるだけ手を加えずシンプルに調理しています。「ありのままの良さを引き出す」のは、料理でも精神科診療でも大切にしたいですね。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

村島善也院長 メンタルクリニック葛西6

19世紀の終わりから20世紀半ばにかけて活躍したロシアを代表するある作曲家は、ある時期、精神を病んで作曲ができなくなりました。しかし、ニコライ・ダーリという精神科医に出会って事態は変わり、その後、彼自身の代表曲ともいわれるピアノ協奏曲を書き上げました。治療といっても当時は薬もなく、心理社会療法くらいしか方法はなかった時代です。何が言いたいかというと、どうして再び作曲できるようになったかを考えた時、ダーリは「私があなたの作品を理解し支持します」と寄り添い、希望を与えたことが一番のポイントだったと思うんです。世の中にはたくさんの疾患があり、治療できるものもできないものもあります。しかし、最も大切なのは希望を持つこと、自分の人生に絶望しないことです。私も常に患者さんに寄り添い、希望を与える存在でいたいと思っています。

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