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立川 麻也子 先生の独自取材記事

ねりま西クリニック

(練馬区/和光市駅)

最終更新日:2024/05/14

立川麻也子先生 ねりま西クリニック main

練馬エリアでさまざまな専門領域を持つ約30人の医師が在宅診療に取り組んでいる「ねりま西クリニック」。耳鼻咽喉科を専門とする立川麻也子先生も、熱意を持って在宅診療に取り組んでいるメンバーの一人だ。聴覚や嚥下の問題を抱えがちな高齢者も多いため、立川先生の果たす役割は大きい。また耳鼻咽喉科では頭頸部外科の修練を行うことから、がん患者と接する機会が多いという。さまざまな症例に対して、これまで培ってきた確かな技術と温かな心で一人ひとりと丁寧に向き合う立川先生に、同院に関わるようになったきっかけや、診療において大切にしていることなどを詳しく教えてもらった。

(取材日2024年4月18日)

耳鼻咽喉科を専門に、在宅診療に注力

まず、医師を志したきっかけから教えてください。

立川麻也子先生 ねりま西クリニック1

中学生時代は語学が好きで、アメリカの高校へ留学したいと考えたこともありました。そのことを医師である父に相談したところ、「何か一つ強みを持ってからでも留学は遅くないよ」とアドバイスを受け、「確かにそうかもしれない」と思ったんです。丁度その頃、アメリカのメディカルドラマにも夢中になっていました。シカゴの病院にある緊急救命室で活躍する医師たちが主人公のドラマで、医療を通じて人種や国籍を問わずあらゆる人々が人生の暗いところから明るいところへ引き上げられていく様子が描かれていました。このドラマに心惹かれたことが、医師をめざした理由の一つかもしれません。

耳鼻咽喉科を専門に選んだのはなぜでしょうか。

医師として務めるのであれば、女性だけでも男性だけでも子どもだけでもなく、すべての人を診たいという思いがまずありました。そして手術も好きだったので外科的なこともできる診療科が良い、という理由から耳鼻咽喉科を選んだのです。耳鼻咽喉科というと花粉症や中耳炎をイメージする方が多いかもしれません。しかし実際の耳鼻咽喉科の医師は、頭頸部外科という首から上の外科に関する修練も積んでいます。そのため例えば、がんで咽頭を摘出した患者さんが呼吸できるように、気管孔の形成などに対応することも。実際に私も、東京女子医科大学病院では数多くのがんの患者さんを担当していました。

在宅診療に興味を持つようになった理由は何ですか。

立川麻也子先生 ねりま西クリニック2

末期がんの患者さんの中には、終末期を自宅で過ごすことを希望する方もいらっしゃいます。ただ当時は今のように在宅診療が充実していない時代で、十分な在宅ケアが受けられずに予後が短くなってしまうケースも多々あり、ずっと気がかりだったんです。そんな中、ご自宅にお返しした患者さんが心肺停止で病院に運び込まれてきたんです。しかもその時は私の結納の日で……。日本髪もほどかずに病院にかけつけましたが、最期には間に合いませんでした。その時から「いつかは在宅診療に取り組もう」と心に決めたんです。その後2人の子どもを出産しましたが、子育てしながらとなると手術に携わることもなかなかできず、やりがいを探すようにもなりました。そうして新しい働き方を模索していたところ、当院にご縁をいただき現在に至ります。

患者と家族の心のケアにも全力な、細やかな在宅診療

こちらではどのような診療を担当していますか。

立川麻也子先生 ねりま西クリニック3

当院は外来も設けてあるため、たまにそちらへ協力しに行くこともありますが、ほぼ100%在宅診療にあたる日々です。だいたい午前に6人、午後に6人というペースで近隣エリアを回っています。患者さんのご自宅に訪問する際のチームは医師と看護師、コーディネーター、ドライバーの4人というのが基本ですね。当院の在宅診療には循環器内科や消化器内科など、さまざまな専門性を持つ医師が30人ほど携わっています。その中で私は、これまでの経験を生かした外科的な処置を強みとしているんですよ。私の在宅診療用のバッグはスタッフたちが「立川バッグ」と呼ぶ少し特殊な内容で、電気メスも含めた手術セットがすぐに取り出せるようになっています。切り傷や褥瘡などの小手術はすぐに行うようにしていますね。一方、服薬に関しては繊細な管理も必要なので、内科の先生に相談するなど、チーム医療も大切にしています。

やはり大学病院に勤務していた頃とはだいぶ違いますか。

いいえ。在宅診療というのは大学病院などの大規模病院で行われる診療の延長線上にあると思っています。患者さんが大規模病院に入院している時から、「在宅になった時どうなるか」と想像しながら治療していくことは大事でしょう。当院には大規模病院にも籍を置いている医師がたくさんいますが、「もっと早く在宅診療に携われば良かった」と言う人も多いですね。在宅診療というと内科のイメージで、他科の先生は苦手意識がある方もいるかもしれませんが、実際はどんな経験も必ず役に立つと思っています。特に耳鼻咽喉科は高齢に伴う難聴や嚥下機能低下などにも対応できるので、これからますます必要とされるのではないでしょうか。

診療にあたって大事にしていることは何ですか。

立川麻也子先生 ねりま西クリニック4

わかりやすく生活指導をすることを大切にしています。定期的に内視鏡下嚥下機能検査を行い、適切なメニュー、食事をする際の姿勢、食事の与え方など、正しい知識を介助する方に伝えるようにしています。また現在、すべてのがんの患者さんに対するファーストタッチは私が行っています。予後が長いと予測される場合は専門とする先生にバトンタッチしますが、そのまま看取りまでするケースも考えられます。その際、麻薬の調整なども行いますが、ご本人とご家族の心のケアも大事にしています。緩和ケアは、ご本人の身体の苦痛を軽減するだけでは不十分だと考えてのことです。ご本人もご家族も納得して、苦しまないような人生最後の着陸点を探すお手伝いをさせていただければと思っています。

子育て世代の介護の悩みにも近い目線で相談に応じる

今後の展望についてお聞かせください。

立川麻也子先生 ねりま西クリニック5

これまでのがん治療では、手の施しようがない状態に至ったとき、専用の医療機関へ転院するというのが一般的な流れでした。しかし転院先の空きがなくて、何ヵ月も待つうちに亡くなってしまう人も珍しくなかったんです。今後は、終末期でも家に帰れる環境を整えて、ご本人もご家族もサポートしていくような在宅診療にますます取り組むことができればと思っています。一方で、訪問先には寝たきりの方ばかりではなく、身体も精神もまだまだお元気な方が大勢いらっしゃいますから、すべての方々が充実した毎日を送れる手助けをしていきたいです。

お忙しい毎日ですがリフレッシュできる趣味などはありますか。

トレーニングが趣味なのですが、運動後に体が冷えることが気になってました。そこで始めたのが身体を温める「温活」です。お湯の代わりにひのきのおがくずを敷き詰めた酵素風呂に漬かっています。筋肉はやわらかくなり、ぐっすり眠れるようになったと感じていますね。また長女がピアノを習っているので、休日は家族でクラシックコンサートに出かけることもあります。結納の日、異業者であるにも関わらず患者さんの緊急事態に快く送り出してくれた夫には今でも感謝していますし、大切なパートナーです。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

立川麻也子先生 ねりま西クリニック6

子育てに忙しい世代で、そろそろ介護問題に直面する方もいるのではないでしょうか。当院には医師と看護師、コーディネーターが在籍しており、いずれも30・40代が多く、近い目線でお話を伺えます。介護は決して「自分一人でやる」と抱え込まないでください。小さなお悩みでも構わないので、お手伝いするきっかけをいただければと思っています。当院の在宅診療を利用したとしても、これまでのかかりつけの先生にも変わらず受診していただいて問題ありませんし、気になることは何でもご相談ください。まずは一回、ドアをノックしていただけるのをお待ちしています。

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