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伊藤 洪志 所長の独自取材記事

社会医療法人社団健友会 川島診療所

(中野区/中野新橋駅)

最終更新日:2024/04/12

伊藤洪志所長 社会医療法人社団健友会 川島診療所 main

中野新橋駅から続く柳通りを歩くこと約8分の場所にあるのが、「川島診療所」だ。懐かしさを覚えるような雰囲気の同診療所は戦後、地域の住民が中心となり働く人々のために開設。以来、70年以上にわたって地域の人々の健康に寄り添い、支えてきた。現在は、主に総合的な内科の外来診療と訪問診療を提供。同時に、患者が社会的な問題を抱えていれば、その相談にも積極的に応じ、解決をサポートすることにも力を入れている。「どこに何を相談すれば良いのかわからないというところから、相談に来ていただきたいですね」と話す伊藤洪志所長に、診療所のことや地域の医療や介護、福祉などに対する取り組みなどを聞いた。

(取材日2024年4月3日)

無差別平等の医療や介護、福祉の提供をめざす

最初に診療所について紹介していただけますか?

伊藤洪志所長 社会医療法人社団健友会 川島診療所1

当診療所は、個人の医師が開業しているクリニックとは少し違います。健友会という社会医療法人社団があり、その中の一つの事業支所ということで開設していて、私はその所長を務めています。診療上の基本的な役割は、大きく外来診療と訪問診療の2つがありますが、一般的な個人のクリニックと比べると訪問診療の比率が大きいのではないかと思います。毎日、午前ないしは午後に訪問診療を行っていて、必要な時には24時間対応しているのが特徴の一つかなと思います。 また、例えば循環器や糖尿病が専門というように開業しているのではなく、外来には各科の専門の医師が入ってはいますが、すべての医師が総合診療的に幅広く対応していて、必要なら専門的な診療もできるのが、もう一つの特徴です。

総合的な診療のニーズは高いのですか?

特に高齢者は、複数の疾患を持っていることが少なくありません。いわゆる多疾患の併存状態ですが、例えば心臓に病気もあって、糖尿病もあって、眼科にも通って、膝が痛いから整形外科にも通って、最近では物忘れも出てきたので大学病院の認知症の相談にも通っている。そのような方が多いのです。このように、いろいろな診療科にかかっている患者さんでも、総合的に診療すれば、それらのことをまとめて管理ができます。それは、外来診療でも訪問診療でも一緒ですが、当診療所ではその人の医学的な管理のすべてを行うことができるよう努めています。その上で、当診療所の診療を担当する医師は、それぞれアレルギー、糖尿病、循環器、呼吸器を専門としています。

福祉的な面にも力を入れていると伺いました。

伊藤洪志所長 社会医療法人社団健友会 川島診療所2

この地域に限りませんが、どこにも通院先がなかったり、社会的、あるいは経済的な問題も抱えていたりして、困っている人は結構いるんですね。そのような人がいることを行政や地域包括支援センターが把握して、その人をどこの医療機関に紹介すればいいのかわからないと相談をされることもあります。これまでにほとんど医療機関にかかったことがなくて、いよいよ生活が困難な状況になってしまったような場合です。そういうときに依頼があれば、ここに連れてきてもらったり、臨時で往診に行ったりもしています。法人の理念に「無差別平等の医療」とありますが、当診療所ではそういった考えで、依頼があれば積極的に引き受けていますし、職員もそういう部分への意識は高いと思います。

訪問診療は、グループ内で連携して提供

外来診療は、どのようなスタンスで行っているのですか?

伊藤洪志所長 社会医療法人社団健友会 川島診療所3

先ほど、複数の疾患を持っている患者さんも少なくないと話しました。確かに、従来のように高血圧などの慢性疾患を見つけて、それを管理してくことはとても大事なことです。ですが、それだけでは患者さんへのアプローチは弱いのかなとも思うのです。加えて、先ほど話したような困っている人。困り事を誰に相談をすればわからないような場合に、よく「よろず相談」とも言いますが、なんでも相談できるような機能を外来にも持たせたほうが良いと思っています。でも、それを実際に行うのは簡単ではなくて、医師だけではなく、特に看護師の力量が大切です。看護師は、医師の指示だけで動くのではなくて、率先して患者さんの相談に乗る。そして、生活のことなど診察中には気づかなかったようなことに気づいてもらって、必要なら何かしら介入できるようにしたいのです。まだ十分ではありませんが、外来診療でそういうことができるよう心がけています。

無料低額診療にも取り組んでいるのですね。

患者さんが抱えている問題にもいろいろありますが、その中で一番のハードルになるのがお金のことです。そもそもお金が払えないとなると、診療が受けられなくなってしまいます。そして、お金の問題はすぐに解決しないことが多くて、もし本当に困窮していて医療が受けられないとなると、生活保護を受ける必要があります。生活保護が必要だと考えられる場合には当然、受給できるように促す支援もしていますが、現実には生活保護までではないけど治療を受けるお金はないような、その間の人もたくさんいるんですね。誰でも必要な医療が受けられるようにということで、無料低額診療を届け出て行っています。

訪問診療についても教えていただけますか?

伊藤洪志所長 社会医療法人社団健友会 川島診療所4

訪問診療では、通院が難しくなった多疾患併存の高齢の方や、がんのターミナルケアの方を主に対応しています。あとは、社会参加が難しいということで、脳卒中などの後遺症で体が不自由な方の自宅へ訪問していて、お看取りにも対応しています。当診療所の訪問診療の特徴としては、同じ法人内に中野共立病院があって、連携して対応できることが挙げられます。近隣には、ほかにも大きな基幹病院もあって入院をお願いすることも当然ありますが、圧迫骨折など手術が必要ない場合や、診断がついてないけれど具合が悪い時などは、なかなか受け入れ先が見つからないこともあります。そのような場合でも、中野共立病院なら調整の相談がしやすく、原因がわからない時のいろいろな検査もしてもらえるなど、適切な対応が望めます。法人内の病院にバックベッド(後方支援病床)があることのメリットは、大きいと思います。

どのようなことでも、まずは相談に来てほしい

診療の際に心がけていることを教えてください。

伊藤洪志所長 社会医療法人社団健友会 川島診療所5

まずは、断らないということが基本だと思っています。私に解決できるかわからないような問題の相談でも、実際にできている、できていないは別にして、まずは断らずに受けるということを大切にしています。それを心がけていないと、忙しさや、専門外であることなどを理由にして、そのうち何も対応できなくなってしまうと思うのです。ただ、実際になかなかうまくいってない部分もあります。当診療所で相談ができることが知られていなかったり、相談したけど望んだような結果が得られなかったなど、理由はいろいろあると思います。ですが、当診療所には社会福祉士がいて、居宅介護支援事業所も併設していますし、地域包括支援センターやケアマネジャー、訪問看護や介護施設などとも連携して、少しでも困っている人の力になりたいと考えています。

話は変わりますが、先生はなぜ医師を志したのですか?

私が医師を志したのは、高校生の時に家族の訪問診療やデイサービスの現場に立ち会ったことがきっかけです。当時の私は、訪問診療のことはよく知りませんでしたし、医学部での実習でも特に印象的でした。普段、自分が何げなく生活をしている中で、高齢者や病気の人、寝たきりの人がいるということを、強く意識するようになりましたね。私は、これまでも訪問診療に携わってきましたが、病院にやって来る人だけを診るのが医療ではありませんし、先ほども話したように、世の中には経済的、社会的な問題を抱えて簡単に病院には来られない人もいます。そういった人も見捨てないことを理念にしていますし、私もそのことを大切にしながら、外来や訪問での診療に取り組んでいます。

最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

伊藤洪志所長 社会医療法人社団健友会 川島診療所6

繰り返しになりますが、なんでも相談を受けますという姿勢を維持していくこと。それを、やっていますと言っているだけではなくて、実際に続けていくことが大事だと考えています。そして、皆さまには困っていることがあれば、まずはお話を聞きますので、相談に来てください。当院には社会福祉士もいますので、話をお伺いした上で必要であれば連携して、いろいろな社会資源も活用して、お困りごとの解決の助けになりたいと考えています。どこに何を相談すれば良いのかわからないというところから、相談に来ていただきたいと思います。

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