及川貴生 院長の独自取材記事
たま耳鼻咽喉科
(川崎市多摩区/向ヶ丘遊園駅)
最終更新日:2021/10/12
小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩3分。シマウマとネコのかわいらしいイラストが目印の「たま耳鼻咽喉科」は多摩区役所近くのマンション1階にある。耳鼻咽喉科に多い子どもの患者を意識した内装はとても明るく、不安を抱えた大人の患者にも安心感を与えること間違いなしだ。診療にあたる院長の及川貴生先生は、この町からほど近い聖マリアンナ医科大学の出身。大学病院時代は喉頭がんや甲状腺がんの診療に携わっていた。その経験を生かし、開業医となって日常的な疾患を診療する今も、重篤な病気を見逃さない。「立ち止まらず、より良い医院を目指していきたい」と語る院長に、診療のこと、そしてスムーズだと定評のある大学病院との連携について、お話しを伺った。
(取材日2013年6月4日)
目次
専門は甲状腺と頭頸部腫瘍。強い絆を生かして、大学病院との医療連携もスムーズ
開院から約1年だそうですね。向ヶ丘遊園を選ばれた理由からお聞かせください。
僕は聖マリアンナ医科大学の出身で、向ヶ丘遊園には学生時代からずっと住んでいました。この町のことはとてもよく知っていますし、自分の医院を開くならこの町しか考えられなかったんです。開院後も、母校で学生を教えたり、系列である川崎市立多摩病院で診療をすることが決まっていたので、これまで通り医局とつながりをもった場所で医院を開きたいという条件にも、この町はぴったりだったんですよ。実際に診療を始めてみると、思っていた以上にお子さんが多い町で、驚いています。耳鼻咽喉科は一般的にお子さんの患者さんが多いため、院内を明るく、お子さんたちが怖がらずに入れて飽きないような内装にしたのですが、待合室のキッズスペースでお子さんたちが遊んでいるのを見ると、このような雰囲気にしてほんとうによかったと思います。
先生のご専門は、甲状腺と頭頸部腫瘍だそうですね。
はい。大学病院では、喉頭がんや甲状腺がんの診療に携わってきました。甲状腺はホルモンを出す臓器で、その病気は主に2つに分けられます。1つは機能の異常。機能が上がることで代謝が上がりすぎ、汗や動悸などの症状を持つバセドー病になったり、逆に機能が下がることで代謝が落ち、体がむくんだりします。これらは採血によるホルモン検査によってわかるので、その結果を見て適切な治療を行います。もう1つの病気は腫瘍です。これは良性か悪性によって治療が変わってきます。当院では超音波検査を行い、その結果によって精密検査の要否を判断し、適切な病院に患者さんを紹介します。耳鼻咽喉科でがんを扱うことを知らない方も多いと思いますが、脳外科と胸部外科の間は耳鼻咽喉科の担当だと考えていただけるとわかりやすいかもしれません。痛みはないけれど、首のあたりが腫れたりしこりがあったりしたときは、早めに受診してください。
医療連携がとてもスムーズだと伺っています。
母校の大学病院に患者さんを紹介する例はよくありますが、当院の場合は、僕が大学の近くで診療していることや今も母校とのつきあいが続いている関係で、医療連携がよりスムーズなんです。川崎市北部で休日・夜間の耳鼻咽喉科救急を受け入れている病院は、聖マリアンナ医科大学病院の本院たった1ヶ所なので、医療連携がスムーズに取れるということは大きなメリットなんです。逆に、大学病院から僕のところへ患者さんが紹介されてくることもあります。治療が投薬だけで、わざわざ大学病院に通い続ける必要のなくなった患者さんなどが一例です。このほか、近隣のクリニックさんから患者さんが紹介されるという点も、当院の医療連携の特徴です。以前は総合病院の腫瘍外来などに患者さんを紹介していたクリニックさんが、僕の開院後、当院を経由するようになりました。その患者さんが大学病院へ紹介するべき症状なのかどうかを当院で検査・診断し、適切な対応をとっているんです。
アレルギー性鼻炎の治療の選択肢も豊富。患者に最適な治療法を提案
アレルギー性鼻炎の外科的治療もお得意だそうですね。
これまでも行っていた高周波凝固術という治療に加え、レーザーを導入し、鼻粘膜を焼くことでアレルギー性鼻炎の症状を抑える治療を行っています。高周波凝固術とレーザー治療は基本的には同じで、粘膜の内側から焼くのが高周波凝固術、外側から焼くのがレーザーと言えるでしょう。特に鼻づまりがひどい人は高周波のほうが適していますし、花粉症などワンシーズンのくしゃみや鼻づまりを抑えたい人にはレーザーのほうが簡単です。ただ、高い技術はあっても、僕は患者さんすべてにこうした外科治療を勧めることはありません。これらはあくまで治療の選択肢の1つ。まずはアレルギー検査を行い、いったい何にどの程度のアレルギーがあるのかを詳細に調べ、投薬治療による経過を見てからの話になります。その方の症状や経過、治療への反応性などを総合的に判断して、その患者さんに最も適した治療法を提案します。
補聴器相談にも力を入れているとお聞きしました。
補聴器は百貨店やメガネ屋さんでも手に入りますが、売ったら売りっぱなしという状況には、常々疑問を感じているんですよ。耳鼻咽喉科のもとで耳の掃除をしっかりしてからフィッテイングをし、定期的に検査やメンテナンスをすることが大切です。実際、補聴器を買った人のなかには、せっかく高いお金を出したのに、途中で嫌になって放り出してしまう方も少なくありません。補聴器を使うという習慣は、医師が関わってしっかりと指導することにより、身につくと思うんです。また、医師のもとで補聴器相談を受けることで、隠れている病気が見つかることも考えられ、それは患者さんにとって大きなメリットだと思います。耳の聴こえの良し悪しは、生活の質にも影響します。耳鼻咽喉科は、耳に限らず、嗅覚(鼻)と味覚(口)にも関わり、めまいや不定愁訴も含めたら、人が楽しく生きていくことに深く結びついている診療科なんですね。皆さんがより楽しく充実した日々を送れるように、サポートしていきたいです。
先生はなぜ医師になろうと思ったのですか?
父が歯科医だったこともあってか、気づいた時には、将来は医師か歯科医師になりたいと思っていました。医師を選んだのは、口腔内だけより、全身を診たかったのだと思います。僕が医師免許を取ったのは、2年間の初期臨床研修が義務付けられた最初の年でした。産婦人科や小児科、精神科まで含め、すべての診療科を2〜3ヵ月ごとに回るという制度で、批判的な意見もある制度ですが、僕は全身を広く診られる医師になれたという点では、強みになったと思っているんですよ。耳鼻咽喉科という専門性を持ちながら、患者さんの体を総合的に診るプライマリ・ケアがある程度できる医師になれましたからね。実際、僕の診療室に来られる患者さん、特にお子さんの中には、耳鼻咽喉科とは直接関係のない症状や病気の方もいらっしゃるんです。そんな時は診断後、症状に応じて地域の小児科や総合病院などを紹介しています。
がん診療の日々から、町の医師へ転身。重病を見逃さないことが大きな責任
全診療科での研修の後、耳鼻咽喉科を選ばれたのですね。
はい。最終的には、手術もできて、興味のあったアレルギーの治療もでき、歯科医の父との連携も考えられると思ったので、耳鼻咽喉科を選びました。研修後、地方の病院での診療を終え大学病院に戻ってからは、ずっとがんの診療だけに携わってきたんです。とにかく手術メインで生死に関わる診療ばかりの日々でしたので、僕が町の開業医になると知った友人は「大丈夫か?」と驚いて心配したくらいです(笑)。確かに診療の内容はすっかり変わりましたが、診断から治療まで完結できる点や、患者さんと長くおつきあいできる点には、大学病院では得られないやりがいを感じます。患者さんに満足していただける点も、とてもうれしいですね。これからは、かつて自分が接してきたようなつらい思いをする患者さんを少しでも減らせるよう、重病を見逃さず早期に発見することが、開業医となった僕の大きな責任です。術後の経過をそばで見ることができないので、僕自身が執刀することはありませんが、患者さんの手術に立ち会うことはありますし、今後はその機会をもっと増やしていきたいです。
母校での学生教育にも携わっているのですね。
休診日の午前中は多摩病院で診療し、午後は聖マリアンナ医科大学に移動し、学生教育に携わっています。3〜4年生の授業と、5年生は実習で耳鼻咽喉科を回ってくるので、そこでちょっとした講義をしています。例えば「“風邪”って何?」などというテーマで教えるんですよ。患者さんからもときどき投げかけられる質問ですが、この疑問に明確に答えられる学生はなかなかいません。僕自身が学生時代に疑問に思ったり、このように教えてくれたらもっとわかりやすかったのにと思ったりしたことを、頭頸部の解剖・機能などの知識を含めて教えているんです。聖マリアンナの学生たちは向ヶ丘遊園にたくさん住んでいて、それこそ“風邪”をひくと当院へ来てくれます。診療の合間におしゃべりしたり、時には誘われて飲みに行ったりするのも楽しいです。
診療を離れた趣味も教えてください。
最近夢中になっているのが、スポーツジムでのボディコンバットです。格闘技の動きをベースにしたエクササイズなのですが、ずっと痛かった背中が、このおかげで改善してきました。やはり、筋肉をつけたことがよかったようです。そんなわけで、すっかり筋トレにはまってしまって、昼休みに待合室のキッズスペースで筋トレをしているんですよ。開院当初は窓に日よけがなく院内が丸見えだったのですが、外を通る方に見られるのが恥ずかしくて、シェードをつけたんです(笑)。
今後の医院の目標をお聞かせください。
僕の性格でもあるのか、同じことを漫然と続けていくのはいいことだとは思えないんです。患者さんが何を求めているのかを考え、1年に1つでもいいから、医院全体として目標を持って、改善していきたいです。開院から1年の間にも、当初は行っていなかった睡眠時無呼吸症候群の診療や補聴器相談などを取り入れてきました。将来的には、可能な検査を増やしたり、往診を可能にしたりすることまで、立ち止まることなく、地域の皆さんにとってより良い医院になれるよう、頑張っていきます!