見落とされやすい甲状腺疾患
クリニックで受けられる検査や治療
そのだ内科 糖尿病・甲状腺クリニック 渋谷駅道玄坂院
(渋谷区/渋谷駅)
最終更新日:2024/04/12
- 保険診療
20~50代の女性に多いといわれる甲状腺の病気。疲労感やイライラ、無気力、動悸、息切れ、暑がり・寒がり、体重の増加・減少など、さまざまな症状が全身に現れるが、更年期障害や自律神経失調症、うつ病など他の病気と誤解されることも多い。代表的な甲状腺の病気である橋本病とバセドウ病は、どちらも甲状腺ホルモンの分泌異常によって発症する自己免疫疾患。生命に関わることはほとんどなく、適切な治療を続ければ発症前と変わらない普段どおりの生活を送ることも望めるという。今回は糖尿病と甲状腺疾患に特化した「そのだ内科 糖尿病・甲状腺クリニック 渋谷駅道玄坂院」の薗田憲司院長に、甲状腺疾患の種類や検査・治療法、日常生活での注意点について解説してもらった。
(取材日2024年3月26日)
目次
女性に多い橋本病・バセドウ病。適切な診断・治療を受けて自分らしい生活を取り戻すことをめざそう
- Q甲状腺疾患にはどのようなものがありますか?
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A
甲状腺は喉仏の下にある小さな臓器で、脈拍や血圧や体温を上げ、新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺疾患には、甲状腺ホルモンの分泌が不足する甲状腺機能低下症、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる甲状腺機能亢進症、甲状腺にこぶのようなものができる甲状腺腫瘤の、主に3つがあります。男性よりも女性のほうがかかりやすく、甲状腺機能低下症の中で最も頻度が高い橋本病は中高年の女性に、甲状腺機能亢進症の代表的な病気であるバセドウ病は20~30代の若い女性に多いのが特徴です。甲状腺腫瘤には良性と悪性がありますが大部分は良性で、特別な治療が必要になることはあまりありません。
- Q受診すべきタイミングや初期症状を教えてください。
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A
橋本病は甲状腺ホルモンの不足により、寒さを感じる、体重増加、コレステロール値の上昇、汗をかきにくいなどの症状が現れます。一方のバセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、暑がりになる、体重が減る、汗をかきやすいなど、橋本病と対になる症状のほか動悸、息切れ、情緒不安定などの症状もあります。症状が多岐にわたるため、更年期障害や自律神経失調症、心臓病、うつ病、脂質異常症など他の病気と間違われることも多いです。首の喉仏辺りが腫れてきた、急に暑がり・寒がりになった、異常に汗をかくなど、明らかに代謝がおかしいと感じる症状があれば、一度甲状腺の検査を受けていただきたいと思います。
- Qどのような検査が行われますか?
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A
血液中の甲状腺ホルモン値を測定する血液検査と、甲状腺の形や大きさを調べる頸部超音波検査があります。当院では、血液検査の結果が最短20分でわかる、甲状腺ホルモン迅速検査機器を導入しています。また、血液検査の結果を待つ間に甲状腺超音波検査を実施していますので、検査終了後すぐに結果をお伝えし、状況に応じてその日のうちに治療を開始することも可能です。甲状腺腫瘤では甲状腺超音波検査や腫瘤に対する針生検を行い、腫瘤の悪性・良性を判定します。悪性の場合は手術が必要なため提携している病院にご紹介し、良性の場合は基本的には治療は必要なく、経過観察のため3~6ヵ月ごとの来院をお願いしています。
- Q治療の内容についても教えてください。
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A
橋本病など甲状腺機能低下症の場合は、不足している甲状腺ホルモンを補うための甲状腺ホルモン剤を、バセドウ病など甲状腺機能亢進症では過剰に分泌される甲状腺ホルモンを抑えるための抗甲状腺製剤を内服します。どちらの病気も原則として定期的に通院し、血液検査でホルモン値を確認しながら薬の量を調整する必要があるため、なるべく甲状腺や内分泌の病気の診療経験が豊富な医師に診てもらうことをお勧めします。また、バセドウ病では病状に応じて放射性ヨードのカプセルを服用するアイソトープ治療や、甲状腺の一部または全部の摘出手術が選択されることもあります。
- Q日常生活で注意すべき点はありますか?
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A
甲状腺ホルモンの原料になるヨウ素を過剰に摂取すると、逆に甲状腺の働きを弱めてしまうため、神経質になるほどではないものの昆布や海苔、ワカメなどの海藻類の取りすぎに注意し、ヨウ素含有のうがい薬は使用を控えたほうが良いでしょう。また、橋本病もバセドウ病も自己免疫疾患であり、強いストレスをきっかけに症状が悪化・再燃することもあります。できるだけストレスを避け、規則正しい生活を心がけましょう。さらに、自己判断で服薬を中止しないことも大切です。バセドウ病は服薬をやめられることもありますが、橋本病は永続的に服用が必要になることが多いです。定期的に通院し、医師の指示に従って服薬を続けましょう。