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原口寿夫 院長の独自取材記事

原口小児科医院

(横浜市港南区/上永谷駅)

最終更新日:2023/03/08

原口寿夫院長 原口小児科医院  main

小児循環器科という先進的な医療技術とシビアな精神力が求められる領域で診療経験を積み重ねてきた「原口小児科医院」原口寿夫院長。豊富な実績を持ちながら、しかし開業医は権威者ではなく、何でも相談できる身近な存在であるべきと地域のかかりつけ医に徹し、子どもたちの健やかな成長に貢献してきた。子どもが嫌がる検査は最小限に留め、また、初めて子育てをする母親は「知らないことが多くて当然」と予防接種の受け方からインターネット情報の扱い方まできめ細かくアドバイスする。そんな原口院長のもとには、近隣だけでなく遠方から訪れる患者や家族も多いという。「ちょっと医療に詳しいオジサンと思ってもらえればいいんですよ」という優しく語る笑顔が印象的な院長に話を聞いた。

(取材日2013年7月24日)

多くの実績を持ちつつ、身近なかかりつけ医に徹する

医師を志したきっかけを教えてください。

原口寿夫院長 原口小児科医院 1

5人兄弟の末っ子で、子どもの頃から「医者にでもなるか」と親に言われて、なんとなく「自分は医師になるのかな」と自然に医学部をめざしました。親の誘導にひっかかったようなものですね(笑)。出身は東京ですが、両親が信州・松本の出身だったこともあり、信州大学に進みました。しかし、ちょうど大学紛争の時代で、その影響で大学を卒業しても信州大学の医局に入れず、受け入れてくれるところを探し、横浜市立大学病院の小児科に入局しました。横浜との縁ができたのはそこからです。

小児科を選ばれたのはどうしてですか。

小児科は明るく清潔な印象で、子どもたちと楽しくコミュニケーションを取れるイメージがあったので選びました。しかし実際は重篤な患者さんが多く、とてもシビアで精神的にも肉体的にも厳しい診療科でした。重い病気の子どもの親御さんは必死ですし、時にやり場のない思いを身近な医師に訴える方もいらっしゃいました。私は小児循環器科のチーフを務めていましたから、悪い時や厳しい状況を親御さんに告げるのが役割だったのです。「ハードな分野を選んでしまった」としみじみ思うこともありました。忘れられないつらい思い出もたくさんあります。お子さんの病気は何でも大変ですが、特に心臓病は小さいときから闘病し、やっと中学生や高校生になって「これから」という時に亡くなられるケースが少なくないのです。厳しい毎日でしたが、病気だけを治療するのではなく家族全体をケアすることが必要であることなど、本当にたくさんのことを学びました。

先進の医療現場での診療を経て、開業されたわけですね。

原口寿夫院長 原口小児科医院 2

そうです。小児心臓病ばかり診ていましたから、開業を考えるようになってから、必死にアレルギーや感染症など小児科クリニックに必要な分野を学び直しました。ちなみに開業の際、私がこだわったのは硬い床にすることでした。心臓病のお子さんを診るつもりだったので、ちょっとした心音や雑音が正確に聞き取れるように反響のない硬い床にしたのです。でも、街の開業医にそんな重い心臓病のお子さんは来院されませんよね。それがわからなかったのです。今から考えると笑い話なのですけれど、それだけ循環器専門家としての思いが強かったのだろうと思います。

恐怖心を持たせないように、検査も最小限に留める

開業されていかがでしたか。

原口寿夫院長 原口小児科医院 3

実際に開業してみると、私が思っていたイメージとはずいぶん違い、開業医と勤務医は、まるで違う仕事だなという印象を持ちました。重い心臓病のお子さんに出会うことはほとんどなく、大学病院とは診察する内容も違いますし、クリニックにはサービス業的なことも求められます。また、かかりつけ医と患者さんのご家族の関係には、ご近所の友人のような親しみやすい関係も必要です。そこが大きく違いましたね。しかし、例えば心臓に対する副作用を持っている喘息治療薬で、万が一影響が出ても速やかに対応できるという自信はありますので、そこは循環器科医としてのメリットだと思いました。

上永谷や丸山台の発展と共に歩まれてきたわけですね。

そうですね。開業してしばらくした頃、このあたりの開発が進んで人口が増え、当院も毎日大変混雑していました。冬場など本当に患者さんの数が多く、日々診療をこなすことに必死でした。しかし、数多くの診療を経て臨床能力は身につきました。最近はこの近辺の子ども人口が減ったこともあり、少し遠方の永谷や芹が谷、野庭、港南台、戸塚あたりからわざわざ車で来院される方が多くなっています。

診療する上で心がけていることは?

治療方針に大きな影響を与えない検査であれば、子どもにとって痛い検査や怖い検査は最小限にしたいと考えています。大学病院は使命として科学的な診断をしなければならないので、時によって医師は科学的な冷酷さを持って正確な判断をしなければならないことがあります。しかし、地域のクリニックの場では、科学的な診断を重視するあまり、子どもが二度と病院に行きたくないと思うような痛い思いをさせたり、恐怖感を持たせたりするべきではないと考え、検査は最小限にするように心がけています。

開業時より変わってきたことはありますか。

原口寿夫院長 原口小児科医院 4

重症の子どもの病気は減ってきたと感じています。小児の喘息も重症の子が減りました。工場の煤煙の規制や自動車の排気ガスの規制が進み、空気がきれいになったことと、喘息発作をコントロールする薬の開発が進んだことも役立っていると思います。ただ、喘息は減りましたが、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギーは増える傾向にあります。当院では生活習慣相談・指導を行い、アレルギーになりやすい体質の改善を促すなどもしております。また、病気を予防することが重視されるようになり、予防接種の種類が増え、小児科医の大きな仕事になってきました。最近はお仕事で忙しいお母さんが多く、「夕方でないと来れない」と飛び込んでくる方も増えています。子どもは一晩のうちに悪化することもありますし、夜間の救急体制が整備されてはいても、やはりかかりつけ医に診てもらいたいという方も多いと思いますので、できる限り柔軟に対応したいと考えています。

地域の母親たちに親しまれる、優しいかかりつけ医

お忙しい毎日ですがお休みの日はどのように過ごされていますか。

原口寿夫院長 原口小児科医院 5

昔はテニスをしていましたが、最近は、もっぱら健康のためにと考えてゴルフをしています。たまに息子とゴルフをするのも楽しみです。息子はやはり小児科医で大学病院に勤めています。

息子さんも同じ道を歩まれているのですね。

小児科医になってほしいと私が言ったわけではないのですが、自然に同じ道を進んでくれました。今も大学病院の小児科はハードなところですから「睡眠時間が3時間しかない」などとぼやきながら、頑張っています。小児科医の大変さはよくわかっていますが、やりがいのある仕事ですし、世の中に必要とされる仕事ですから、息子にも頑張ってほしいと思っています。

小児科医として気になることはありますか。

この頃の若いお母さんは、インターネットで病気を検索されます。便利な面もありますが、情報に振り回されてしまうところもあります。例えば手足口病と診断すると「髄膜炎になるのですか」とお母さんが真っ青になられたりするのです。「可能性はゼロではないけれど、私は40年小児科医をしていて診たことはありませんよ」と言うと安心されます。インターネットだけに頼らず、専門家に確認するなど正しい情報を得ていただきたいですね。また仕事をされているお母さんは、ふだん自分が子どもさんを見られる時間が少ないからと、必要以上に心配される傾向があるようです。極端には心配なさらないで、気になることは小児科医に相談していただきたいですね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

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何でも気楽に相談してください。ときどき「こんなことを聞いてはいけないのではないか」と遠慮される親御さんがいらっしゃるのですが、聞いてはいけないことなどありません。疑問に思うこと、不安なことは何でも聞いてください。お子さんは、ちょっとしたことでも急変することがあるので、お母さんの疑問や不安は大切にしていただきたいですね。少子化でお子さんの数が少ないですから、子育て経験の少ない方が多く、医師に「病気ではない、心配ない」と言われて初めて安心できるという方も多いようです。ですから、小児科のかかりつけ医は、何でも気楽に質問できる、隣のオジサンのような存在であるべきだと思っています。私も近所のオジイサンではなく(笑)、オジサンとして頼りにしていただけるように、健康に留意しながら頑張っていきたいと思います。

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