細川史磨子院長の独自取材記事

こどもGROWオーラルセラピークリニック

(名古屋市昭和区／八事日赤駅)

最終更新日：2024/01/31

八事日赤駅からすぐの、れんが調の建物3階に位置する「こどもGROWオーラルセラピークリニック」。「歯並びから健康な体をつくる」を理念に2022年8月に開業した、小児歯科専門の歯科クリニックだ。細川史磨子院長は、0歳の頃から子どもたちが楽しく通える場所になるよう、歯科クリニックらしくない雰囲気にこだわって内装をデザインしたという。アロマの香りが漂う院内には、大きなテーブルを中心にブロックのおもちゃがあちこちに飾られ、歯科クリニックというより友達の家に遊びに来たような雰囲気だ。子どもたちの歯や顎の健全な発育を促す自身の仕事を「オーラルセラピー」と捉える細川院長は、気さくで優しいだけでなく、どんな質問にも的確に答えてくれた。クリニックの特色や診療内容、小児歯科にかける想いなどについて話を聞いた。

（取材日2023年12月14日）

子どもにとって楽しい歯科クリニックづくり
姿勢や食べ方の癖など根本原因を見つけ、修正する
子どもの歯と顎の健康を守るため、まず相談してほしい

子どもにとって楽しい歯科クリニックづくり

歯科クリニックとは思えない、おしゃれな内装ですね。

開業にあたって意識したことの一つが「歯科クリニックらしさをなくす」ことでした。もともとは住居だったというこの建物を選んだのも、天井が高くて、クリニックというよりカフェのようなイメージを持てたからです。コンクリートとモルタルれんがの壁にクリスマスやハロウィーンなど季節の飾りつけをして、さまざまな形の椅子や大きな一枚板のテーブルセットを待合室の中心に設置しています。子どもたちはそこで折り紙をしたりブロックで遊んだりして、中には「帰りたくない」という子もいますよ。特有の匂いだけで歯科クリニックが嫌いになる子もいますから、香りにこだわってブレンドしたアロマオイルも使っています。

なぜそこまで、「歯科クリニックらしさをなくす」ことにこだわるのでしょう。

私自身、子どもの頃は歯科クリニックが大嫌いだったからです（笑）。もう本当に、たまに通院してはおなかが痛くなって治療もせずに帰るくらい怖くて、嫌でたまりませんでした。そんな私が重度の歯科嫌いを克服できたのは、運良く治療があまり痛くない、嫌な匂いも少ない歯科クリニックに出会えたからです。「あ、こんな歯科クリニックもあるんだな」と知ることができて、私の中での歯科医師や歯科クリニックへのイメージが変わったんです。加えて生まれ育った家が医師家系だったため、どうせ医療の道に進むなら、私が怖くない、通いたくなるような歯科クリニックをつくろうと思い、歯科医師になる道を選びました。

開業に至るまでの、先生のご経歴を教えてください。

鶴見大学歯学部歯学科を卒業後は、東京歯科大学千葉病院で歯の詰め物や義歯について学び、補綴（ほてつ）科の講座にて研鑽を積みました。その後は地元の愛知県に戻り、補綴を専門領域としていくつかの歯科クリニックでの勤務を経験。補綴講座で知り合った先生からのお誘いを受けて、0歳児からのオーラルケアに注力する「I Dental Clinic」に10年間お世話になりました。その間に、オーストラリアでの子どもの矯正の勉強会にも参加し、東京の小児専門歯科医院でも経験を積みました。「I Dental Clinic」で、幅広い世代の歯科診療を経験する中で感じていたのは、どんなに完璧な補綴物を作ったとしても、歯の寿命を防ぐには限界があるということ。歯の修復よりも、虫歯や歯並びが悪くなる前にアプローチすることの重要性を感じ、患者さんの健康に貢献できるという意味で歯科医師として一番やりがいを感じたのが、小児歯科でした。

姿勢や食べ方の癖など根本原因を見つけ、修正する

こちらのクリニックの診療の特色を教えてください。

お口の中で起きている根本的な原因を探して、お子さんに合わせたより良い成長のご提案をしています。これ以上悪い歯並びにさせないようにという、予防を視野に入れた矯正という考え方ですね。子どもの成長に重要な食べ物、それを噛むことに影響する歯並びは、子どもの頃からの姿勢や呼吸、食べ方などの癖、そして顎や口周りの筋肉の発達程度など複数の要因によって決まるとされます。その原因を改善するには、矯正だけではなく舌や呼吸、唇、頬などのバランストレーニングが大切で、当クリニックでは、子どもの成長を生かし、促すためのトレーニングを自由診療のメニューとしてご提供しています。

歯並びの悪化の予防をめざし、子どもの歯や顎の発育を促すトレーニングとはどんなものなのでしょうか。

口腔筋機能療法（MFT）と呼ばれるアプローチです。舌、唇、頬、飲み込みの各項目のプログラムを組み合わせて行う筋力トレーニングに近いもので、最初は週に1回くらいのペースで、数ヵ月したら1ヵ月に1回のペースで数年間かけて継続的に行います。具体的に行うことはバランスボールに乗って鼻呼吸の練習をしたり、ベッドに寝て腹式呼吸の練習をしたり、舌や唇を使って音を出したりという簡単な動作がメインです。もちろん、子どもの発育状況に合わせてストップさせたり、「この歯が生えるまでは休憩ね」などと一時的に停止することもあります。

どのような患者さんが多く来院していますか。

初めての歯科クリニックとして利用される0～1歳児や矯正を希望される6～7歳のお子さんですね。クリーニングなどのメンテナンスもしくはトレーニングのために通っているお子さんがほとんどで、虫歯治療はかなり少ない印象です。お子さんの付き添いのお母さんも歯への意識が高まり、ご要望によりお母さんのクリーニングや矯正、お口のトレーニングなども対応するようになりました。小児歯科ではありますが、大人の一般歯科での診療経験もありますから、ご要望に応じて柔軟に対応しています。ただ、治療機器がそろっていないので、かぶせ物などの治療は行っていません。また、妊娠中の患者さんも増えましたね。妊娠中の姿勢や座り方などは赤ちゃんにも影響しますし、出産後は時間がないと思いますので、時間のある産前に授乳の仕方など、赤ちゃんからのお口の育て方についてのアドバイスをしています。

子どもの歯と顎の健康を守るため、まず相談してほしい

診療の際、大切にしていることを教えてください。

当クリニックを子どもたちにとって通いたい場所にすることでしょうか。可能な限り虫歯や歯周病にさせない、歯を失わせないようにするには、定期的に歯科クリニックに通ってメンテナンスと治療をしていくのが重要だと思います。だから患者さんにはかつての私のようにならずに（笑）、明るい雰囲気の楽しい場所だと思って、当クリニックに通ってもらえるようにしたいですね。あとは極力、歯を削らないこと。一度削った歯はどんなことをしても戻ってきません。治療のために歯を削ったり抜いたりすることも、大切な歯を失うことには変わりありませんから。歯を削らないといけなくなる前に、小さい子どものうちから歯科クリニックに通う習慣をつけてほしいですね。

どのようなきっかけで来院するのがいいですか？

「子どもが歯ブラシを嫌がる」「どんな食事がいいのかわからない」「赤ちゃんがおっぱいをうまく吸えない」などきっかけは何でも構いません。個別無料相談やオンライン相談も対応しているので、それをきっかけに通院を始められる方もいらっしゃいますよ。当クリニックでは歯が生える前からの来院を推奨しています。というのも、子どもの味覚は3歳頃で決まるとされているため、この時期の食事の管理や飲み込みの仕方などが、その後の口腔機能に大きく影響するからです。「早く知っていればよかった」と言われるお母さんがとても多いので、知らなくて後悔する方を一人でも減らしたいという思いがあります。歯科医師として正しい知識やアドバイスをできるだけ多く提供するようにしていますが、押しつけるようなことはしません。子どもの成長について知った上で、どう育てるかは親御さんが決めること。どんなきっかけでもいいので気軽に来てくれるとうれしいです。

読者の方へメッセージをお願いします。

例えば、靴選び一つにしてもお口の成長に関連します。お口と足、一見どう関連があるのか疑問に思われるかもしれませんが、相談に来ていただければお口の成長と歩き方や姿勢についてじっくりお話ができます。「どんな靴を選んだらいいのか」「赤ちゃんのずりばいの仕方が気になる」などの小さなことも、後のお子さんの健康につながることですから、確かな知識のもとに子育てしてほしいですね。当クリニックには、妊婦さんや初めての歯科クリニックとして利用される0歳児も多いです。心配なことや気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。