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上野 圭介 院長の独自取材記事

川西ほんわか訪問診療クリニック

(川西市/絹延橋駅)

最終更新日:2024/03/14

上野圭介院長 川西ほんわか訪問診療クリニック main

兵庫県川西市にある「川西ほんわか訪問診療クリニック」は、日本内科学会総合内科専門医の上野圭介院長を中心に看護師、相談員など、住み慣れた場所での療養をサポートするスタッフが一丸となって訪問診療に取り組むクリニックだ。上野院長は「病気になったからと言ってそれまでの人生がなくなったわけではありません。病気はあくまでも人生の一部。その人らしく過ごせる場所で療養できるようサポートするのが私たちの役目です」と笑顔で話す。必要があればケアマネジャーや訪問介護員、病院とも連携して24時間365日の対応できるようにしている。めざすは「人生の最後は川西で過ごせたら安心」と言われるような地域医療の実現だ。そこで今回は、上野院長が訪問診療にかける想いを中心に、さまざまな話を聞かせてもらった。

(取材日2024年2月26日)

生き生きした患者の表情に衝撃を受け、訪問診療の道へ

まずはクリニックについて教えてください。

上野圭介院長 川西ほんわか訪問診療クリニック1

当院は、通院が困難な患者さんのご自宅や施設に定期的に訪問して診療を行う「訪問診療専門」のクリニックです。病気の治療や予防を中心に24時間365日対応しており、必要があれば医療機関での検査・入院のご紹介はもちろん、介護へつなげるお手伝いもいたします。クリニックで診療しているわけではありませんので、診療は完全オーダーメイドです。患者さんのお体の状態やご希望、生活スタイルに合わせてできることを私たちが考えてご提案いたします。病気になったけど、年を取ったけれど「できれば家で過ごしたい」という思いが少しでもあるのであれば、訪問診療を選択肢の一つとして、まずは私たちにご相談いただき、何ができるか話し合っていければと思います。

訪問診療専門クリニックを立ち上げることにしたきっかけはなんですか?

私はもともと内視鏡を専門としており、病院での検査や手術に明け暮れる日々を送っていました。しかしある時、在宅医療を専門とするクリニックのお手伝いをしたことがきっかけで訪問診療を経験し、大きな衝撃を受けました。とにかく、患者さんの「顔」が違うんです。これまでだって外来でたくさんの患者さんにお会いしてきたはずなのに、どの方も病院では見たことのない表情をしていました。一人、また一人とお会いしていくうちに、訪問診療はその人の人生に寄り添うことであり、ともに生きて、思い出を一緒に刻んでいくことなんだと感じました。そのことに気がついたら、もう訪問診療のとりこです。一人でも多くの方の「自宅で過ごしたい」という希望をかなえたいと思い、当院を立ち上げました。

先生が衝撃を受けた患者さんの「顔」について、詳しく聞かせてください。

上野圭介院長 川西ほんわか訪問診療クリニック2

病院でお会いする患者さんのお顔は、ほとんどの方が緊張して硬い表情をされています。ある意味、「よそいきの顔」になっている感じです。しかし、訪問診療でお会いした患者さんは自身の生活の中にいるせいか、どの方も生き生きとしており、表情がやわらかいと感じました。そのお顔がその方の「本当のお顔」なんだろうなと感じたのです。患者さん側に立って考えると、病院には「行く」けど、訪問診療は「迎える」。だからこそ、その方のさまざまな表情を見ることができるのだと思います。住み慣れた場所とは、好きなものやそれまでの人生に包まれて過ごすことができる場所です。その中で見る表情こそ、まさに「生きている」ということなのかもしれないなといつも感じます。

「わがまま」な願いも訪問診療なら実現できることも

訪問診療にはどことなくネガティブな印象がありました。

上野圭介院長 川西ほんわか訪問診療クリニック3

「訪問診療=終末期医療」と誤解している人が多いですよね。もちろん、病気や加齢によってまさに人生の終末を迎えようとしている患者さんも多くいらっしゃいます。でも、だからと言ってそのすべてが暗く、悲しい雰囲気ではないんです。起き上がる体力がなくなっても、布団の中から家族にあれこれと指示を出していたり、孫の様子に目を細めたり、好きなお酒やたばこを嗜んでいたりとこれまでの生活の延長線上に今があるんだと感じられます。私はいつも思うのですが、病気になったからと言ってその人そのものがいなくなったわけではありません。病気はあくまでその人の一部。訪問診療はその人自身を変える必要がないので、むしろ明るく和やかな雰囲気になることも多いですよ。

本当は自宅で過ごしたくても、家族の負担が心配で実現できない人は多いと思います。

「最期の時をどこで過ごしたい?」と聞くと、多くの方が「自宅」だと答えます。しかし、実際にはほとんどの方が病院でその時を迎えています。これはなぜか? 私は皆さんが「どうすれば自宅で過ごせるか」を知らないからだと思います。介護環境や病気への不安など、できないと思う理由はたくさんあるでしょう。しかし、皆さんが思っているよりも日本の福祉環境は整っており、私たちのような訪問診療と介護サービス、さまざまな制度を利用すれば自宅で過ごせる人はもっと増えます。私たちは、まず難しいことは置いておいて「本当はどうしたいか」を中心に考えられるように、サポートしていきたいと考えています。私たちにご相談いただく時は、別になんの知識もなくて大丈夫。「こうしたい」という気持ちがあれば、なんでも話してもらえればと思います。

途中で気が変わるかもしれないという点も心配です。

上野圭介院長 川西ほんわか訪問診療クリニック4

人間なんだから途中で気が変わってもいいんですよ。「やっぱり入院したい」も大いに結構です。その時は、必要な医療機関を紹介しますから安心してください。もちろんその逆で「やっぱり帰りたい」も大丈夫ですよ。私たちがめざすのは、患者さんが、そのご家族がハッピーであること。自身の人生なのですから、自分で決めていいんだと私は思います。私が医師になったのは、阪神・淡路大震災を経験して自分の無力さを知り、世界中を幸せにできずとも自分の目に見える、自分の手の届くところにいる人を幸せにしたいと感じたから。その気持ちは今につながっています。病院では「わがままな患者」と言われるようなことでも、訪問診療なら実現できるかもしれない。私は、その方法を一緒に考えていきたいのです。

患者がハッピーにならなければ医療じゃない

先生のお話しからは、みんなを笑顔にしたいという気持ちが伝わってきます。

上野圭介院長 川西ほんわか訪問診療クリニック5

私は「患者さんがハッピーにならなければ医療じゃない!」と思っています。病気を治すこと自体が医療ではなく、病気を治せば患者さんがハッピーになるから医療なんだと。高度医療はもちろん大切。でも、それだけでは救えないものもある。不確定なことが多い世の中ですが、人はいつか必ず最期の時を迎えます。そこに至るまでにどう生きるのか、もっと自分らしく、もっと自由に選べてもいいはずです。私たちにできるのは、ご本人の、ご家族の想いを受け止めて、笑顔に変えていくサポート。「幸せにする」「幸福になる」と深刻になり過ぎることなく、もう少し気軽な気持ちでその人らしいハッピーを追求してけたらと思います。

実際、先生もスタッフの皆さんも楽しそうに見えます。

私たちは診療をするために、皆さんの生活スペースにお邪魔します。その時、機嫌が悪い人よりも機嫌がいい人のほうがいいですよね。だから、スタッフたちとはいつも「笑顔を届けるのも仕事だよ」と話しています。そのために、まずは自分たちが笑顔になる環境づくりから。クリニックで診療することはありませんが、ご本人やご家族が相談にいらっしゃることもありますし、何よりもスタッフみんなにとっては仕事をする場所。少しでも居心地の良い空間にするべくグリーンを配置したり、バーカウンターを作って楽しく休憩できるようにしたりと工夫しています。楽しく仕事ができれば誰かを思いやる気持ちも生まれ、困った時には手を取り合えると思います。そうすれば笑顔も自然に連鎖していきます。

最後にメッセージをお願いします。

上野圭介院長 川西ほんわか訪問診療クリニック6

私は訪問診療に生きがいを感じています。訪問診療を通して出会ったたくさんの人々の人生に触れ、思い出すだけで目頭が熱くなるような優しく温かな時間を経験し、その思いはますます強くなっています。柱や床の傷、窓から見える景色、飾られた写真やトロフィー、食事を準備する音や匂い、子どもたちが駆け回る足音。これまで当たり前にあったものを病気になったからと諦める必要はないのです。無機質な病室ではなく、自分の人生を感じながら自分らしく過ごせる。私はそんな訪問診療をもっと皆さんに知ってもらえたらと思います。ご自身が、ご家族が自宅で過ごしていきたいと願ったら、どうか私たちを思い出してくださるとうれしいです。

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