佐藤 雄 院長、佐藤 杏月 副院長の独自取材記事
八丁堀さとうクリニック
(中央区/八丁堀駅)
最終更新日:2024/02/27
エックス字型のスタイリッシュな塔が目を引く中央大橋の東岸に広がる中央区新川エリア。高層マンションやオフィスビル、そして昔ながらの住宅が混在し、多世代が行き交うこの街の一角にある「八丁堀さとうクリニック」を訪ねた。院長の佐藤雄先生はクリニックからほど近い聖路加国際病院の整形外科で脊椎の手術を数多く手がけてきた経験豊富なドクター。妻で副院長の佐藤杏月先生も、日本医科大学武蔵小杉病院などの産婦人科でキャリアを積み、過酷な出産の現場や悪性腫瘍の患者のケアなどに携わってきた。2020年6月の開業から間もなく2年。それぞれの専門性を生かして幅広い世代の患者の診療にあたる2人に、開業の経緯や2年を経ての手応え、めざすクリニック像などについて、じっくり話を聞いた。
(取材日2022年3月11日)
セミオープンシステムによる病診連携で妊婦を支える
開業からもうすぐ2年がたちますね。この地域で開業された経緯は?
【院長】ありがたいことに、子どもからご高齢の方まであらゆる世代の患者さんが来院されるようになり、地域のかかりつけクリニックとしてだいぶ認知されてきたかなと感じています。そもそもこのエリアで開業したのは、私が長年勤めてきた聖路加国際病院に近く、私たちの住まいにも近いなじみ深い地域だったから。聖路加国際病院は手術を数多く行う病院のため、投薬中心の患者さんを外来でフォローし続けることが難しいという事情があります。そうした患者さんの受け皿になるクリニックを開業して、外来を担っていきたいと考えたことが開業の直接の動機でしたね。
【副院長】私は大学病院の勤務医時代に長女を出産し、子育てと両立していくためにクリニックの勤務医に転身しました。またいつか責任ある立場で挑戦したいという思いがあった中で、主人の決断も重なり、開業医としてやっていく決心が固まりました。
こちらでは、7つの病院とセミオープンシステムの契約を結んでいるそうですね。
【副院長】比較的リスクの少ない妊婦さんのフォローは、可能な限りクリニックが担うべきだと思っています。とはいえ、最近は高齢出産も増えていることもあり、経過が順調な妊婦さんも予期せぬ急変に備えて、細心の注意を払って見守っていく必要があります。そこで当院では、聖路加国際病院、昭和大学江東豊洲病院など、周産期母子医療センターを備えた7ヵ所の病院とセミオープンシステムの契約を結び、分娩はもちろん、夜間や休日といった当院の休診時に、緊急で対応が必要な妊婦さんを受け入れてもらえる体制を整えています。出産直前の33週までの妊婦健診を当院が担うわけですが、大きな病院と比べると待ち時間も少なく済む上、回を重ねるごとにスタッフと互いに知った顔になって信頼関係も深まっていくようで、そうした「顔の見える安心感」といった部分でも、メリットを感じていただけていると思います。
患者さんと接する上で、心がけていることはありますか?
【院長】このタイミングで来院されたのはなぜなのか、あるいは、ご家族が何らかの病気を経験しているので自分の体についても不安になったなど、問診表の文面には現れてこないような不安要素にも目配りしながら、診療にあたっていきたいと思っています。
【副院長】1つ挙げるとしたら、自然体でお話しすることでしょうか。患者さんが身構えることなくリラックスできる雰囲気をつくることで、気になることは何でもご相談いただき、互いの信頼関係をゆっくり築いていけたらと考えています。
骨転移した乳がん患者の背骨の再建手術なども担当
お二人それぞれに整形外科、産婦人科を志したきっかけは?
【院長】祖父をはじめ親族に医師が多く、幼い頃から一番身近な職業でした。中高生時代、折しもプロサッカーリーグが開幕して私も本気でサッカー選手になりたいと思うほどサッカーにのめり込み、医師以外の選択肢を少し意識した頃に、偶然テレビで見たドキュメンタリー番組で、サッカーチームに帯同するスポーツドクターが取り上げられていたんです。その仕事ぶりを見て強い憧れを抱くようになり、「医師になる」ではなくて「整形外科医になる」というより明確な目標を持って医学部に進学しました。
【副院長】私の場合は中高生時代に医師をめざす友人が周囲にいて、その影響が大きかったですね。そして医学部の実習で味わったお産の緊迫感に圧倒され、「私がやりたかったのはこれだ!」と、迷いなく産婦人科の道を選びました。
院長のご専門は脊椎だそうですね。
【院長】聖路加国際病院では脊椎、いわゆる背骨に特化した手術を手がけてきました。ご高齢の方のほか、交通事故による外傷、そしてがんの骨転移がある患者さんに対する背骨の再建手術も専門に担当していました。というのも、聖路加国際病院は乳がん患者の受け入れ数がたいへん多く、骨転移の患者さんも相当数いらっしゃいました。乳がんはゆっくりと進行することが多いため、骨転移した骨とともにいかに生きていくかということが問題になります。骨転移によって麻痺が起こったり、背骨が折れて立てなくなったりした患者さんのために、背骨の再建手術を行ってきました。
副院長は勤務医時代、ハイリスクの妊婦さんの出産を数多く診てこられましたね。
【副院長】私が勤めていた日本医科大学武蔵小杉病院では、年間を通じてかなり多くの分娩を手がけていました。ハイリスクとひと口に言っても、状態は妊婦さんによってさまざま。持病のある方はもちろん、妊娠高血圧症候群の影響で赤ちゃんがなかなか大きくならないとか、切迫早産、三つ子など、本当に多様なケースの出産に携わりました。病棟の患者さんといい意味で濃密な時間をともにする中で、産まれてきたお子さんに私の名前をつけてくださった方も、何人かいらっしゃったんですよ。大学病院には医師は何人もいますが、開業した今、患者さんにとっての担当医は私しかいません。この先また、患者さんから「この子に先生の名前をいただきました」と言っていただけるような診療をしていきたいなと思っているところです。
患者が気軽に頼れる「最初の窓口」でありたい
婦人科の患者さんはどういった症状で受診される方が多いですか?
【副院長】50歳前後で更年期の症状にお悩みの方が予想以上に多く来られて、少し驚きました。他には、月経時の腹痛や吐き気がつらくて寝込んでしまうような月経困難症、月経前症候群(PMS)の症状で訪れる若い世代もかなり増えてますね。婦人科特有のかかりづらいイメージから、クリニック選びもより慎重にされる方が多いようですが、この半年くらいの間に、知り合いや家族の紹介で電車に乗って遠方から来院される方もかなり増えました。中高生の娘さんの月経トラブルで来院されたのがきっかけで、後日お母さんが更年期症状で受診されたりと、母子でかかりつけの婦人科として利用してくださっている方もいます。
整形外科では、リハビリテーションも行っていると伺いました。
【院長】リハビリテーションは患者さんにとても喜ばれる取り組みですが、リハビリ終了後に再び症状が悪化し、リハビリでの通院を再開するといったことを繰り返しているケースが非常に多いというのが現状です。本来、運動は人にやってもらうものではなく、自分で行うものというのが私の持論。そうは言っても、リハビリが必要な患者さんは一定数いますから、2021年11月から週2回理学療法士に来てもらい、院内でのリハビリを始めました。四十肩のように関節が硬くなって動かしづらいといった方に対する理学療法のほか、どう運動していいかわからないとお悩みの高齢者の方などに運動指導を行い、何回か指導を受けたら後はご自分で実践していただくというスタイルで進めています。
では最後に今後の展望と、読者に向けたメッセージを一言ずつお願いします。
【院長】体のどこかが痛むとき、必ずしも整形外科的な要因ではなく、他の疾患が隠れていることも多々あります。私は整形外科が専門ですが、その枠にとらわれず、内科の先生と整形外科をつなぐ、いわば「整形内科」のような立ち位置で患者さんと向き合っていけたらと考えています。「どこに行ったらいいかわからなくて、ここに来ました」と、気軽に頼っていただけるクリニックでありたいですね。
【副院長】私も産婦人科の領域にとどまらず、女性の心身をトータルで診られるクリニックをつくり上げることが目標です。お産や婦人科診療に関する相談はもちろん、女性の健康全般に関わる最初の窓口として利用していただけたらうれしいです。