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目黒 則男 院長の独自取材記事

目黒クリニック

(大阪市東成区/今里駅)

最終更新日:2022/03/17

目黒則男院長 目黒クリニック main

大阪市営地下鉄今里筋線・千日前線の今里駅の8番出口から徒歩1分のクリニックモール内に「目黒クリニック」がある。院長自ら設計したというクリニック内は明るく、車いすでの来院に配慮して廊下の幅を広めに取るなど、ゆとりのある造りとなっている。院長の目黒則男先生は、大阪府立成人病センターに長く勤務し、数多くの泌尿器のがん治療にあたってきた。クリニックでは、頻尿、排尿障害といった一般的な症例はもちろん、専門的な知識と経験を生かしてがんの診療についても対応している。また、在宅医療に積極的に取り組み、泌尿器科のケアが必要な患者やがん患者のケアにあたっている。忙しい毎日を送る目黒院長に、泌尿器の疾患や在宅医療のやりがいなどについて話を聞いた。

(取材日2017年9月12日)

医師としてのあるべき姿を、恩師から学んだ

泌尿器科を選ばれたのはなぜですか。

目黒則男院長 目黒クリニック1

腎臓の移植に興味を持っていたからです。もっとも、移植手術そのものは外科的な医療ですが、手術の前後の治療はどちらかといえば内科的な医療といえます。研修時代はどちらかといえば外科的な医療を志向していたので、興味が次第にがん治療のほうに向かい、卒業後は大阪府立成人病センターに勤務しました。がんを専門的に扱う病院なので、腎臓、膀胱、前立腺といった泌尿器のがんの手術や、手術の前後の治療を中心に数多くの経験を積みました。

訪問診療に興味を持たれたきっかけは。

学生時代の1986年に、大学の学園祭で当時の先端医療の心臓移植と、それとはまったく違う領域のがんの告知の講演を企画しました。その際に、がんの告知についてお話しくださったのが、在宅でがんの看取りを早くからされていた先生でした。当時、僕には3人の同級生がおり、先生は学生とわが子のように接してくださり、お宅にお邪魔しては、看取りの話はもちろん、例えば、「患者さんの体だけではなく、心も診ないといけない」など医師としての理念についても教えてもらいました。こうした経験があったので、成人病センターでは緩和医療や看取りが必要な患者さんも診ていました。また、「がん治療をずっと続けてきた人の気持ちを理解するために、医師もがんの治療を突き詰めないといけない」と教えていただき、専門的ながん治療に真剣に取り組みました。

今も大切にされている恩師の言葉を教えてください。

目黒則男院長 目黒クリニック2

一番印象に残っているのは、「がん患者さんを診るときに手を握ってあげないといけない時があるよ」という言葉です。医師になると、自分の技術や知識を駆使して、患者さんを治すということばかりに意識がいきがちです。しかし、患者さんにとって医師は、いわば鎧を着たような近づき難い存在なので、医師のほうから手を握ることが大事で、何も言わなくても、顔を見つめているだけで気持ちが癒やされる、ということですね。言い換えれば、患者さんには一人ひとり大切にされていることがあるので、医師が大切と考えることを押しつけるようなことをしてはいけないということです。先生との出会いがなければ、在宅医療に興味が向くことはなかったですし、先生の言葉は、今なお僕の医師としての考え方に強い影響を与えています。

生活習慣なども踏まえて、病気の原因を探る

明るく居心地の良いクリニックですね。

目黒則男院長 目黒クリニック3

恩師がそうであったように、僕も50歳を超えたら専門である泌尿器科と在宅医療のクリニックを始めようと思って開業しました。クチコミで受診される女性の患者さんの割合が高く、開放的な雰囲気の医療モールにあって女性でも受診しやすいのではないでしょうか。もともと建築に興味があったので、クリニックの内装については、僕が自分で一から図面を引き、壁や床の材質、設置する椅子などもすべて自分で選びました。患者さんから治療室や看護師が点滴を用意する部屋などは見えないように配置して、車いすでも無理なく通れるように廊下の幅もたっぷり取りました。

泌尿器科ではどういった訴えが多いのですか。

女性の場合は、膀胱炎や過活動性膀胱、男性は前立腺肥大や排尿障害のご相談をよく受けます。頻尿の相談も多いのですが、診察してみると意外に泌尿器には問題がないケースも少なくないものなのです。水分の取り過ぎが原因の方もおられるし、眠りが浅くて夜間頻尿になっている方や、冷え症からトイレが近くなっているという方もいらっしゃいます。また、高齢になると昼間取った水分が夜間に尿になるので、ある程度、夜の排尿回数は多くなります。夜に排尿できないと、体がむくんでしまってかえって問題です。クリニックでは、ちゃんと尿が排出されているかを確認するために超音波エコーで残尿を調べますが、診断には生活習慣なども関わってくるので、24時間の排尿日誌をつけてもらって判別します。

頻尿が気になる場合、受診すべき目安を教えてください。

例えば、晩酌にビールを飲むと、夜にトイレに行きたくて目が覚めるのは自然なことなので、一概に何回以上なら受診という基準は定まっていません。トイレのために1回起きるというのは、割合誰にでもあることだと思います。その日の飲食や気候などによっても変わります。しかし、2回あるいは3回以上起きることが日常的になって、眠りが妨げられるという状況であれば、通常とはいえないので受診をお勧めします。生活習慣などが原因のこともあるので、きちんと調べて原因を特定するほうが安心できますよ。

診察を通じてがんが見つかることもありますか。

目黒則男院長 目黒クリニック4

泌尿器のがんでいえば、腎臓がんの8割は検診で見つかるといわれるので、当院で発見することはほとんどありません。一般的にクリニックの診察で見つかるのは、基本的に何らかの症状を伴うケースで、尿が出しにくい、頻尿などの症状が現れる前立腺がんと、血尿が出て気づくことが多い膀胱がんですね。がんを発見した場合は、早急に必要な治療を受けられるように提携病院などをご紹介します。

地域に根差し、寄り添うクリニックをめざす

在宅医療は苦労が多いというイメージがあります。

目黒則男院長 目黒クリニック5

在宅医療を始めた当初は、患者さんを「患者さん」として考えていたので、何かが起こると病院と同様のことをしなくてはいけないと思っており、とても大変でした。しかし、やり始めて2年目ぐらいに、末期の前立腺がんの患者さんと出会いました。その方は、眠るようにして膝の上で逝った愛犬のように、静かに、自然に最期を迎えたいと考えておられ、実際、願っておられたように亡くなりました。この患者さんと出会ったおかげで、人には自然に天寿を全うする力があり、何もせずに静かに最期を迎えることを望んでおられる方もおられると知りました。何もできない自分について悩んでいた気持ちが少し楽になり、こうした患者さんに対しては「人」として見ることを大切にしています。

24時間対応の多忙な毎日の中で、息抜きは何ですか。

妻とよく飲みに行きます。食事もお酒も特に制限はしていないのですが、最近はお酒が弱くなりましたね。急な呼び出しがありそうな時は、飲まないようにしていますが、24時間体制というほどではありませんよ。在宅医療は病院とは違って、その患者さんらしく日々を過ごしていただくことが大事です。当然、熱を出したり、転んだりすることもあれば、調子が良い日も悪い日もあります。しかし、患者さんにネガティブなことは言わないという点でご家族とも合意しているので、ちょっと熱が出たという場合には呼び出されません。ご家族は自分がちゃんと患者さんをお世話できているかどうかという不安を持っておられますが、患者さんに寄り添うこと、僕が恩師に言われたように手を握ることが大切だと伝えると、気持ちが楽になられるようです。

読者にメッセージをお願いします。

目黒則男院長 目黒クリニック6

地域に根差し、地域の方々に寄り添うクリニックをめざしていますので、心配なこと、気になることがある時は遠慮せずに受診してください。尿の出が悪いと受診されたものの、よくよく話を伺うと、心配事でよく眠れなかったことが原因というケースもあります。このように問題がなければ安心できますし、疾患が見つかっても早めの対応が大切なので、お気軽にご相談ください。在宅医療についても、本当に帰れないという方はほとんどおられませんので、患者さんご本人が家に帰りたい、ご家族が帰してあげたいと考えておられるなら、一度ご相談にお越しください。

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