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國枝 良行 院長の独自取材記事

あけぼの診療所

(宮崎市/田野駅)

最終更新日:2021/11/02

國枝良行院長 あけぼの診療所 main

宮崎市内から都城市に向かう国道269号線沿いに立つ「あけぼの診療所」。2014年の開院以来、國枝良行院長が勤務医時代のさまざまな経験を生かし、在宅医療も含め、内科・外科・精神科と幅広い分野を展開するクリニックだ。「病気は必ずしも戦うものではなく、必要に応じて上手に共存するもの」というスタンスで、患者の体と心両面からプライマリケアを提供する。同院で受けられる医療や今後の展望について、笑いを交えながらも熱く語ってくれた。

(取材日2021年9月22日)

多くの経験を生かして在宅医療や緩和医療など幅広く

医師になった理由やこれまでの経緯を教えてください。

國枝良行院長 あけぼの診療所1

受験の時に父が亡くなって大学へ行くのが難しくなり、スーパーに勤めたんです。そこに大学生のアルバイトの子も来ていて、その様子を見ていると、やはり大学へ行きたいと思うようになって。ただその頃は就職氷河期で卒業しても就職先がないのは目に見えていたので、年齢的なハンデの少ない医学部を選んだんですね。偏差値的に頑張れば何とか入れそうな大学を見つけ、運良く受かったというのが正直な話なんです。当時研修医は給料も安く、外科ならアルバイトで何とか食べていけると聞いて外科へ進みました。どちらもきちんとした理由でなくてすみません(笑)。開業に踏み切ったのは在宅医療をやりたかったからです。この辺のエリアは老人ホームは多いのに在宅医療をする病院が不足していたので、ここだとお役に立てるかなと考えて7年前この場所に開業し、現在に至ります。

開業されるまで、いろいろ経験されたとか。

はい。私の場合、県病院とか医師会病院とかではなく個人の病院に3ヵ月、半年単位で異動させられる感じで、履歴書に書ききれないくらい、いろんな病院に行き、手術、麻酔、内視鏡検査、外来診療、消化器、呼吸器……いろんなことを経験してきました。当時は総合診療といった考えもなく、外科が全部やる時代だったんです。その後、いろいろあって精神科に勉強に行って、その間大学院で緩和医療や精神腫瘍の勉強もしました。そういう雑多な経験が、今に生きているのかなと思います。

外科から、精神科や緩和医療に携わるようになったきっかけは?

國枝良行院長 あけぼの診療所2

精神腫瘍学(サイコオンコロジー)というジャンルがあるんです。がん患者さんやご家族の精神的なケアを行う分野です。大学院の研究のテーマにもしました。患者さんご本人もそうですが、介護ノイローゼの方もすごく多いです。特に中高年の女性でがんや認知症の肉親の介護で疲れたという方が結構おみえになります。緩和医療については昔、がんの再発を繰り返す若い患者さんを担当していました。まだ35歳くらいで大腸がんになってしまって化学療法のほか手術も3回くらい行ったのですが、複数個所にがんが転移して亡くなられたんです。その時まではモルヒネを使ったこともなくむしろ否定的だったんですが、その患者さんの痛みを何とかしたいという思いから、緩和医療について真剣に勉強するようになりました。

「体と心は一つ」の考えのもとプライマリケアに注力

受診されるのは何科の患者さんが多いのですか?

國枝良行院長 あけぼの診療所3

内科7割、精神科2割、外科1割です。プライマリケアといって風邪だとか血圧だとか、大きな医療機関へ行くほどではないような一般的な疾患や症状を診るのが当院の役割です。私たちプラマリケアに携わっている医師としては大きな病気を見逃さないことが大事です。あとは連携ですね。学生生活を送り、医師として修行を積んだのもここ宮崎なので、宮崎の大きな病院の先生方はほぼ知っています。そのネットワークは私の強みかなと思っています。また、プライマリケアをするなら先端の知見も持っておかなければいけないので、論文を読んだり研究会に参加したりして常に知識の更新は心がけています。

内科が中心なんですね。

ただ私的に、これは体の問題、これは心の問題、とあまり分けてはいないです。体と心は一つ。がんが進行した患者さんですごく元気な人はいませんし、メンタルが弱っている人は頭が痛い、おなかが痛いなど、たいてい内科の症状が出ます。体か心どちらかが極端に健康、不健康ということはないんですね。特に高齢で認知症の方がよく来られるんですが、認知症を診てくださいではなく、認知症はわかっているけど、まったく会話が成り立たないから診てくださいというパターンが多いです。そういう意味でも精神科もやっていて良かったと思います。また、外科と精神科は対極みたいに言われますが、「がんだから痛みが出る」というのは安直な考えで、メンタルからの痛みである場合もあるし、がんの治療をしようにも、本人が落ち込んでしまって治療できないという相談で来られる患者さんもおられます。

在宅医療にも力を入れていますね。

國枝良行院長 あけぼの診療所4

はい。とはいっても、私が無理なく診療できる範囲にとどめています。引き受けるのは20人でも30人でも簡単でしょうが、患者さん一人ひとりを本当にしっかり診られるかと言ったら私の場合は難しい。私の能力、医院の規模、地域の環境などいろいろ考えて100人以下に止めています。100人診たら私の体力がきつくなってしまいますし、患者さんの顔と名前が一致しないということにもなりかねない。余裕のない状態で診察をすると雑になるので、それを避けるために一人ひとりをじっくり診療できる範囲をこれからもキープしていく考えです。

幸せに生きるため時には病気と共生していく方法を模索

仕事のやりがいはどんな時に感じますか?

國枝良行院長 あけぼの診療所5

患者さんに感謝されることです。実際、医師というのは割に合わない仕事だなと医者仲間で話をすることがあるんです。これだけの労力とこれだけの時間を仕事に捧げたら、ほかの仕事だともっともうかるかもしれない。それでも仲間には誰一人「もうかる」ことを考えていないんですよね。やっぱり、この仕事を続けているのは、患者さんの喜ぶ顔が見たいから。患者さんに「ありがとう」と言われるのが一番の幸せです。

健康教室や講演会など、地域とのお付き合いも深いそうですね。

当時は知名度がなく、まずは地域の皆さんに知っていただくためによく開催していました。今は地域連携のためにやっている「たこの会」や勉強会にもこまめに参加していて、私のことを知らないという人も減ってきたので、開いていません。田野で買い物したり外食したりすると、「先生、昨日あそこにいたでしょ」とか言われるくらいになりましたからね(笑)。逆に今は地域の講演会などに呼ばれるようになりました。大学に勤務している時は発表が嫌で嫌で仕方がなかったんですが、今は人前に出るのも慣れてきました。寸劇とかを交えてお話することもありますよ。

今後の目標について教えていただけますか?

國枝良行院長 あけぼの診療所6

近い将来、大量死の時代が来るといわれていますが、宮崎には終末期の患者さんやご家族をケアするホスピス的な施設がすごく少なくて、患者さんのニーズと供給量がまったく合わない状況です。地域によってはホスピスを選べるのですが、宮崎だと選択肢はほんのわずかしかない。死なせない医療も必要ですが、「死」までをどのようにその人らしく楽しく生きるかを考えることも大切だと思います。だから、自分らしく過ごせるホスピスをつくりたいというのが今の目標です。治る病気は治したいけれど、治らない場合もある。その時は患者さんが病気と戦うのではなくうまく共生していくお手伝いをする。患者さんとご家族が幸せを感じてくれるようにサポートするスタンスを大切にしていきたいと思います。

読者にメッセージをお願いします。

体と心は一つなので、当院ではそれを前提に治療をしています。若い人がよく「私はメンタルが弱くて」と言いますが、メンタルに不調を来している場合は、朝食を食べていない、夜寝ていないなど生活習慣がおかしいことがほとんどなんです。そういう生活だと体も心も乱れてくるのはある意味当たり前。やはり生活の乱れを正すことが、生きていく上で一番大事なことなので、そういうこともアドバイスするようにしています。また、場合によっては病気と長くお付き合いしていかなければならないケースもあります。先ほども言いましたが、そういうケースでは必要に応じてお薬を飲みながら戦うのではなく、病気とうまく付き合っていく。大切なのは「幸せに生きていくこと」です。病気があっても幸せに生きている人はいっぱいいますし、病気がなくてもつらい生き方をしている人もいます。皆さんが幸せになるサポートをしていくのが私の使命だと考えています。

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