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山田 毅 院長の独自取材記事

やまだホームケアクリニック

(富山市/南富山駅)

最終更新日:2022/02/24

山田毅院長 やまだホームケアクリニック main

「やまだホームケアクリニック」は、富山市高屋敷にある内科・外科・整形外科・在宅医療・リハビリテーションを提供しているクリニックだ。2017年に同院を開業した山田毅(やまだ・つよし)院長は、外科医としてキャリアをスタート。総合病院の救急部門やへき地医療で診療経験を積む中、在宅医療の需要が追いついていない現状を知り、自ら開業を決意した。現在は訪問診療と並行して外来診療も提供。総合病院の救急部門で培った、多角的な視点を持ちつつスピーディーに診断・治療を行うスキルを生かし、総合的な医療の提供に努めている。そんな山田院長に、訪問診療をメインとしたクリニックを開業しようと思ったきっかけや、訪問診療を始めてわかったこと、思い描く地域医療について、たっぷりと語ってもらった。

(取材日2022年1月14日)

富山市で訪問診療をメインとした診療を開始

医師になるまで、医師になってからの経緯を教えてください。

山田毅院長 やまだホームケアクリニック1

子どもの頃は、宇宙に関わる仕事に就きたいと思っていました。ところがある日、日本人女性として初の宇宙飛行士となった向井千秋さんが、医師から宇宙飛行士になったことを知り、「医師と宇宙飛行士は両立できるんだ」と思ったことから、医師をめざすようになりました。大学を卒業し、専門は外科でしたので、手術を中心にしていました。医師になった当初から、現在当院が行っているようなさまざまな診療科による総合的な診療は、「いつかはやりたい」と考えていたので、救急医療も経験しておきたいと思い、富山県立中央病院の救命救急センターに入職しました。もちろん、私がめざす総合的な医療と救急医療は異なるものですが、救急医療では人命を救うために短時間で話を聞いたり、多岐にわたる疾患を診たりして、数分内に選択や判断をしなければなりません。この経験は、現在の診療にも生かされています。

その後、訪問診療を主軸としたこちらのクリニックを開業されたわけですがきっかけは何だったのでしょう。

大学卒業後にへき地医療にも携わったのですが、へき地医療と救急医療、この2つに携わって私が感じたことは、「家で最期を迎えられたらいいのに」ということでした。へき地医療や救急医療では、心臓マッサージをされて、救急車で病院に運ばれる高齢の患者さんを大勢見てきました。しかし、家を訪れて診療できる医師が身近にいれば、家族みんなに囲まれて、住み慣れた家で最期を迎えることもできたはずです。しかし当時、富山市では訪問診療に対応する医療機関はまだ数も少なく、このままでは私の希望もかなえられそうにありません。そこで数年じっくり考えた後、「自分でやろう」と決意しました。まず前段階として、2014年から別の場所で訪問診療をメインに診療し、高齢者の救急医療や終末期医療に関わってきました。

その後2017年にこちらのクリニックを開業したのですね。順調なスタートでしたか?

山田毅院長 やまだホームケアクリニック2

いざ訪問診療を始めてみると、足りないものが多いことに気づきました。それは、薬剤師、看護師、介護ヘルパー、ケアマネジャー、地域包括支援を行うほかの病院との連携体制、ネットワークです。特に在宅療養においては多職種間での連携体制が重要となりますので、救急医療、高齢者の医療、総合医療、緩和医療などの必要な医療を一つ一つつなげていきました。本当に何もないところから始まったので、患者さんを中心にして、必要な医療をつなげていくという感じで広がっていきました。また同時に、医師、看護師、薬剤師などがそれぞれ「在宅療養の患者さんには、このようなことをやってほしい」と互いに意見を出し合いました。そうするうちに、多職種が集まれる場所が必要だと思い、さらに患者さんのご家族が集まって語れる場所も必要だと考え、このクリニックを開業したのです。

訪問診療はみんなが連携して行うチーム医療

訪問診療とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

山田毅院長 やまだホームケアクリニック3

訪問診療は、病状により通院が困難な方が、家などで生活しながら受けることのできる医療です。基本は医師と看護師が2週間に一度訪問し、重度の疾患の場合は、訪問する頻度が高くなります。医療器具を家に配置して、普段は家族やヘルパーさんが看護します。みんなが連携してチームで医療を行うのです。私たちは「ほとんど在宅、時々入院」と言っているのですが、希望がある時や、どうしてもという時に入院をしてもらいます。現在は、病院に入院しても、ご自宅で療養しても、提供できる医療に大きな差はないと考えています。

診療において、特徴的なことはありますか?

当院では、初診の時に「容体が急変した場合はどのようにしたいか」「入院が必要になったときは、どうするか」などをお尋ねし確認することにしています。A4サイズの用紙2枚ほどの資料を用意していて、考えてほしいことをまとめています。日本では死をタブーとして、終末期について話し合うことがあまりされていません。しかし、「アドバンス・ケア・プランニング」といって、将来に備え、患者さんご本人と、そのご家族、医療者、介護者が話し合うのは非常に大事なことだと思います。当院から患者さんやご家族に質問することで、ご自身でも考えるきっかけになったり、家族と話し合うきっかけになったりしています。そして、患者さんが考えた内容は、ICTツールを利用して医療者や介護者でしっかりと共有し、オーダーメイド医療を行うために役立てています。

訪問診療で、印象に残っていることはありますか?

山田毅院長 やまだホームケアクリニック4

医師や看護師にとっては、自分たちがいつも働いている病院やクリニックが「ホーム」ですが、患者さんにとっては「アウェー」となります。一方、訪問診療の場合は、患者さんにとって家が「ホーム」で、私たちが「アウェー」を訪れることになります。患者さんのホームに入ってみると、どのような生活をされているか、どのような考え方をされるのかが見えてきます。生き方一つ一つに物語があり、そこから学ぶことが毎回あります。どの患者さんも印象に残っています。生き方や人としての深みや広がり、人間としての優しさを勉強させてもらっています。

かかりつけ医として地域の人たちをつなぐ「街づくり」

クリニックでは外来診療も行っているのですね。

山田毅院長 やまだホームケアクリニック5

在宅医療は、多くの人にとって「最期の医療」というイメージが強いかもしれません。しかし、それだけでなく症状が回復し、再びクリニックに通えるようになることをめざすのも、本来の在宅医療です。外に出るということは、社会生活の一つなので、外来診療に来ていただくことは、重要なリハビリテーションにもなります。訪問診療は最期の医療という偏ったイメージを払拭するためにも、私たちは訪問診療と並行して、外来診療も行うことにしたのです。

クリニックの建物内にはカフェも併設されているのですね。

家族も気軽に相談しやすく、病気ではないけれど集まりたくなる場を提供したいと思い、カフェを併設しました。このカフェのスペースを活用して、毎月、認知症や骨粗しょう症をテーマにした健康教室や、健康に関するミニイベントも行っているんですよ。みんなが集まることのできる場所を作ることで、何かあった時、私たちにも気軽に相談してもらえればいいなと思っています。

最後に、読者にメッセージをお願いします。

山田毅院長 やまだホームケアクリニック6

当院では総合的な診療を実践しています。「何科であっても、どんなことでも聞きますよ」と患者さんにお伝えすると、内科の診療で来られていた方が、それとは別に整形外科疾患の話をされたり、皮膚科の症状の話をされたりします。時には、医療とは関係のないご家族のお悩みを話される方も。開業してみて、多くの方が「相談したい」「診てほしい」という思いを持っていたのだなと感じました。皆さん、かつての日本の医療のスタイル、なんでも気軽に相談できるかかりつけ医を求めていたのです。それがわかった今、地域の総合的な医療を提供する当院の大事な役割を実感しています。在宅診療でも外来診療でも、24時間365日、地域の皆さんを守りたいと思っています。それが街づくりの原点だと思っています。特に気になる症状がなくても、いつでも気軽にいらしてください。カフェのご利用だけでも大歓迎です。情報交換もできますので、気軽にお立ち寄りください。

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