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米川 元晴 理事長の独自取材記事

おひげせんせいのこどもクリニック

(札幌市豊平区/豊平公園駅)

最終更新日:2021/10/12

米川元晴理事長 おひげせんせいのこどもクリニック main

豊平公園駅から徒歩3分の場所にある「おひげせんせいのこどもクリニック」。同院では、診察やワクチン接種はすべて9つの個室において行われ、患者やその家族同士の接触がほとんどないユニークな造りだ。この形を考えついたのは理事長の米川元晴先生。「ワクチンを接種しておけば助かったのではないか、と思われるような命をたくさん見送ってきました。まずは故郷である札幌からその重要性を伝えていきたいのです」と穏やかに、しかし強い信念を語る。そんな米川理事長に、クリニックの成り立ちやワクチン接種など幅広い話を聞いた。

(取材日2021年7月1日)

ワクチン接種に注力。診療室は個室で感染症対策も

先生が医師の道をめざしたきっかけからお聞かせください。

米川元晴理事長 おひげせんせいのこどもクリニック1

父も祖父も医師でしたから、イメージしやすい職業だったということは大きいと思います。はっきりとした転機といえば、中学生の頃に祖母を亡くしたことでしょう。がんで最後は家で父が看取るという形でしたので、そこで初めて僕自身は「身内が死ぬ」ということを体験したんです。自分だけでもこんなに悲しいのに、世界中ではもっと人が亡くなっていて、その中には子どもも多く含まれている。それは誰にとってもつらいことですが、自分が医師になれば、その何十万、何百万人の子どもが亡くなってしまうことを防ぐ一助になるのではないか、と思ったことが医師をめざす覚悟を決めた出来事だったと思います。一時期は発展途上国など海外に行くことも考えましたが、医師になってから、医療分野では日本こそが後進国だと感じるようになりました。

そう感じるようになったきっかけは?

実際に小児科の医師として働き始めた20年ほど前、日本はワクチン後進国といわれていたんです。また、自分が実際に看取った子たちの半分以上は、当時日本ではまだ使えなかったワクチンが接種できていれば助かったのではないかと思うのです。ですから僕がやるべきことは、ワクチン接種の重要性の周知だと考えています。ワクチンを打てる環境にしたいですし、接種すれば命に関わるような病気の予防につながるということを、もっとたくさんの方に知ってもらいたいんです。「子どもの命を救いたい」というのが僕の心からの願い。海外に行くのではなく、まずは身近な人を助けることが重要なのではないかと考え、地元で小児科のクリニックを開業しました。

こちらのクリニックの特徴をお聞かせください。

米川元晴理事長 おひげせんせいのこどもクリニック2

大学卒業後、医局からさまざまな病院に派遣されたのちは、東京で3院ほどクリニックの立ち上げに携わりました。そこで感じたのは、僕の理想を形にするためには東京ではお子さんが多すぎるという点でした。そこで都内よりも子どもの数が少ない札幌に戻り、9つの個室を用意し、それぞれ患者さんとそのご家族が接触することなく診察やワクチン接種などが受けられるようなクリニックをつくりました。この形は僕自身が数年をかけて編み出したものです。ワクチン接種の時間帯を分けているクリニックは多いですが、たとえどんなにクリニック側が注意していても、水ぼうそうといった感染症は、どこかからまぎれこんでいる可能性は捨てきれないのです。医療機関に来たのにそこで別の病気をもらうなどあってはならないこと。そのためには、最初からそれぞれの患者さんを別室で診察すればよいのだと考えました。もちろん室内の換気ができる空調システムも導入しています。

将来に備えた適切なワクチン接種を

だから完全予約制を導入しておられるのですね。

米川元晴理事長 おひげせんせいのこどもクリニック3

そうです。また道内の幅広い場所から通ってほしいという思いもあり、駐車場のスペースや接している道路の混み具合なども考慮して選んだのがこの場所でした。実際に札幌市外からの患者さんも多く、県外からいらっしゃるケースもあります。「子どもにとって良い結果につながる可能性のあるワクチンを打たせたい」と考える親御さんが探して来院してくださるのです。子宮頸がんワクチンはその大きな例の一つですね。また子宮頸がんの原因となるウイルスは、喉や肛門のがんの原因でもあります。ですから、パートナーを守るために接種してほしいという点を特に男性にも伝えたいです。ワクチンの種類によっては自費扱いになるものもありますが、ワクチン接種で予防がめざせる病気があること、また留学する場合、学校によっては多くのワクチン接種が必要になることもあるという点なども、もっと発信していきたいと考えています。

先生が診察の際などに心がけていることは何でしょうか?

必要な薬であるかどうかをしっかり精査する点ですね。例えば抗生物質を使いすぎると、いずれ耐性ができてしまうという点も指摘されていますね。子どもの風邪のほとんどはウイルス感染によるもので、細菌によるものは少ないです。抗生物質を使うべきなのは後者です。ですから「この病気は本当に抗生物質が必要なのかどうか」をしっかりと説明し、親御さんにも理解していただいています。処方されたお薬がすべての病気を治すということでは残念ながらなく、大事なのはお子さん自身の力です。医師ができるのはそのサポート。そのためには「この薬は本当に必要なのか? 乱用になっていないか?」という見極めも重要になってくるのです。

先生が考えるクリニックの役割とは?

米川元晴理事長 おひげせんせいのこどもクリニック4

クリニックは「救命」をメインに行う場所ではないと考えています。重症の方を救うのは基本的に病院の役目。クリニックはその病院に、必要な場合に患者さんをすぐに「つなぐ」機関。ですからクリニックと病院では役割が違いますし、その分担が大事なのです。ワクチン接種も当然ですが、患者さんにとって最初の相談窓口であるのがクリニックであり、すべてのお子さんにとってのほとんどの病気は、小児科が窓口になることがベターだと僕は考えています。ちなみに、当院では通常の風邪などであれば高校生、もしくは成人する頃までは小児科で良いと考えていますが、クリニックによって考え方は違いますね。

玉石混交な情報を見極めるためにもかかりつけ医は重要

クリニック名がとてもユニークですが、その由来や、先生の休日の過ごし方についてお聞かせください。

米川元晴理事長 おひげせんせいのこどもクリニック5

患者さんや親御さんは、若い先生だと不安になることもあります。そのため、昔の先生もそうですが、ひげを生やすことである程度落ち着きを感じられるようにして、患者さんに安心してもらっていたんですね。僕もそうやっていたら、だんだんと「おひげ先生」と呼ばれるようになり……開業する際に、せっかくだからこの愛称を取り入れることにしたんです。他の先生たちからは「先生、もうひげは剃れませんね」なんて言われることもあります(笑)。趣味は、体を動かすのが好きなのでマラソンやピアノが多いですね。一度家族全員でホノルルマラソンに参加したのですが、当時小学生だった子どもたちはフルマラソン完走後でもすぐにプールに直行していて、子どもの生命力の強さを痛感しましたね。

それはすごいですね。いずれクリニックを継いでほしいというお考えは?

それはありません。僕も父・祖父が医師ではありましたが、自分自身の考えで開業しています。子どもたちにも医師の道を押しつけることはないですし、自分の好きなことをやりなさいとも伝えています。どの道を選ぼうとも、そのサポートを全力で行っていくつもりです。クリニックとしては、やはり今の形をしっかりと推し進めていくことが一番ですね。ワクチンは命を守るためのものであるという周知もしていきたいですし、このクリニックの診察の形をもっと全国に広めていきたいとも考えています。実際に福岡県などの遠方からも、興味を持った方が見学にいらっしゃることもあります。それに、もしかしたら僕とは相性が合わないけれど、このクリニックの形は良いと考えている方もおられるかもしれません。この形のクリニックが増えれば、そういう方にとっては医師の選択肢も増えますよね。ひいてはそれがお子さんの命を守ることにもつながるのだと考えます。

最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

米川元晴理事長 おひげせんせいのこどもクリニック6

インターネットがここまで発達した現代、情報も玉石混交です。明らかな間違いの情報も、中にはあります。信頼できるクリニックを見つけるということは、それらの情報から正しいものを選び取り、医師とコミュニケーションを取る第一歩だと思います。いろんなことを相談できるかかりつけ医をぜひ、親御さんには見つけてほしいですね。当院でももちろん、ワクチン接種の重要性や育児の不安など、ぜひ何でも、お気軽にお話しくださいね。

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