社会生活での支障の軽減を図る
発達障害の治療
菅原クリニック
(京都市下京区/京都駅)
最終更新日:2024/03/13
- 保険診療
自分が置かれた環境にうまく適応できず、「周囲の人々と良い関係を築けない」「忘れ物や落とし物が多い」「落ち着きがなく集中できない」「仕事がうまくいかない」など、学校生活や社会生活に息苦しさや不自由を感じている人は増えている。京都市下京区にある「菅原クリニック」の菅原圭悟院長は「こういった悩みを抱えている人の中には、発達障害を持っている人が数多く隠れています」と話す。自閉症やADHD、学習障害と呼ばれる3つの特性を柱とし、複雑に絡み合いながらうつや不登校、ひきこもりの原因ともなり得る発達障害とはどんな病気なのか。精神科医としてあらゆる年代の発達障害に向かい合う菅原院長に、その原因や治療方法について詳しく話を聞かせてもらった。
(取材日2024年2月7日)
目次
社会生活での不都合を軽減するための一歩として、まずは気軽な受診を
- Q発達障害とはそもそもどのようなものなのでしょうか。
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A
発達障害は、その人の脳が持つ特性によって脳内の情報処理や制御に偏りが生じ、社会生活に支障を来している状態をいいます。主に自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つに分類されますが、実際には複数の特性が複雑に絡まり合っていることが多いため、症状は一人ひとり異なります。画像診断などではっきりと診断できるようなものではなく、いうなればその人の「脳の癖」のようなもの。完治が見込める病気ではないため、本人や家族、周囲の人々が発達障害について理解し、適切な接し方、生活環境の調整、特性に応じた療育や薬物療法によって社会生活をサポートすることが大切です。
- Q患者さんにはどのような特徴が見られますか?
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A
幼児期に、目が合わない、他人に関心がない、落ち着きがない、かんしゃくが強い、感覚過敏といった傾向から発覚することが多く、学童期以降では、人間関係がうまくいかない、ケアレスミスが多い、約束が守れない、勉強や仕事に集中できない、文章を読んでも内容が理解できない、やる気はあるのに計算ができないなど、勉強や仕事にも支障を来すことで気がつきます。個々の症状は特に珍しいものではなく、「自分にもそんな面はある」と思うようなことですが、これらが重なることで深刻な問題となり、特性が理解されないことで「さぼっている」「努力が足りない」と誤解され、うつやひきこもり、不登校などの二次障害につながる可能性が高まります。
- Q大人になってから発覚する発達障害もあるのでしょうか。
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A
幼少期には「子どもだからそんなもの」だと周囲に許容されていることがたくさんあります。例えば宿題を忘れても、先生や親に叱られるくらいです。また、両親や先生がサポートしてくれることも多いでしょう。しかし、これが社会人となれば話は別です。割り振られた仕事を期限までにこなせなければ、会社に大きな損害を与えてしまうかもしれません。また、周囲の目もどんどんシビアになっていくことでしょう。自己管理が必要な大人の社会は、発達障害を持つ人にとって非常に過ごしにくいもの。「何とかうまくやりたい」という気持ちから気を使いすぎたり自己否定を繰り返したりした結果、心の病気になって発覚することも少なくありません。
- Q家庭環境が影響を及ぼしていることもあるのでしょうか?
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A
誤解されている方が多いのですが、発達障害は「生まれつき持った脳の特性」です。家庭環境やしつけ、愛情不足によって発達障害に「なる」ことはありません。わが子が発達障害だと診断されると「私の育て方が悪かったのか」と嘆く方は多いのですが、そんなことはありませんよ。ただ、幼少期に発覚した場合、その人が持つ特性との付き合い方を本人はもちろん、ご家族や周辺の人々も学ぶことができます。そうすれば、進学や就職の際に困り事が少ない場所を選ぶ指針にもなるでしょう。悩む必要はなく、社会の中に「その人らしく」いられる場所があればいいのです。「もしかしたら」と思ったら、医療機関や支援機関にまずは相談してください。
- Q診療の特徴を教えてください。
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A
当院は初診時に、ご本人やご家族の困り事についてしっかりと時間をかけて聞き取りをしています。これはお子さんの場合でも同じで、診察室には本人が希望しない限りは保護者とは別に入ってもらいます。何歳であっても、たとえ親子であっても知られたくない心の問題があると思うからです。また、診断は国際的な診断マニュアルに沿って行います。もちろん診断後もエビデンスに沿った治療を丁寧に行っており、投薬の必要があれば依存性が高い薬を避けて処方します。治療の目標は「本人の困り事を軽減すること」です。必要な支援を受けたり、トレーニングを受けたりして対処法を身につけていきましょう。