早川 弘輝 院長の独自取材記事
鈴鹿クリニック
(鈴鹿市/加佐登駅)
最終更新日:2021/10/12
鈴鹿市伊船町にある「鈴鹿クリニック」は、総合的な医療の提供をめざし2003年に開業。内科・外科・血管外科・肛門外科・リハビリテーション科・胃と大腸の内視鏡検査などの幅広い診療と、在宅診療に対応しながら、地域医療を支えている。院長の早川弘輝先生は外科を専門とする医師。長きにわたって大学病院や総合病院の外科で研鑽を積んできた。同院でも下肢静脈瘤、鼠径ヘルニア、痔の日帰り手術を提供。これらの日帰り手術を求めて、地元以外からも多くの患者が訪れている。日帰り手術に注力する理由などについて、早川院長に話を聞いた。
(取材日2019年10月11日)
ホームドクターをめざし、幅広い診療と在宅診療を提供
開業して16年になりますが、改めて開業の経緯を教えてください。
私は生まれも育ちも鈴鹿市で、医師になったら地元で開業したいという思いがありました。専門は外科です。外科を専門に選んだのは、地域の開業医として診療することを考えたとき、外科を知っていればゼネラリストとして、広く診療できるだろうという思いがあったからです。昔の外科は脳外科・血管外科・甲状腺と広く学ぶことができました。三重大学医学部附属病院・市立伊勢総合病院・松阪市民病院・名古屋記念病院・鈴鹿回生病院などの外科で15年間ほど研鑽を積み、2003年に総合的に診ることができる地域のかかりつけ医をめざして、当院を開業しています。患者さんからのニーズや時代に合わせて、新しい機材やシステムなどを導入しながら、16年かけて進化してきたクリニックだと感じています。
改めて診療内容をご紹介ください。
内科・外科・肛門科・血管外科・リハビリテーション科・胃の経鼻内視鏡検査や大腸の内視鏡検査などに対応し、診断・治療とその後のケアまで総合的な診療を行っています。また「何科に行けばいいのかわからない」という患者さんの相談にも応えています。こうしたプライマリケア(初期診療)を通して、もし専門的な治療が必要な場合は、速やかに専門の医療機関を紹介できる体制も整えています。当初は、夜間も患者さんから依頼があれば診療にあたっていましたが、介護施設からの要望で訪問診療を始めてからは、夜間診療は困難になってきました。代わって近年、当院が最も力を入れているのは、鼠径ヘルニア・下肢静脈瘤・痔の日帰り手術です。患者さんからの希望でヘルニアの手術に対応したのをきっかけに、今ではこの日帰り手術3本柱が当院の大きな特徴となっています。
注力している日帰り手術への思いをお聞かせください。
当院の日帰り手術は、術前の受診に1時間ほど、あとは手術当日で、歩いて帰宅となり、仕事、家事、育児、介護などで忙しい方でも比較的楽に受けられる点がメリットです。実は、私自身も鼠径ヘルニアの手術を2度受けています。一度目は1991年の研修医時代、右鼠径ヘルニアの手術を入院で施行。そして二度目は2019年に左鼠径ヘルニアを、知り合いのクリニックで日帰り手術にて行いました。一度目の手術は1週間ほど入院。術翌日まで下半身麻酔で下半身が動かせず、排尿などもベッド上で行いました。その後も突っ張り感や痛みで1ヵ月ほど足を引きずって歩いていたような記憶があります。30年近く経ての2回目手術では4~5時間の滞在で同日歩いて帰宅。約30年を経て、技術も麻酔も進化したものだと実感すると同時に、鼠径ヘルニアは日帰り手術で十分だと実感しました。その経験が、更なる日帰り手術への積極的な取り組みにつながっています。
鼠径ヘルニア・下肢静脈瘤・痔の日帰り手術に注力
鼠径ヘルニアの日帰り手術について、具体的に紹介いただけますか。
当院で行う鼠径ヘルニアの日帰り手術は、痛みに配慮し、多くの場合2~3cmほどの小さな創で行っています。鼠径部に出たり入ったりする膨隆を認めた場合、まずは来院していただき、手術する場合は採血・心電図・レントゲンなどの術前検査を行います。当院では、全身麻酔で眠った状態にしてから手術を行いますので、目が覚めたら、手術が終わっています。手術は1時間ほどで、術後はしばらく休憩をとっていただき、同日歩いて帰宅です。その後は、数回外来に通院していただき、経過を診ていきます。鼠径ヘルニアの日帰り手術を行っている施設は全国的にも少ないとされ、それだけ、鼠径ヘルニアの日帰り手術はある意味、敷居が高いといえます。しかし、海外では日帰り手術は一般的に普通に行われています。
下肢静脈瘤の日帰り手術についても教えてください。
下肢静脈瘤の日帰り手術は、2014年に波長1470mmの新型レーザーや新型の高周波装置による下肢静脈瘤血管内焼灼術が保険収載され、当院でも2015年1月から新型の高周波装置による下肢静脈瘤血管内焼灼術を行っています。昔は入院して、脊椎麻酔で下半身に麻酔がかかった状態で、逆流のある静脈を抜き取るストリッピング手術が一般的でした。そのため、すぐに命の関わることのない下肢静脈瘤は、大分ひどくなって、ようやく手術となるという場合が多かったのですが、現在、TLA膨潤麻酔という新たな麻酔法や、血管内焼灼術の機器の進化のおかげで、比較的容易に行え、全国的にも日帰り手術で行うのが一般的です。さらに当院は、日帰り入院にも対応しており、任意保険でその契約がある場合は、外来で行う日帰り手術の場合より保険料が多く支払われます。
痔の日帰り手術は、どのような内容ですか。
痔と言って来院された場合でも、内痔核・外痔核(イボ痔)、痔瘻(穴痔)、裂肛(切れ痔)、直腸脱、肛門皮垂(皮膚のたるみ)などさまざまです。外来ですぐに局所麻酔で行ったり、仙骨硬膜外麻酔やさらには全身麻酔を併用したりなど、状況によって考慮します。ALTA療法のみでできる場合や、切除、結紮、シートン法(輪ゴムを通して徐々に切断する方法)や切開、PPH法では自動縫合器を使用したり、人工靭帯を用いての肛門縫縮など、さまざまです。いずれも、日帰り手術を行っております。
良い治療法や新しい技術を、患者に還元したい
外来診療・日帰り手術・訪問診療と幅広く診療をされていますが、その原動力とは?
平日は、午前の診察が終わると、そのまま午後から手術を行い、その後、午後の外来診療。これら診療においては、看護師や助手に手伝ってもらって、患者さんへの丁寧な説明をお任せしたりしながら対応しています。休診の木曜日は、施設や在宅の方の訪問診療・往診日にあてています。夜や日曜日は、平日のたまった書類の整理などで、忙しいです。これでもかつて、研修医や勤務医であった頃に比べたら、大分楽なんですよ。あの時代は24時間フル稼働で、日曜日も学会や書類の整理。当直明けで連続勤務でも疲れた顔を見せると、患者さんから苦情が来てしまうというような時代でした。そのおかげで、開院したばかりの頃は私自身も体力があったため、困った患者さんがいれば夜間も対応していました。やはり、研修医時代や大学病院で鍛えられた経験に支えられているのかもしれません。
お休みの日はどのように過ごされていますか。
休みの日は書類の整理や新しい知識を得るために活用しています。時には自宅のことや家族とのだんらんにあてたりしますが、その場合も急に施設からの急患の連絡があったりで、なかなか、まったく自由な時間というのは少なく、隙間をぬっての生活です。そんな中でも、時に外来を休診とさせていただいてますが、鼠径ヘルニア、下肢静脈瘤、痔など多くの学会に参加して、最新情報を学ぶようにしています。そのことが、ひいては、患者さんへ容易な治療が提供できるようになり、患者さんも自分も楽になると考えています。
今後の展望、そして読者へメッセージをお聞かせください。
2003年に総合診療を行うクリニックとして開業し、時間外診療、在宅医療など、さまざまな経緯をたどりながら、現在、地域でも鼠径ヘルニア・下肢静脈瘤・痔の日帰り手術を提供できるようになりました。日帰り手術も少しずつ浸透して、これを希望され、相談に来られる患者さんも増えています。これら患者さんに、良い技術と笑顔で対応できるようになることは、私の楽しみでもあります。そして何よりうれしいのは、患者さんに良い医療を提供でき、患者さんから感謝の言葉をいただいた時です。これからも、日々研鑽を続けるとともに、多忙ではありますが、一人ひとりの患者さんと大切に向かい合っていきたいと思います。