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野坂 裕 院長、野坂 房子 副院長の独自取材記事

野坂歯科医院

(松江市/東松江駅)

最終更新日:2022/07/06

野坂裕院長、野坂房子副院長 野坂歯科医院 main

松江市八雲町、緑に囲まれた住宅街にある「野坂歯科医院」。きれいに手入れされた庭と清潔な院内には、アットホームな空気が流れる。一般歯科は野坂裕院長、小児歯科は野坂房子副院長が担当する2人体制だ。開院は1986年。当時は八雲村で、村内には歯科医院がなかったのだそう。まずは歯科医療に対する意識変革が必要と感じ、「公民館に行って、歯の話をしたりしていました」と語る裕院長。房子副院長は、幼稚園や小学校の現場で歯と健康の話をするようになり今も継続しているのだとか。また、開業時から裕院長は訪問診療を行っており、現在も近くの高齢者施設を訪れ口腔ケアを行っている。地域と一緒に年月を重ねてきた裕院長、房子副院長に、開業時からの取り組みや地域とのつながりについて話を聞いた。

(取材日2022年5月31日)

行政とともに、地域住民の歯科に対する意識を改革

ご開院までの経緯を教えてください。

野坂裕院長、野坂房子副院長 野坂歯科医院1

【裕先生】私と妻は両方とも両親が歯科医師なのですが、親からの影響もあり、日本歯科大学に進みました。私は開院直前まで、日本歯科大学の保存学教室に勤務し10年ほど研鑽を積んだ後、1986年7月に当地で開院しました。
【房子先生】当時、八雲村には歯科医院がなかったために、住人の皆さんは歯の調子が悪くなった時に遠くの歯科医院に通うしかなく、気軽に歯科医療を受けられる環境ではなかったのです。そのため、歯科医療が身近な存在ではなく、日頃から予防歯科の取り組みを意識する環境でもありませんでした。そのため開院して、まずは皆さんの歯科の意識を高めようというのが最初のテーマとなりましたね。

当時、どういった取り組みをなさっていたのですか。

【裕先生】仕事が終わってから、村の福祉課の担当者と一緒に、公民館へ出向いて歯について話をしたりしました。行政の方は協力的で、いろんなところを一緒に回ってくださり、とてもありがたかったですね。当時は村だったので行政単位が小さく、小回りが利いたのだと思います。地域の方々と会うと、逆にこちらが教わることも多かったです。仕事とは全然関係ないんですけど、地域開発のための温泉調査に携わる機会があったりもして興味深かったですね。
【房子先生】私は地域の教育委員を務めていたのですが、小学校や保育園・幼稚園で歯のことや、睡眠や運動など日常生活で大切なことについて話をする「すこやか健康教室」を行ってきました。開業して数年後からスタートして今も続いています。

小児歯科は、房子先生が担当されているんですね。

野坂裕院長、野坂房子副院長 野坂歯科医院2

【房子先生】もともと、子どもに関わることがしたいという思いがあったので、保育士になるか歯科医師になるか迷いましたが、結局は親がやっていた歯科医師を選び、日本歯科大学に進みました。卒業後に勤めた歯科医院は小児歯科が専門でしたので、そこでのたくさんの経験が現在の診療の基本となっています。

子どもの患者さんを診るとき、心がけていることはありますか。

【房子先生】とにかく、子どもとの信頼関係が大事です。最初は、親御さんとお子さんと私の三角関係なんですね。そこから、子どもと私とだけで意志の疎通ができる状態にすることが大事だと思います。すぐに意思疎通ができるようになる子と、何年かかっても難しい子など、お子さんは千差万別です。また、今までの歯科治療経験から怖さだけが記憶されているお子さんが来院されることもあります。その場合はトラウマを少しずつ取り除き、大丈夫なんだということを肌感覚で伝えていかないといけない。例えば虫歯治療をすることは痛みを取るためのものだということを体で感じてもらうんです。そしてどんな小さなことでもできたことを褒める。子どもも成長していきますから。そういうふうに時間をかけながら、対応しています。協力の得られないお子さんにも根気強く向かい続けていると、ふっと心を開いてくれる瞬間があるんですが、その瞬間は本当にうれしいですね。

地域の高齢者に寄り添い、口腔内から健康を守る

お子さん以外は裕先生が担当されるのですね。

野坂裕院長、野坂房子副院長 野坂歯科医院3

【裕先生】そうですね。一般的な歯科診療に対応していますので、「最初に相談するかかりつけの先生」のような役目です。例えば矯正やインプラントのような専門性の高い治療は、連携する病院歯科や歯科医院を紹介しています。患者さんは、地元八雲のほか大庭町や安来からもいらっしゃいますね。地域柄、高齢の方が多く、往診も開業当初から行っていました。ご家族からの往診依頼があり、八雲村の山の上のほうまで往診に行くことも。ご家族から「こんにゃくいもを掘ったから」と、おみやげに温かい作りたてのこんにゃくをいただいたりしたこともありました。

今も、訪問診療に行かれているのですか。

【裕先生】はい。近くに高齢者施設がありまして、今はそこに歯科衛生士とほぼ毎日、利用者さんの口腔ケアに行っています。衛生面のことや歯ブラシの管理など、職員さんにお願いしたいこともお伝えしています。利用者さんの口腔内は以前に比べてきれいになり、職員さんの意識もずいぶん変わってきました。入れ歯の手入れの仕方や洗浄剤のこと、歯ブラシの交換時期など、職員さんたちからたくさん質問を受けます。私たちが行う毎日のケアを見ていて、いろんなことに興味を持たれるようになったのだと思います。

誤嚥性肺炎を予防していくための、機能訓練も行っていらっしゃると伺いました。

野坂裕院長、野坂房子副院長 野坂歯科医院4

【裕先生】機能訓練では、舌の運動や唾を出す訓練、飲み込みや咀嚼のトレーニングなどを行いますが、松江市内の各歯科医院で実施していて当院でも行っています。嚥下機能が落ち始めてすぐであれば、訓練で機能が上がる可能性は見込めます。けれども、寝たきりなどの介護度の高い方を訓練で機能回復させていくのは難しく、そういう場合は患者さんの状態に合った口腔ケアを実施しています。口腔内を清潔にして、肺炎の原因になる細菌の増殖をできるだけ防ぐことが大切です。

スタッフと歯科医師が一丸となり健康の大切さを伝える

スタッフの方々について教えていただけますか?

野坂裕院長、野坂房子副院長 野坂歯科医院5

【裕先生】われわれだけでなく、スタッフも含めて野坂歯科医院という一つのブランドだということを言ってきました。スタッフがしっかりしているから、歯科医院としてここまで成長できたと思います。結婚・出産後、戻ってきてくれるスタッフも多いですね。
【房子先生】当院は、勤務年数が長いスタッフが多いんです。特に受付の担当は開業当初から勤めているので、電話で声を聞いただけで、電話の相手が誰だかわかることが多いんですよ。電話をかけた患者さんのほうも、名前を言う前にわかってもらえたらうれしいですよね。また、スタッフ間の風通しを良くしたいと思い、スタッフが何でも言えるようにしてきました。時には耳の痛いことも互いに言いながら、みんなでつくり上げてきました。だから一人でもいなくなったら、ここは回らないんですよ。

今後の展望をお聞かせください。

【房子先生】ここに来てから20年ぐらいたった頃から、メンテナンスで来られる患者さんが定着してきたように思います。そういう患者さん方に対して、少しでも生活の質が落ちないように支援し続けていきたいですね。
【裕先生】患者さんとのつながりを保って、健康の大切さを伝えていくことが大事だと考えています。痛んだ歯を治療して終わりというわけではなくて、汚れたり感染しやすい環境にあるお口を常に清潔に保ち、メンテナンスすることが大切だということを伝えていきたいです。

最後にメッセージをお願いいたします。

野坂裕院長、野坂房子副院長 野坂歯科医院6

【房子先生】お口の環境を整えることは全身の健康につながります。一生のベースとなる幼児期に良い生活リズムをつくっていけるよう小児歯科担当としてサポートしていきたいと思います。そのためには、ご家庭での協力もお願いしていきたいです。また、唾液の素晴らしさも伝えていきたいです。唾にはウイルスなどを防御していく働きもあります。噛むと唾の量が増えるので、しっかり噛んで唾を出すことで、自分の体を守っていくことも大切です。
【裕先生】新型コロナウイルスも、口や鼻から入って感染しますよね。体の入り口であるお口の中は、きれいに保つことが大切です。それと、生活リズムは健康な体にとってとても重要です。歯磨きも、生活リズムをつくる上での大切なシグナルの一つだということを知っていてほしいですね。

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