ドクターズファイル特集
スペシャルインタビュー 小塚崇彦

(公開日2018年4月23日)

国内外の大会で輝かしい成績を挙げ、
平成22年にはバンクーバー冬季オリンピックにも出場。
美しいスケーティングが記憶に残る小塚崇彦さんの身体づくりに迫る。

TAKAHIKO KOZUKA

1989年2月27日生まれ。愛知県名古屋市出身。フィギュアスケーター一家に育ち5歳で本格的にスケートを始める。2006〜07年にシニア参戦。その年のNHK杯で初表彰台に上がるなど着実に実績を伸ばす。2009〜10年にはバンクーバー冬季オリンピック出場を果たし8位入賞。2016年3月に現役引退を発表。トヨタ自動車にてスポーツの普及に携わった後、子どもたちへのフィギュアスケート普及に従事する。2017年7月にアイスショーにも復帰。

“ジャンプの着氷では足腰に
体重の5〜6倍の負荷がかかります”

フィギュアスケートは足腰への負担が大きい競技


2015年12月、北海道札幌市で開催された「全日本フィギュアスケート選手権」フリースケーティングでの演技。この大会を最後に、競技を引退した。

平成30年は冬のオリンピックで幕を開けた。お隣の韓国での平昌冬季オリンピックは、各国の選手たちが登頂をめざしてきた、スポーツイベントの最高峰だった。
数ある競技種目の中でも、ひときわ華やかで人気があるといえば、フィギュアスケートだろう。銀盤を舞う華麗な選手たちの演技は見る者を魅了してやまない。だが、その裏には想像を超える鍛錬があり、日々の厳しいトレーニングを可能にしているのが強く、しなやかな身体だ。
平成28年3月に現役を引退するまで、ジュニア時代を含め約15年にわたり競技生活を送った小塚崇彦さんは、世界選手権やグランプリファイナル、平成22年にはバンクーバー冬季オリンピックに出場するなど、数々の大舞台で活躍してきた。世界のトップスケーターたちと肩を並べるための身体づくりは、どのようにして行われてきたのだろう。
「本格的にスケートを始めたのは5歳の時で、小学校に入ってからはかかりつけの病院の理学療法士さんに、何があってもなくても定期的に体を診てもらっていました。ケガをした時はリハビリテーションでもお世話になりました」
身体を酷使するアスリートと医療は切っても切り離せない。特にジャンプやスピンで重力や遠心力を受けるフィギュアスケートは、体に大きな負担がかかる競技である。
「例えば重力に逆らって跳ぶジャンプでは着氷の際、体重の5〜6倍の負荷が身体にかかるというデータもあるくらいです。僕の場合だと体重60kgくらいだったので、300kg以上の負荷がジャンプを跳ぶたびにかかっていたことになります」
しかも、ジャンプは6種類あり、練習ではそれを1日に何十回と跳ぶという。「そりゃ、ケガもしますよね」と小塚さん。
さらにスケート靴を見てみると、靴底のエッジと呼ばれる歯は実に3mm程度の幅しかない。そこに思い切り体重がかかるということは、負荷の大きさもさることながら、バランスを取るのが難しいことが容易にわかる。その難度を小塚さんは、「竹馬に乗って跳んだり回ったりしているよう」と例える。

年齢とともに変わる体
変化に応じてケアが必要

どれくらいの期間をフィギュアスケートシーズンと呼ぶのか、ご存知だろうか。シニアの主要スケジュールを見てみると、9月中旬頃から春先に世界各地で大きな大会が行われている。つまり選手たちは約半年間にわたり世界中を転戦し、めまぐるしく変わる環境の中でコンディショニングをしていかなければならないということだ。
シーズン中はもちろんだが、試合のないオフシーズンの身体づくりにも余念がない。小塚さんも理学療法士の指導の下、バランスボールやロープ型のリハビリテーション器具を使った体幹トレーニング、ダンベルやバーベルを持って片脚ずつ大きく踏み出すランジウォークなどで筋肉を鍛えてきたという。
これらのトレーニングの目的は試合で最高のパフォーマンスを発揮するためでもあるが、ケガをしにくい身体をつくる予防の意味も含まれている。
さらに、「練習や競技に入る前のウォーミングアップと滑った後のクールダウンも重要」と小塚さん。学生時代はその大切さをあまり認識していなかったが、「年を重ねるごとに疲労が抜けにくくなってきて、やはり次の日の準備のためにもクールダウンは必要だし、滑る前のウォーミングアップもちゃんとしないとケガにつながったりもするなと思うようになりました」と振り返る。
年齢とともに生じる身体の変化。それに応じて必要になるケア。これはトップアスリートに限らず、一般のスポーツ愛好家も実感している部分だろう。
そして、もう一つ。フィギュアスケーターといえば、あのスリムな体型が特徴だが、小塚さんもやはり体重管理には気を使い、朝晩必ず体重計に乗っていたそう。
「僕は身長170cmで体重は朝が60.5kg、夜は61.5kgをキープしていました。ちょっとオーバーしそうになると炭水化物を半分に減らすなどして調整していましたね」
食べるのが大好きという小塚さん。一気に減らしてしまうとストレスになり、練習へのモチベーションが落ちてしまうため、微調整を心がけていたという。これは体重管理に悩む人へのヒントになるのではないだろうか。

“年齢を重ねるごとに疲労が抜けにく
くなる。ウォーミングアップやクール
ダウンは重要”

先天的な股関節疾患と精神的ストレス

小塚さんの競技生活の後半は、ケガや故障との戦いでもあったといえる。特に深刻だったのが先天的に抱えていた股関節の問題だ。
「全然気づかなかったんですけれども、生まれつき臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)を患っていたようで、平成24〜25年シーズンの全日本選手権(12月)が終わったあたりから股関節に亜脱臼の癖が出るようになりました。股関節が外れると腱(けん)が張って痛みが出るので思うように練習できなくなるんです」
臼蓋形成不全とは、大腿骨を支える「臼蓋」と呼ばれる受け皿のような部分のくぼみが浅く、球状になった大腿骨の頭がしっかり納まらずにはみ出してしまうことで、脱臼や摩擦による炎症が起こるという。
小塚さんも、毎日していた練習が2日に1回、3日に1回と制限されるようになり、評判の病院を訪ねてはエックス線検査やMRI検査などを受けたという。また東京都北区にある国立スポーツ科学センター(JISS)にも通い、さまざまな競技のトップアスリートを診ているスポーツ専門のドクターに治療法を検討してもらったりもした。
だが、臼蓋形成不全はそもそも完治が難しいといわれている。小塚さんの場合も明確な治療法はなく、人工関節による置換手術で緩和をめざすくらいしか選択肢がなかった。
「それだと術後どうなるかわからないし、スケートが続けられるかどうかもわからない。ならば手術は受けない方向で、どうしていくかを医師や理学療法士と話し合いました」
思うように滑れない期間は精神的にもつらかったという。一時期は一番身近な両親にあたったこともあり、心配した母親から心療内科の受診を勧められたこともあったそうだ。
実際にカウンセリングを受けた小塚さんは、「ドクターと話をしたことで、自分でも気づかなかった心の内面に気づくことができ、気持ちがだいぶ落ち着きました」と言い、自力ではどうしようもなくなった時は専門家の力を借りることも一つの選択肢ではないかと話してくれた。
また、気分がふさいでいた時、スケート仲間や大学の友人たちが食事に誘い出してくれたのも息抜きになったそうで、「ずいぶん救われました」と感謝する。

“股関節の疾患を抱え思うように
滑れない時期は精神的につらかった”

フィギュアスケートを始める
きっかけづくりをしたい

結局、股関節の問題とは一生付き合っていくしかなく、他に足首のケガなども頻発した小塚さんは、思うような滑りができなくなっていく中で引退を決意。「氷上を去る」という言葉とともに、すっぱりと競技生活を離れた。 しかし、その直後の平成28年4月にトヨタ自動車に入社。スポーツの普及を手がける強化運動部という部署に配属されたことが、再びフィギュアスケートの世界に戻るきっかけとなった。

“美しい滑りや、スケートの楽しさを
子どもたちに伝えていきたい”

「子どもを対象としたラグビーの体験イベントを開催した時、子どもたちの笑顔や教える選手たちの楽しそうな姿を目の当たりにして、フィギュアスケートでもやれたらいいのにと、いつの間にかフィギュアスケートのことを考えている自分がいました。また平成28年11月、ベトナムのホーチミンで日本との文化交流イベントがあった時、僕もスケート教室に参加させていただいたんですが、自分が教えてもらったフィギュアスケートの美しい滑りだったり楽しさだったりを、子どもたちに伝えていきたいという思いが沸々と湧いてきました」
そう言って眼を輝かせる小塚さん。この取材の中で一番生き生きして見えた瞬間だ。ベトナムでのフィギュアスケート普及活動は継続する予定で、また日本国内でもスケートの親子教室を開くなど、現在は子どもがフィギュアスケートを始めるきっかけづくりに力を注ぐ。
「楽しみでフィギュアスケートをやるのもいいですし、競技者をめざすのであれば5〜6歳までには始めてもらって、基礎づくりをするのがいいかなと思います」と小塚さん。
昨年4月には待望の女児が誕生し、1児のパパにもなった。また7月にはアイスショーにも出演し、銀盤に舞い戻った。
「フィギュアスケートに限らず、どのスポーツでも一流になるほど理にかなった動きをして、所作が美しい。僕も美しさを競うフィギュアスケートで得た技術を通じて、身体の使い方や身体づくりの方法などを子どもたちに伝えていきたいと思います」

小塚崇彦の心身の強さを支えたもの

負荷に耐えるトレーニング

重力に逆らって飛ぶフィギュアスケートのジャンプでは、体重の5〜6倍の負荷が身体にかかる。それに耐えられる身体づくりのために体幹トレーニングと筋肉トレーニングを併用した。

かかりつけの理学療法士

小学1年生の頃から世話になっている理学療法士がいて、週1回、身体を診てもらっていた。トレーニングメニューの考案やリハビリテーションもお願いし、トータルでコンディショニングをサポートしてもらった。

身体の変化に応じたケアと睡眠

年齢とともに身体の変化を実感し、若い頃よりもウォーミングアップやクールダウンにしっかり取り組むようになった。翌日に疲れを残さず質のいい練習をするために身体のケアは必須。睡眠も重要で、どこでも寝られるのが特技。

無理のない体重管理

美しさを競うフィギュアスケートの特性上、体重には気を配っていた。朝晩と体重計に乗り、増減は1kg以内に抑える。それをオーバーしそうな時は炭水化物を半分に減らすなどして微調整を心がけていた。

家族や友人の存在

股関節疾患が原因で練習もままならなくなったつらい時期、家族や友人の存在が救いとなった。選手時代も今も、周りの多くの人に助けられていると感じている。いろいろな人の話を聞き参考にするのが好き。

小塚崇彦
オフィシャル
ウェブサイト  ▶︎
http://takahiko-k.com/
インスタグラム ▶
(@takakozuka)
https://www.instagram.com/takakozuka/︎

文 : 高樹ミナ 写真 : 奥村一之




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