高度医療の提供と地域連携に貢献し
安心・安全な医療を市民に提供

高度な医療の提供と地域力で
市民の健康を支える中核病院

昭和6年開設の名古屋市民病院に始まり、幾多の変遷を経て、昭和25年に誕生した『名古屋市立大学病院』。地域医療と医療人の育成を担う中核病院として、長きにわたり市民の間に根付いてきた。
平成16年に17階建ての病棟・中央診療棟、平成19年には外来診療棟が完成し、病院機能が充実。同院の特徴の一つである診療科を超えたチーム医療をより効率的に行えるようになった。さらに、年々増えるがん患者に向けて集学的に先端の医療を提供できるよう、平成24年にはがん治療に特化した「喜谷記念がん治療センター」を開設。常に地域に目を向け、新たな取り組みに余念がない。特定機能病院、地域がん診療連携拠点病院、肝疾患診療連携拠点病院の指定を受け、高い専門性を生かした医療を提供。また重篤な患者を受け入れる三次救急を中心に、一、二次救急にも対応する救命救急センターが活発に機能し、近隣の医療機関や福祉施設とも連携しながら地域医療に大きく貢献している。
平成29年には手術室を強化し、ハイブリッド手術室も設置した同院。ハード面の一新で、よりレベルの高い治療の実現をめざしている。また、医療人の育成にも注力。今現在の医療だけでなく、未来の医療を見据えるその姿に、地域全体が信頼を寄せている。

病院長メッセージ

小椋 祐一郎病院長

小椋 祐一郎病院長

1980年京都大学医学部卒業。1997年名古屋市立大学大学院眼科学教授に就任。2017年4月から現職。専門は網膜硝子体疾患。日本網膜硝子体学会理事長、日本糖尿病眼学会理事長。日本眼科学会評議員。情報公開を進め、患者もチーム医療の一員として参加できる病院づくりを行っている。

小椋病院長が部長を務める眼科では、黄斑浮腫の治療に用いる先進の機器を導入し、正確性と安全性により配慮した治療が可能になった

小椋病院長が部長を務める眼科では、黄斑浮腫の治療に用いる先進の機器を導入し、正確性と安全性により配慮した治療が可能になった

2017年10月に稼働開始した照射精度の高い先鋭の放射線治療装置。世界的にまだ導入が少ない高度な機器で、さらに多様な治療が可能に

2017年10月に稼働開始した照射精度の高い先鋭の放射線治療装置。世界的にまだ導入が少ない高度な機器で、さらに多様な治療が可能に

世界レベルの高度で先進的な医療を
さりげなく市民に提供する病院に

高度先進医療を推進する大学病院という側面と、救急や災害医療に力を入れる市民のための病院という側面を併せ持つ同院。これまでもがん診療や周産期・小児医療などで地域の中核となる機能を担ってきたが、さらに高機能手術室の設置や内視鏡手術のスタッフの充実など機能の強化に努めている。

 

特定機能病院として高度急性期医療を提供する名古屋市立大学病院。平成29年4月に病院長に就任した小椋祐一郎先生は「高度で先進的な医療を提供する体制を強化しながら、名古屋市民の病院として救急医療や災害医療に力を入れています」と話す。
現状におごらず、常に医療レベルの向上に取り組む同院では、平成29年に手術室を3室増設して全16室に強化。ハイブリッド手術室と4Kモニターを備えた内視鏡手術室も加えるなど、ハード面の充実に余念がない。カテーテル室の機能も併せ持つハイブリッド手術室は、血管内治療などがよりスムーズに進められるよう、透視のできる手術台を採用し、エックス線検査を可能に。また、新たな内視鏡室のモニターでは4Kの画質で術部映像が映せるため、より鮮明な情報を得ながら手術ができる。
また設備面だけでなく、内視鏡手術の実績豊富な医師を部長として迎えるなどスタッフの陣容も強化した。より質の高い診療を提供する体制づくりの一環として、高い専門性を有する人材を獲得・育成するために「診療担当教授」制度を導入。救急科、心臓血管外科、形成外科、小児泌尿器科などで診療担当教授が誕生したが、中でも3人の診療担当教授を配置した救急科は救急搬送受け入れ数を大幅に増やし、月平均500件を受け入れるようになった。
「当院は南海トラフ巨大地震のシミュレーションによると、市内で津波により浸水しない最前線の災害拠点病院です。市民の皆さまの期待に応え、救急・災害医療部門を強化する計画が動き始めました」
災害時だけでなく、平常時から救急は断らず、迅速に受け入れることが同院の基本方針だ。名古屋市は、救急コールから病院搬入までにかかる時間を日本で最短にすることをめざしているが、同院も全面的にこれに協力していく考えだという。
多数の学部を有する総合大学ならではの取り組みも特徴だ。病院内には芸術工学部と共同で立ち上げた医療デザイン研究部門や、人間文化研究科と連携した医療心理部門がある。同部門は、平成29年9月に国家資格化された公認心理師養成の場という役割も担っている。
小椋病院長は、特に同院の得意分野として「がん医療と小児医療」を挙げる。地域がん診療連携拠点病院として、幅広いがんの診療から緩和ケアまで提供し、特に血液がんや放射線治療の実績が豊富だ。また、日本の新生児医療確立のため尽力してきた同院は、今も東海地区の周産期・小児医療の中核として、小児科、小児外科、心臓血管外科、小児泌尿器科などの関連各科が連携して診療に取り組んでいる。
「安心・安全に配慮して、世界レベルの医療を地域にさりげなく提供し、感謝していただくことをめざします」

腹腔鏡手術

瀧口 修司先生

消化器外科部長
瀧口 修司先生

1991年大阪大学医学部卒業。2017年4月から現職。名古屋市立大学大学院消化器外科学教授。特に上部消化管の内視鏡手術を専門としており、努力を惜しまず技術を磨き、常にベストな手術をめざしている。

2018年1月には手術支援ロボットを先進のバージョンに更新。消化器外科でも今後活用していく予定だという

2018年1月には手術支援ロボットを先進のバージョンに更新。消化器外科でも今後活用していく予定だという

腹腔鏡手術を習熟した医師が
QOLに配慮した治療を提供

肝臓・胆道・膵臓を含む消化器のがんや難治性疾患から逆流性食道炎、虫垂炎、痔疾、肥満症まで、幅広く診療する同院の消化器外科。特に腹腔鏡手術では、術後のQOL(生活の質)に配慮。習熟した医師が診療することに加え、平成29年には4K内視鏡手術室が設置され、一層精度の高い治療が可能となった。

幅広い疾患を取り扱う消化器外科だが、部長である瀧口修司先生を筆頭として腹腔鏡手術に精通・習熟した医師が多数そろっていることが大きな特色だ。消化管がんの手術後は多少なりとも生活への影響が避けられないものだが、「できる限り、治療後のQOLへの影響が少ない手術方法を選択しています」と瀧口先生。
「同じ胃がんの手術でも、可能であるならば、胃をすべて摘出するのではなくほんの少しだけでも胃の上部を温存しています。そうすると食欲に関係するグレリンというホルモンが失われないので、生活への影響が少なくて済みます」
体への負担だけでなく、手術を受ける患者とその家族の心情にもこまやかな配慮をし、治療の選択肢を提示していく。その後の人生を左右しかねないことだからこその心配りだ。
がんの手術は、がん細胞を残らず取り切る根治性の追求と、臓器の機能を温存してQOLを保つことを両立させることは難しいが、低侵襲な内視鏡手術の進歩によってそれが実現可能となってきたという。一般的な施設において、胃がんで腹腔鏡手術が選択されるのは全症例の5割程度といわれているが、同院では約9割を腹腔鏡下で手術している。また食道がんでは、胸に数カ所の穴を開けて行う胸腔鏡による切除術を積極的に取り入れ、患者の負担を軽減。開胸手術での食道がん切除に比べて、出血や術後の痛みを抑えられるだけでなく、術後の肺炎発生リスクも低くなり、早い回復が期待できるそうだ。
長年、腹腔鏡手術に携わってきた瀧口先生は、「腹腔鏡手術は低侵襲であるだけでなく、患部の細かい部分まで拡大して鮮明に見ながら進めるため、経験を重ねた医師が行えば、精度の高い手術がより安全に実施できる方法だと思います」と強調する。
同科では平成29年、手術精度をさらに高めるため、4K内視鏡システムを備えた手術室を設置。デジタルハイビジョンをはるかに超える画素数を持つ4Kシステム活用のため、薬剤による細胞染色で、これまで見えなかったような微細ながん細胞を見えるようにする検査方法も採用した。また、消化器がんのロボット支援手術開始に向け準備を進めている。
「医師は常に患者さんのために何ができるかを追求する心が大事ですが、当院の医師はその視点を持ち、どんな患者さんにも紳士的で優しく丁寧に接すると自負しています。看護師らスタッフとのチームワークも非常にいいですね。当科には胃がんや食道がんなどの、直接命に関わるような病気を診るイメージがあるかもしれませんが、ヘルニアや虫垂炎なども広く診ています。そのためか、市民との距離の近さを感じることも多くうれしい限りです。これからも市民にとって気軽に受診でき、先端的な医療を安心して受けられる存在であり続けたいです」

ハイブリッド手術室を活用した心臓血管外科手術

三島 晃先生

副病院長/心臓血管外科部長
三島 晃先生

1981年名古屋市立大学医学部卒業後、同大学第一外科学教室入局。2001年から現職。同大学大学院医学研究科心臓血管外科学教授。日本心臓血管外科学会心臓血管外科専門医。小児心臓血管外科手術が専門で、後進の育成に力を注ぐ。

2017年に完成したハイブリッド手術室。心臓血管外科でも今後さらに活用の幅を広げていく予定

2017年に完成したハイブリッド手術室。心臓血管外科でも今後さらに活用の幅を広げていく予定

手術対象は新生児から高齢者まで
安全に配慮した医療提供体制が整う

名古屋市立大学病院心臓血管外科の最大の特徴は、新生児から高齢者まであらゆる年齢の患者に対応していることだ。またハイブリッド手術室を平成29年に設置したことで、これまで以上に高度な医療の提供が可能となった。むろん、ますます安心・安全な医療の充実にも取り組んでいる。

同院は、日本の新生児医療のパイオニア的存在である。その伝統を引き継ぎ、現在も新生児を含めた小児の心臓手術に非常に熱心。経験豊富な同科の医師が、小児科、外科、集中治療室などの新生児医療専門スタッフと連携して診療しており、合併症などがあるような難症例に対しては、全科に在籍している小児医療の経験を有するスタッフが、サポート。
「成人への手術ももちろんそうですが、特に小児では他科との連携なしには安心・安全な医療はあり得ません。頻繁に合同カンファランスを行うことで、気軽に声をかけ合える関係を築いています」と話すのは、同科部長の三島晃先生。
小児治療に注力する一方で、平成27年には成人の心臓血管外科専門チームを立ち上げた。成人チームは「断らない医療」と「完結する医療」を掲げて取り組んできたため、急性心血管疾患の救急を中心に飛躍的に症例数を増やしている。急性大動脈解離、高齢者の心臓弁膜症などの手術数が多いことも特徴で、さらに需要が高まることが予想されるという。
平成29年には高機能なハイブリッド手術室が完成。この手術室は透視ができる手術台を備えており、手術中にエックス線撮影が可能で、撮影した画像はすぐに手術に生かせるそうだ。これにより、幅広い年代への医療を提供してきた専門性に加え、よりスムーズかつ正確な手術に向けた設備が整った。現在ここでは放射線科と合同で大動脈瘤や大動脈解離へのステントグラフト留置術を行っているが、今後、心臓弁膜症への弁置換術なども行う準備を進めている。
心臓血管外科の手術は医師1人ではできない。そのため同院では夜間でも数人の医師がチームを組んで対応することで、患者が重篤な状態に陥っても全体で助け合い、完結する医療の提供ができるようにしている。また緊急手術、重症例の手術では麻酔科の協力が欠かせないが、同院では麻酔科医師が昼夜を問わず対応。集中治療室の業務をすべて管理することで、外科の医師は手術に集中することができるのだという。三島先生は「手術担当医が術後も患者を管理すると、先入観によって『こんなことは起きるはずがない』と問題を見過ごしてしまう可能性がありますが、他科の医師が管理すれば冷静に問題を発見して対処することができます」と、この方式の有用性を説明する。
さらにチームを支える看護師や臨床工学技士などを交えたカンファランスを週1回開き、手術当日にも開催。情報を徹底して共有し、気軽に意見を言える雰囲気づくりにも努めている。
「心臓血管手術では人工心肺関連の事故が起こりがちですが、それを防ぐにはコメディカルが少しでも異常を感じたら注意喚起し、医師が手を止めることが重要です。それができるチームになっていると思います」

乳がん治療・乳房再建部門

乳腺外科と形成外科が連携し
女性のQOLを保つ治療を実践

今や11人に1人がかかるといわれる乳がんは、世の女性たちにとって特別な病気ではなくなってきている。早期発見と適切な治療が欠かせないのは言うまでもないが、同院では乳房を切除した場合の再建術や心のケアの体制も整え、女性に寄り添う医療を実践している。

鳥山 和宏先生

形成外科部長   

鳥山 和宏先生
1989年名古屋市立大学医学部卒業。名古屋大学医学部形成外科医員、あいち小児保健医療総合センター形成外科医長、名古屋大学医学部形成外科准教授を経て、2015年より現職、2017年から名古屋市立大学形成外科学教授。

遠山 竜也先生

乳がん治療・乳房再建部門長
乳腺外科部長遠山 竜也先生
1989年名古屋市立大学医学部卒業。3年間のカナダ留学を経て、2003年から愛知県がんセンター中央病院乳腺科医長。2012年より名古屋市立大学病院乳腺外科部長、2016年4月に乳がん治療・乳房再建部門長、6月に同大学大学院乳腺外科学分野教授に就任。

乳がんのリスクにおびえる女性は少なくないだろう。現代の医療では予防することが難しいこの病気だが、同院の乳がん治療・乳房再建部門長と乳腺外科部長を兼任する遠山竜也先生は、「乳がんは他のがんに比べて治りやすいのも事実です」と話す。自己検診を行ったりマンモグラフィ検査を定期的に受けたりすることで異常を早期に発見すれば、重症化する前に適切に治療を受けることが可能だ。
しかし1度乳がんを患った患者は、手術によりがんを切除した後も、再発の不安を抱えたまま生活することになる。また、乳房を全摘出した場合、女性としての尊厳を保つことが難しくなるケースもあるという面も。同院が平成28年4月に乳がん治療・乳房再建部門を立ち上げたのは、そういった患者の体と心、両方にまたがる問題に対応するためだ。
「乳腺外科と形成外科をはじめとするさまざまな分野のスペシャリストたちが、1つのチームとなって治療を行っています。乳房切除術と乳房再建術のどちらも提供できることで、患者さんの選択肢が増えました。また、乳がん治療には精神的負担が伴うため、『サイコオンコロジスト』と呼ばれる精神腫瘍学専門の医師が患者さんの心のケアにあたっています」
サイコオンコロジストによる心のケアは、同院の特色の一つだ。診療の過程で乳がん患者がひどく落ち込んでしまい、うつ状態に陥ってしまった場合などに、専門的なケアによって精神状態を回復へ導いているという。
一方、乳房の全摘出を行った後に新しく乳房を作り直す乳房再建術を担当しているのは、形成外科部長を務める鳥山和宏先生だ。
「術式は2種類あって、一つはティッシュ・エキスパンダーと呼ばれる皮膚拡張器とインプラントと呼ばれるシリコーン製の人工乳房を使う方法です。もう一つは自家組織といって患者さんご自身のおなかや背中の組織を移植する方法です。それぞれの方法にメリットとデメリットがあります」
ティッシュ・エキスパンダーとインプラントの人工乳房を使う術式は平成25年7月に保険適用となり普及が進んでいるが、人工物であるが故にインプラントはやや自然さに欠け、10〜15年で劣化することもあって入れ替え手術が必要となる。一方、自家組織ならやわらかく自然な感触が手に入るが、移植する組織を採取するため、腹部や背中にも傷を付けることになる。その点、インプラントを使えば患者の傷は胸のみで済む。
これら乳房再建術に関する一長一短の選択を、患者はがん治療と並行して行わなければならず、「大変つらく難しいことですよね」と鳥山先生は言う。この女性の気持ちに寄り添う親身な姿勢が、患者の不安を和らげる診療につながるのだろう。

がん診療連携拠点病院

切らずにがんを治す放射線治療や
心身両面の緩和ケアに注力

日本人の2人に1人ががんにかかるといわれる昨今。国が指定する「がん診療連携拠点病院」に名を連ねる同院は、がんに対する先進的な医療の提供にあたり、標準治療以外にも、発展著しい放射線治療や、身体および精神の症状を和らげる緩和ケアに力を入れ、地域のがん診療充実をめざしている。

芝本 雄太先生

放射線科部長   

芝本 雄太先生
1980年京都大学医学部卒業。同大学医学部附属病院勤務やドイツ留学を経て、2002年に名古屋市立大学放射線医学教室教授に。量子放射線(現・放射線)医学分野で研究実績を上げ、2012年より現職。医学博士。国際癌治療増感研究協会会長、日本放射線腫瘍学会理事。専門は放射線腫瘍学、放射線医学全般、放射線生物学。

明智 龍男先生

副病院長
緩和ケア部長/精神科部長明智 龍男先生
1991年広島大学医学部卒業後、同大学医学部神経精神医科学教室入局。日本医科大学付属病院や広島市内の病院、国立がんセンターなどを経て、2004年に「名古屋市立大学病院」へ。2009年より現職、2012年に教授就任。専門は精神医学、精神腫瘍学。

直接腫瘍を取り除く外科手術に加え、放射線治療や抗がん剤を使う化学療法を併用していくことが現代の一般的ながん診療だが、さらに最近は外科手術なしでがんを治せる時代になったと、同院の放射線科部長を務める芝本雄太先生は言う。
「今は、がんとわかったら必ず手術するという時代ではありません。放射線治療の進歩により、2〜3㎝程度のがんであれば放射線で消してしまえるケースが多くなりました」
体にメスを入れることなくエックス線やガンマ線を照射し腫瘍にアプローチする放射線治療は患者の体への負担が少ないという。肝心の治療効果も、「狙った場所に当てるピンポイント照射の技術が、ここ10年ぐらいで格段に進歩しました。これにより以前よりも高い線量を安全に当てられるようになって、治しきれなかったがんが治せるようになりました」と芝本先生。懸念される副作用も、ピンポイント照射なら正常組織へのダメージが少なく体への負担を抑えられると話す。また、同院では、まだアジア圏では導入されていなかった先進のピンポイント照射装置を導入したほか、リニアック型のピンポイント治療装置も備える。より一層レベルの高い高精度放射線治療が実施できると強調している。
「耳鼻咽喉科領域である頭頸部がんや食道がん、子宮頸がん、前立腺がんなどには放射線治療が有効ですし、胃・大腸がんや膀胱がんなどは臓器の特性上、外科手術が有効といえます。また、その他に手術と放射線治療、抗がん剤治療の併用が有効な部位もあるので、すべてのがんに対して万能な治療があるわけではなく、それぞれに合った方法の選択が大切です」と説明する。
こうした「切らない」放射線治療と並び、同院で現代のがんに関する医療ニーズに応えるのが緩和ケア部だ。がん診療連携拠点病院に指定された平成19年に発足。コンサルテーションリエゾン(CL)と呼ばれる精神医学に特化したケアチームと協働し、がん患者に生じる心身両面の苦痛を、カウンセリングなどの精神療法や薬物療法で取り除く。
「緩和ケアは末期がんや進行がんの患者さんに対して行うイメージがあるかと思いますが、私どもはがんと診断された時点からサポートに入り、治療に伴う体の痛みや不安とともに、うつ症状などの心の苦痛を診ていきます」と話すのは同部の部長で精神科の医師の明智龍男先生。内科の医師、精神科の医師2人、そこに臨床心理士と薬剤師、看護師が加わって、専従で患者を支える手厚い診療体制は他に類を見ないと自負する。
今やがんは身近な病気だが、がんだとわかったときの患者や家族の動揺は計り知れない。明智先生は「外来診療も行っていますので、より良い治療を受けていただくためにもぜひ緩和ケアをご利用ください」と話す。

救急医療体制

後列左から服部友紀先生、笹野寛先生、救命救急センター長の間瀬光人先生、松嶋麻子先生、山岸庸太先生、前列左から三浦敏靖先生、五島隆宏先生(服部先生・笹野先生・松嶋先生は救急科部長)

搬送された急患は救命救急センターで初期診療を受け、必要な診療科へ振り分けられる。深夜帯でも全診療科の医師が待機している

搬送された急患は救命救急センターで初期診療を受け、必要な診療科へ振り分けられる。深夜帯でも全診療科の医師が待機している

救急科と全診療科が24時間体制で
迅速かつ高度な救急医療を提供

名古屋市立大学病院の救命救急センターは、救急患者の診断と初期治療を専門とする医師が各診療科と連携して、24時間365日、救急患者の搬送を受け入れている。救急搬送から各科の専門治療開始までにかかる時間が限りなく短いことが、全科対応型の大学病院救命救急センターの強みだ。

同院の救命救急センターは「救急車の受け入れを断らない」を信条に、軽症者から重症者まですべての救急搬送患者を、昼夜を問わず受け入れている。その第一線に立って救急搬送患者の診断と初期診療を行うのが、救急を専門とする医師4人を含む5人の専従医師から成る救急科だ。研修医と各科の当番医師が救急外来を担う病院が多いこの地域において、スペシャリストである日本救急医学会救急科専門医が診断と初期診療に24時間体制で対応する意義を救急科の一人はこう語った。
「一見軽症に見える患者さんの中に紛れ込んでいる重症度や緊急度が高い方を見逃さないのはもちろん、生命に関わる事態を的確に見極め、命を救う最短の戦略を描いて各科とともに患者さんを救うことが、われわれの使命です」
同院の救急医療は、救急科を中心としながら、救急科のバックに全診療科が24時間365日待機している。救急科による診断と初期治療が行われると同時に院内各科の専門治療へ引き継がれるため、救急車の搬入から治療までが極めて迅速であるのが特徴だ。
「救急搬送患者さんの救命、そして治療後の社会復帰ができるかどうかは時間との勝負です」
平成28年に救命救急センター長に就任した間瀬光人先生は、「例えば急性発症の脳梗塞では、発症から4時間半以内に血栓溶解、8時間以内に血栓吸引までを行うのが鉄則ですが、当然治療までの時間は短ければ短いほど良く、患者さんの社会復帰がどれだけ可能になるかにも関わってきます。当院では脳神経外科と神経内科の医師が毎日必ず当直しており、救急科が診断すると同時に専門の医師による治療に入ります。これは脳神経外科の医師や神経内科の医師が自宅から呼び出されて病院に到着してから治療を開始するという場合に比べて圧倒的な時間短縮になります」と説明する。
最後に、同院が大学病院として救急医療という分野に力を入れている理由を聞いた。
「適切で高度な医療を迅速に提供できるのは大学病院ならでは。また、それを学生や研修医が目の当たりにできる環境であるのも大学病院という教育機関だからこそです」
そう話すのは、救急科部長を務める松嶋麻子先生。若い医師が身につけた知識と経験は地域医療の向上につながり、ひいては市民に還元されると断言する。
救急医療の現場は短時間のうちに人の生き死にに直面する過酷な職場といわれている。だからこそ同センターでは、患者の命はもちろん、医師同士も互いの健康や家族を大事にしているそうだ。そんな心がけの一つからも医師たちの真摯な診療姿勢が伝わってくる。

 

医療安全

戸澤 啓一先生

医療安全管理室室長
戸澤 啓一先生
1987年名古屋市立大学医学部卒業後、同大学泌尿器科学教室入局。豊川市民病院などを経て名古屋市立大学医学部泌尿器科学講座准教授となり、同大学大学院医学研究科予防・社会医学講座医療安全管理学教授として医療安全分野を支える。

カンファレンスの様子。職員間の連携を密にし、医療安全の質を高められるよう努めている

カンファレンスの様子。職員間の連携を密にし、医療安全の質を高められるよう努めている

病院全体に何重にも張り巡らせた
事故防止システムで安全を守る

医療の安全確保の中心となる実務部門が「医療安全管理室」だ。医療安全の責任者である副病院長と専従の医師、看護師、薬剤師で構成され、各部門に1人ずつ配置したセーフティーマネジャーとともに、病院全体の医療安全活動を推進している。
戸澤啓一室長は「当院は厳しく安全管理する意識が高いと思います。セーフティーマネジャーで構成する8つのワーキンググループがそれぞれ課題を抽出し、1年以内に対策を立てるというシステムがうまく機能しています」と実感を語る。
例えば中心静脈カテーテルによる合併症や急性肺血栓塞栓症に対する安全管理には、それが全国的に問題となる前からガイドラインを作成して取り組んだ。また医療安全管理室スタッフとセーフティーマネジャーが月1回、病棟、外来、手術部門、検査部門などを巡回し、事故防止の基本である5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)や患者誤認の防止ができているかを客観的にチェック。さらに危機管理研修会、医療事故防止講演会、eラーニングなどは、職員全員が受講したか必ず確認する。
「以前は誰かがミスをしても別の人のダブルチェックで事故を防ぐという考え方でしたが、今はそれに加え、病院全体のシステムで防ごうとしています」と戸澤室長。
例えば、ある作業をするときは必ず他のスタッフが見えるところで行う。指示を受けたときは必ず復唱する。検査で予想外の重大な病気が見つかったときは、結果を目立つようにして、検査依頼した医師だけでなく、その上司にも報告する。また、誤った薬剤を処方しようとすると電子カルテが警告を発するだけでなく、処方の機能が一時的に停止するシステムも導入。このように何重にもバリアを張り巡らせて、医療の安全を守っている。
「患者さんも疑問に思うことがあれば遠慮なく聞いてください。納得できなければセカンドオピニオンを求めることも大切です」




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